走って寄付、ALSを終わらせよう 〜6/21は世界ALSデー〜
今月6月21日は「世界ALSデー」です。そこで、ALSについて医師の立場からわかりやすくお話しし、「走って寄付」のご紹介をします。
ALSってどんな病気?
ALS(エーエルエス)とは、簡単に言えば神経が少しずつ悪くなり、だんだんと全身が動かなくなってくる病気です。具体的に言えば、「ある日突然ものをよく落とすようになったり転びやすくなることに気づき、病院に2週間くらい入院して精密検査をされてALSと診断され、それから数年で寝たきりになり、食べられなくなり、自分で息をすることもできなくなり、5年くらいで亡くなる」病気です。
ALS患者さんの90%以上は遺伝とは関係がなく、原因も不明で「いつどこの誰がなってもおかしくない」病気です。首相でも大統領でも、アイドルでも、記事を書いている私でも、これを読んでいるあなたでも、です。
ALSという病名は英語の病名の略語で、日本語の病名は「筋萎縮性側索硬化症」と言います。少し難しい病名ですので、順番に解説しましょう。「筋萎縮性」とは筋肉が萎縮する(=だめになる)という意味で、「側索(そくさく)」とは神経の一部のことです。脳からおしりまでつながっている、ごぼうくらいの太さの神経(=脊髄、せきずい)の中の、一部分を「側索」と呼びます。「側索」は脊椎(せきつい、=背骨のこと)に包まれています。
簡単に言えば、ALSとはこの「側索(そくさく)」という神経の一部分が突然、だめになってしまう病気です。「側索(そくさく)」は、脳から手足へ運動せよという命令(電気が流れることで伝わる)を伝える電気コードのようなものです。ですから、これがだめになってしまうと、手足などが動かせなくなってしまいます。さらに悪いことには、このALSは脳みその一部である「運動」の指令センター(大脳皮質の運動野)そのものもだめにしてしまいます。その結果何が起こるかというと、手足に力が入りづらくなり、歩けなくなり、食べられなくなり、しゃべれなくなり、最後には呼吸もできなくなってしまうのです。呼吸というのはいくつかの筋肉の運動で行われているからです。
なぜ「だめになる」のか、その理由はいろいろと研究がされ、いくつかの原因となる遺伝子変異が発見されていますがまだ解明されてはいません。
ALSの患者さんは日本にいま9,000人ほどいて、1年間に人口10万人当たり1.1~2.5人が新たにALSにかかっています。
藤田ヒロさんのこと
藤田ヒロさん、36歳の男性。マッキャンエリクソンという広告代理店の社員です。30歳でALSになった彼は、一般社団法人 END ALSという団体を2012年に立ち上げました(ホームページはこちら)。この団体は二つのミッションを掲げています。一つは「ALS治療の可能性を秘めた研究を支援」するということ。そしてもう一つは「ALS患者さんの生活向上の支援」です。ALS患者さんは体が動かせませんから、例えば視線だけで動くコンピューターなど、様々な介護用品が必要になります。ALSでない人と同じ生活、なるべく苦しみの少ない生活を、ALS患者さんは最新技術によってある程度は手に入れることができるのですが、医療保険ではそれらはカバーされません。ですので、END ALSが支援をしているのです。引用します。
筆者が昨年藤田ヒロさんにお会いした時には、「てがみありがとう へんじすみません」とおよそ1分をかけて、この文章を眼の動きだけでコンピューターを使い書いてくれました。筆者の著書でヒロさんとALSについて言及し、出版時にお手紙と本を送ったことへのお返事でした。
走って寄付する、END ALS RUN
そんな彼の主催するEND ALSが「走って寄付する」プロジェクトを立ち上げました。引用します。
1km走ると10円がNikeなどの企業からEND ALSに支払われます。「NIKE+」というアプリを使って自動的に走った距離は集計されます。筆者も早速登録しました。
最後に、藤田ヒロさんの言葉を引用します。
END ALS RUNのホームページはこちらです。
(参考)
END ALS
https://end-als.com/index.html
社団法人 日本ALS協会
http://www.alsjapan.org/jp/index.html
難病情報センターホームページ
http://www.nanbyou.or.jp/entry/214