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ドーミーイン【サウナ部】部員募集!? 水風呂温度に見るホテルサウナの“熱き冷戦”

瀧澤信秋ホテル評論家
お気に入りリゾートホテルはこの日水風呂13.4度とかなり冷たかった(筆者撮影)

ととのう?

サウナがブームという。冒頭から私事で恐縮であるが、筆者はここ20年来ほぼ毎日サウナっており、フィンランド大使館のサウナも体験したことのあるかなりのサウナ好きだ。あの悦楽をひとりでも多くの人が知るということならば、とにもかくにもこの上ないことである。テレビ東京で放映していたサウナをテーマにしたドラマ「サ道」で「世界中の人がサウナに入ってととのえば、やさしい気持ちになって戦争なんてなくなるかもしれない」という名セリフがあったが、深く頷いてしまうのは筆者だけであろうか。

高級感溢れるホテルスパ・サウナ(リーベルホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン/筆者撮影)
高級感溢れるホテルスパ・サウナ(リーベルホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン/筆者撮影)

ととのえば、と書いたが、サウナーの間でしばし用いられるのが「ととのう(整う)」という言葉。サ道でも一役脚光を浴びた表現だが、「ととのう」というのはサウナ→水風呂→休憩という温冷交代浴を繰り返すことで得られる快感のことを指す(※)。一種のトランス状態とも言えるだろうか。サウナそのそものが、血行促進や発汗作用で美肌効果や冷え性の改善などの効用があるとされる上、ととのうことでさらにリラックス度は頂点を極めるといっても過言ではない。

※生活習慣病のある方の温冷交代浴は注意が必要です

サウナのキモは水風呂温度

温冷交代浴というだけあり、サウナと水風呂の温度はかなり重要だ。サウナの温度というのはわかりやすいが、水風呂の温度がおろそかになっているサウナ施設を間々見かける。さらには時に見かけるサウナがあるのに水風呂がないとくれば、サウナーにとって蛇の生殺し状態以外のなにものでもない。それだけに水風呂の重要性は言わずもがな。水風呂の有無・温度はととのいに大きく影響する。さらにいえば水質も重要なのだがそこまで究めるのはかなりハードルが高い(それにしても静岡市の「サウナしきじ」の水質は素晴らしい)。まっとにかく水風呂、そして水温はととのいへの最も重要な指標である。

サウナしきじは全国区の知名度(筆者撮影)
サウナしきじは全国区の知名度(筆者撮影)

そもそも何度がいいのか?という根本的な問いであるが、市中のスーパー銭湯などの水温計でみかけるのが17度~20度くらいだろうか。でも、最近低くなりつつある傾向も感じていて時に16度台なんていうのも見かけるようになった。熟練サウナーには15度以下じゃないと水風呂った気がしないという人も多い。筆者個人の感覚としては18度以下ならまぁ合格、15度以下というのはかなり冷たく感じ“ととのいへの近道”という印象。

ちなみに23区西部のホームタウンの銭湯と少し離れた23区北部のカプセルホテルが筆者の“ホームサウナ”だが、水風呂温度はそれぞれ16~17度/14~15度といった具合だ。一方、シティホテルのヘルスクラブやリゾートホテルの大浴場といったホテルサウナでいうと、もう少し高めの印象もある。これはチラー装置という冷却する機械(これがめっぽう高価)の設置といった問題もあるのだろうが、そもそもホテルは公共性が高い。特定のゲスト趣向のためだけに極めてはいけないこともあるのだろう(ホントか?)。

チェーンホテルの水風呂を全て14度にしようとした社長の言い分

北谷温泉 レクー沖縄北谷スパ&リゾートの水風呂水温はこの日13.4度を表示していた(筆者撮影)
北谷温泉 レクー沖縄北谷スパ&リゾートの水風呂水温はこの日13.4度を表示していた(筆者撮影)

ホテルサウナの水風呂温度といえば思い出すエピソードがある。とある上品なリゾートホテルの水風呂で体感したのがなんと13.4度、しかも沖縄だ。しかも、と書いたのは沖縄にはリゾートホテルは多く、スパ施設が割とセットといった印象で数多く体験してきたが、水風呂の温度まで重視した施設はあまり思い当たらない。くだんのホテルは北谷アメリカンビレッジにある「北谷温泉 レクー沖縄北谷スパ&リゾート」というリゾートホテルだ。スタイリッシュで立地も最高だがリーズナブルなことやサウナ&低温水風呂もリピートする理由のひとつ。

レクー沖縄北谷スパ&リゾートの“客室にある”専用プール(プレミア棟/筆者撮影)
レクー沖縄北谷スパ&リゾートの“客室にある”専用プール(プレミア棟/筆者撮影)

