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ご当地あるある!「千葉県民は落花生を豆の品種で選ぶ」

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長
千葉県八街産の落花生は日本一!?

お歳暮の季節、親しい人に毎年贈るのがご当地千葉県の落花生です。

「八街」は(やちまた)と読みますが、千葉県民はこの八街産と呼ばれる佐倉市、成田市、富里市など八街周辺で収穫される落花生が日本一だと信じているのでありますが、それだけではなくて、落花生を選ぶときには当然のように豆の「品種」で選びます。

まあ、千葉県と言ってもかなり広いですから、東京の隣の浦安や市川、松戸から始まって、お醤油日本一の野田も銚子も千葉ですし、黒潮流れる南房総も千葉ですから、千葉県民全体が落花生を品種で選んでいるわけではないとは思いますが、筆者が住んでいる佐倉市のあたりの北総台地と呼ばれる一帯は落花生の産地でありまして、その産地の人間としては当然のように、何の疑問も持たずに、落花生を品種で選んでいるのであります。

ということに、実は筆者も先日気づいたのでありまして、千葉県北総台地住民の筆者が当たり前だと思っていた品種で選ぶという行為が、全然当たり前じゃないということのようですね。

先日、毎年のように新豆を贈ろうと地元のお店で落花生を選んでいた時のことですが、お店の中でお客さんのおばあさんが「こんなにたくさんあったらわからないわ。」とつぶやいていました。

こんなにたくさんとは豆の種類のことで、つまり、落花生の品種には

「中手豊(なかてゆたか)」

「半立(はんだち)」

「大まさり(おおまさり)」

「郷の香(さとのか)」

と大きく4種類ありまして、たいていのお店ではこの4種類を販売しているのですが、そこから「殻つき」「殻なし」「素豆」「バタピー」「ゆで落花」、さらには「チーズ味」「コーヒー味」などに派生していきますので、おばあさんにしてみたら「こんなにたくさんあったらわからないわ」ということなのです。

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地元のお店の落花生売場。たくさんの種類の落花生が並んでいます。
地元のお店の落花生売場。たくさんの種類の落花生が並んでいます。

どうやらそのおばあさんは地元の方ではないようでしたので、千葉県佐倉市民歴30年の筆者が余計なおせっかいで、「この半立と中手豊を買っておけば間違いないですよ。」とアドバイス。おばあさんとしては「それは何ですか?」となりますから、「落花生の品種ですよ。見た目はあまり変わりませんが味が違いますよ。」とお伝えしました。

それでもおばあさんとしては多分なんだかわからなかったと思いますが、あとの説明は店員さんにお任せすることにして、私は売り場をくまなく見て歩きました。

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売り場に並んだ贈答用の落花生。よく見ると品種が書いてあります。こちらは「中手」。「中手豊」のことです。
売り場に並んだ贈答用の落花生。よく見ると品種が書いてあります。こちらは「中手」。「中手豊」のことです。
こちらは「半立」です。なぜこういう名前が付いたかはよくわかりませんが(笑)
こちらは「半立」です。なぜこういう名前が付いたかはよくわかりませんが(笑)

この「中手豊」と「半立」の差は何かというと、ズバリお味。あっさりとした中手豊に対して、半立の方は味が濃く、落花生好きにはたまりません。贈答品として両方をお贈りすることで先様に味の違いを知っていただきたいというのがご当地人としての思いなのです。

お値段の方も半立の方が少々高めですが、中手豊に対して半立は栽培に手間がかかる割には収穫量が少ない傾向があるらしいですから、お米で言ったらコシヒカリのようなものでしょうか。

こちらは「郷の香」。真空パックになっていますが、ゆで落花生です。
こちらは「郷の香」。真空パックになっていますが、ゆで落花生です。

中手豊と半立が乾燥させて食べるのに対して、この「郷の香」はゆでて食べるゆで落花生用の品種。ゆで落花生というのは、やはり千葉県では当たり前のものなのですが、これもご当地あるあるなのでしょう。他県ではなかなかお目にかかれません。

この他、すでにシーズンを過ぎてしまい店頭には出回っていませんが大粒の「大まさり」というのもゆでて食べることが多い落花生ですが、郷の香も大まさりもまだ残暑が残る9月ごろに出回る品種になります。そのころに出回る品種はお味のあっさり感が強いために乾燥させて殻を割って食べるスタイルではなくて、加工に回されたりすることが多いようで、10月から「中手豊」が、11月に入ると「半立」と徐々に味わいの深い品種が新豆として市場に出回ります。

さて、筆者が今年初めてお目にかかった新品種がありました。

その名は「Qなっつ」。

ほとんど「?????」状態ですが、お話を聞くとピーナッツよりおいしいから「Qなっつ」だとか。

千葉県の農業試験場が開発した10年ぶりの品種で、今年から発売している新商品です。

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袋は同じですが、商品名は「Qなっつ」。もちろん購入いたしました。
袋は同じですが、商品名は「Qなっつ」。もちろん購入いたしました。
Qなっつの袋の裏面には解説が。
Qなっつの袋の裏面には解説が。
お味は香ばしくて味が濃く実に美味です。
お味は香ばしくて味が濃く実に美味です。

ピーナッツを超える味。PよりQだから「Qなっつ」とは親父ギャグ的ネーミングみたいですが、同じようなネーミングに「九里よりうまい十三里半」というのがありますね。

「九里よりうまい十三里半」とはご存じサツマイモのこと。

「栗よりおいしい」という意味で江戸っ子たちが言い始めた言葉のようですが、栗(九里)+四里で十三里になりますが、それを超える味という意味でサツマイモのことを「十三里半」と呼んでいて、サツマイモの名産地(当時)の川越がお江戸日本橋からちょうどそのぐらいの距離にあったことからそういう名前が付けられたと、筆者の親の世代までは当然のように言っていましたが、今となっては、これもご当地あるあるになるのでしょうか。

落花生ひとつとってもこれだけの種類がありますが、千葉県というところは東京の隣に位置していながら、農業試験場が次々と新品種を開発しているようなとても面白いところです。

読者の皆様も、落花生を選ぶときに、ぜひ、品種で選んでみてはいかがでしょうか。

とりあえずいろいろな品種をお試しいただくと、その味の違いが分かりますので、ご自分の好みの味が見つかると思います。

子供から大人まで大人気のピーナッツみそ。これも千葉県だけでしょうか。
子供から大人まで大人気のピーナッツみそ。これも千葉県だけでしょうか。

そんな筆者が、おそらく子供のころから現在まで一番多く食べているピーナッツがこれ、「ピーナッツみそ」。

自分としては当たり前のように思っていたピーナッツみそですが、以前に関西の友人と話をしていた時に、「何やそれ? 知らんわ」と言われましたので、もしかしたら千葉県と東京など関東の一部だけのご当地あるある品かもしれません。

たかが落花生、されど落花生。

これだけ奥が深いのが落花生なのですが、さらにお店ごとに焙煎方法が異なりますから、ご自分のお気に入りの品種をお気に入りの焙煎方法で商品化しているお店を探すとなると、かなりの考察が必要になるのが落花生なのであります。

皆様のお住まいの地域はいかがでしょうか。

日本全国このようなご当地あるあるが、きっとたくさんあると思います。

地元では当たり前で、何の疑問もありがたみもないようなものが、実は地域の宝物だったりする。

これが地方創生のカギになると筆者は考えています。

(写真はすべて筆者撮影)

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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