観客上限5000人期間中は、プロ野球はチケット価格を10倍にすべき
先週末に開幕したプロ野球は、7月10日から有観客開催に移行するが、当面は最大5000人に制限されるという。ならば、チケット価格は通常の10倍に設定してはどうか。
広尾晃さんが指摘しているが、観客を入れての開催とする根拠が、ただ「政府の指針」というのはチト情けない。無観客での一定期間の開催を経て、「カクカクシカジカが確認できたから」というのはないのだ(そもそも観客を入れることが発表されたのは、開幕から数試合を消化した時点でしかない)。
また、斎藤コミッショナーの発言も気になった。「よほどのことがない限り」7月10日から観客を入れる、というのだ。「よほどのこと」とは具体的にはどのような事態なのだろう。NPBとしてしっかり定義してあって、単に「コメントできない」ならまだ良いが。
というのも、なんとか約3ケ月遅れで開幕に漕ぎ着けたプロ野球だが、無事120試合を消化し、日本シリーズまで終了できるかどうかは保証されていないのだ。最悪、途中で打ち切らねばならない可能性も皆無ではない。いや、シーズンを打ち切らなくとも無観客開催に戻らねばならない展開は視野に入れておくべきだろう。仮にそうなると、ファンの動揺と失望は計り知れない。したがって、「こうなったらペナントレースを中断する、または無観客に戻す可能性がある」ということをあらかじめ詳らかにすることは、大いに意義があると思うのだが。
7月10日からの観客を入れての開催には、もうひとつとても大きな懸念がある。それはチケットの争奪戦だ。何せファンは3ケ月も待たされ、そこからさらに3週間生観戦をお預けにされ、やっとスタジアムで観れると思ったらキャパシティの10数%しか開放されないのだ。当然、本来の年間シート契約者やファンクラブメンバー優先の販売となるのだろうが、これまで待たされ続けたことで蓄積された鬱憤もあり、空前の競争率になるだろう。
混乱を回避するために各球団とも知恵を絞るだろうが、それでも悪質な転売の横行は避けられないのではないか。
で、提案がある。それはチケットの価格を本来の数倍という水準に設定することだ。ここでは10倍としておこう。
これから繰り広げられるであろうチケット争奪戦の根本的要因は、極端なまでの需給インバランスである。これを矯正しない限り転売は回避できない。これは経済原則である。政府のガイドラインでは、7月10日からは収容人員の50%か5000人の少ない方だ。観客動員の点では我が世の春を謳歌するプロ野球だ。昭和のパ・リーグではないので、各試合とも最大5000人が適用される。これは、収容可能人員数に対しては、キャパ最大(47,508人)の甲子園で10.5%、最少(30,348人)のZOZOマリンで16.5%だ。そうすると、最大5000人制限期間は、需給バランス的には通常開催時の10倍へ値上げというのはあながち外れていない。入場者数制限は、8月1日からは5000人制限が外され、各球場ともキャパシティの50%となる。その時期からは、通常時の2〜3倍に「値下げ」すれば良いと思う。
「ロイヤルカスタマーに、10倍の価格を吹っかけろとはけしからん」と憤慨される方も少なくないだろう。しかし、それが経済だと思うし、混乱や悪質な転売を抑制するにはベストではなくともベターな手法だと思う。
それと、忘れてはいけないことがある。今季は主催試合数は減り、かつ無観客試合があり、その後入場制限があるため、確実にその分球団経営は圧迫されているということだ。プロ野球はアメリカのメジャーリーグなどとは異なり、放映権料よりも主としてリピーターによるチケット収入、場内飲食や物販に依存したビジネスモデルである。で、あるのに無観客でも開催を優先してくれている球団の寛容さ(利益への執着のなさ?)にファンは感謝すべきだろう。入場制限中のとびっきり高価なチケット購入は、愛するプロ野球への「投げ銭」と考えてはどうか。球団も全てのチケットになんらかのメモラビリアを添付するなど、その恩義に応えてあげれば良いと思う。