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シュワルツェネッガーらセレブがアイヴァン・ライトマンを追悼

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

「ゴーストバスターズ」などコメディ映画で知られる名監督アイヴァン・ライトマンの死が報道されて、ほぼ丸1日。ハリウッドは、今もなお強いショックに揺さぶられている。

 このニュースが出たのは、スーパーボウルの最中だった現地時間13日夜。スーパーボウルはそれ自体が国民のお祭りだが、今年は会場がL.A.な上、対戦チームのひとつがL.A.ラムズとあって、ハリウッドの人々も完全にパーティ気分だった。ライトマンの訃報を一夜明けてから知り、ラムズが勝利した喜びから一転して悲しみにくれた人も少なくない。

 アーノルド・シュワルツェネッガーがツイッターに追悼コメントを投稿したのも、日付が変わった14日午前中のことだ。シュワルツェネッガーとライトマンが初めて組んだのは、1988年の「ツインズ」。その後もふたりは「キンダガートン・コップ」「ジュニア」をヒットさせた。しばらく一緒に映画を作っていなかったふたりは、次に「ツインズ」の続編「Triplets」で久々に組むことが決まっており、密に話し合いを進めていたところだったという。

 追悼文の中で、シュワルツェネッガーは、「僕は一生、彼への感謝を忘れません。彼は、オーストリア生まれのアクションヒーローに、コメディに挑戦するチャンスを与えてくれたのです。当時、スタジオは、僕に、悪者を新しい形で殺し、何かを爆発させ、筋肉を見せびらかすことしか期待していませんでした。僕自身は、自分にはコメディができると思っていましたが、それを実現させるのには、同じように思ってくれる人が必要でした。だから、アイヴァンは優れた監督で、友達なのです。ほかの人に見えないものが、彼には見えるのです。そして彼は、あなたがそれを世界に証明するお手伝いをしてくれるのです」と、シュワルツェネッガー。

 彼はさらに、「この秋にまたアイヴァンと一緒に撮影現場に入れることが本当に嬉しいと、つい先週も僕は話していたところでした。もう彼と仕事ができない、彼と一緒に時間を過ごせない、人生について語り合えないなんて、信じられません。でも、僕は、アイヴァンがまだここにいるのだとも知っています。彼は僕の人生の物語の中に、何ページにもわたって存在するのです。もしあなたが幸運にも彼に会うことがあったなら、あるいは彼の作品に触れることがあったなら、彼はあなたの人生の物語にも存在します」とも書いた。

 ほかにも、ソーシャルメディアには数々のセレブによるコメントが見られる。ロン・ハワードは、「機知、知性、才能、並外れた物語の語り方によって、アイヴァン・ライトマンは私たち全体の基準を引き上げてくれました」、ジェームズ・ガンは「『アニマル・ハウス』『ゴーストバスターズ』『パラダイス・アーミー』。アイヴァン・ライトマンは僕が映画好きになる上で大きな役割を果たしてくれた人です」と追悼。2016年の女性版「ゴーストバスターズ」を監督したポール・フェイグは、「大きなショックを受けています。僕は光栄にもアイヴァンと密にお仕事をさせていただくことができました。彼からはいつも学ばせていただきました。彼は僕が一生で一番好きなコメディのいくつかを監督した人です」、ジャッド・アパトーは、「『ゴーストバスターズ』のオープニングナイトは、ロックコンサートのようでした。喜びが爆発していました。あれは子供時代の最高の思い出のひとつです」とツイートした。

「ハッピー・デス・デイ」「ザ・スイッチ」の監督クリストファー・ランドンは、駆け出しだった頃を振り返り、「アイヴァン・ライトマンに会ったのは、僕がどん底にいた時でした。自分が脚本家、あるいは監督になれると、僕は思っていませんでした。ですが、彼は僕が書いた『ディスタービア』という脚本を信じてくれ、そこから僕の人生は変わったのです。支えてくれた彼への感謝は、一生忘れません」と、恩人への感謝を綴っている。コメディ俳優クメイル・ナンジアニは、「伝説の人。彼はすごい数の傑作映画を作った」と、シンプルに称えた。

 メッセージを寄せたそれらの人々に対し、ライトマンの息子で、現在上映中の「ゴーストバスターズ/アフターライフ」を監督したジェイソン・ライトマンは、お礼の言葉を贈っている。その中で、彼は、「生存者の家族に生まれた父は、笑いでレガシーを築きました」と、ユダヤ系移民である父のバックグラウンドにも触れた。そして最後は「思いやりのあるメッセージをありがとうございます。父の映画、父が持つ物語を語る才能を、楽しんでください。父は、それを何よりも喜んでくれます」と締め括っている。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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