いろいろ調べてみると運営しているのはベッセルホテルズという広島県福山市に本拠を置くホテルチェーン。“ベッセル”と聞いて筆者はなるほどと思ったが、北海道~沖縄まで全国各地にホテルを運営しており大浴場&サウナを擁する施設も多くある。これは聞いてみるしかないと同社を率いる若き瀬尾吉郎社長を直撃した。いまやホテル業界は各社しのぎを削る戦国時代という中で「ライバルのホテルチェーンもある中で差別化が重要なのはいうまでもないが、実際にはなかなか難しい部分もある」「言葉だけ独り歩きしがちな差別化であるが、だったら水温で勝負しようとした」という。いま思えばサウナブームの先取り的な先見性ともいえるが、着眼点がなかなか面白い。

レクー沖縄北谷スパ&リゾート(大浴場/筆者撮影)
レクー沖縄北谷スパ&リゾート(大浴場/筆者撮影)

大浴場やサウナにもフィーチャーしてきたホテル運営会社ならではとも言えるが、水風呂の温度をアイデンティティとしてまさに体感で他ホテルとの違いを体現しようとしたのだ。社長がサウナファンの方々に話を聞いたら「やっぱり15度以下じゃないとととのった気がしない」ということを聞いて「じゃあ14度にしよう」と即決したらしい。個人的にはかなり嬉しい発想だ。時に冷たすぎるというゲストの声もあったというが、コアなサウナ好きに噂が広まり、サウナ&水風呂目当てでベッセルホテルズを選ぶゲストも際立っているという。サウナの水風呂温度で集客するなんてブラボーすぎて涙が出てくる。

47段上った先にある本格的な貸し切りフィンランドサウナ

白井屋ホテルのプライベートサウナ(筆者撮影)
白井屋ホテルのプライベートサウナ(筆者撮影)

ちなみにサウナそのものの温度は重要であるが、湿度がおろそかになっているサウナは意外に多い。好みもあるが湿度は発汗を相当左右することについてはこれまで身をもって体験してきた。水風呂と水質について前述したが、サウナ内の温度と湿度はそんな関係に似ているか。温度と共に湿度の調節という点でいうと、究極はセルフローリュウ(自身でサウナストーンに水を掛け蒸気を発生させる)最高というわけで、凄かったホテルサウナ体験を紹介したい。

この階段の先に悦楽が待っている(筆者撮影)
この階段の先に悦楽が待っている(筆者撮影)

場所は群馬県前橋市の白井屋ホテル。ご当地で300年以上の歴史を誇っていた白井屋旅館をエッセンスとして、エリアの再生プロジェクトと共にアートデスティネーションホテルが最近誕生した。かなり個性的なホテルだ。近年の市街地空洞化の波はこの地においても例外ではなく、前橋のまちなかを活性化したいという思いに国内外のクリエイターが集結た。かつての老舗旅館のコンクリートの構造を剥き出しにした大胆な吹き抜けが印象的だ。

窓外は繁華街(筆者撮影)
窓外は繁華街(筆者撮影)

でも筆者にとって印象的だったのはサウナだ(アートに失礼な)。ホテル本棟に隣接する階段を47段上った先にある本格的な貸し切りフィンランドサウナである。シャワー&パウダーコーナーのある小屋とサウナ&水風呂のある小屋があり階段で結ばれている。何が凄いって周りは飲み屋なども多い繁華街にあるホテルにして、47段の階段昇降は周囲から丸見えだ。逆にいうと小屋からの眺めはある意味最高。本格的フィンランドサウナ小屋から望む歓楽街、これはまさしく勝ち組か!? でも本当の勝ち組体験は、小屋に備えられたバスローブを羽織りさらに階段を上がり屋上のチェアで佇むひととき。この辺りは上州のからっ風といって強い風が有名であるが、季節が冬だったということもあってか、セルフローリュウ&水風呂&からっ風でなんと1回目からととのってしまったのだ。

キンキンに冷えたミネラルウォーターそして水風呂(筆者撮影)
キンキンに冷えたミネラルウォーターそして水風呂(筆者撮影)

肝心のサウナは桶と柄杓が備えられ自分好みにし放題。サウナストーンに水を掛け存分に好みの温度・湿度へ調整出来る。水風呂も相当冷めたい。水温計はなかったが15度前後じゃなかろうか。とにかく一人用の水風呂スペースは感じる冷たさもひとしおだ。製氷機やミネラルウォーターがセットされているあたりがラグジュアリー感満点。すべて独り占め。そもそもホテルの貸し切りサウナ小屋という発想が本当に贅沢である。宿泊者専用で別途5500円という設定だが、サウナ好きであったら絶対にオススメである。カップルで利用すれば二人の仲はもっと“熱く”なること請け合いだ。

ドーミーインの【サウナ部】をご存じですか?

DOMINISTYLE サウナ部 冊子(筆者撮影)
DOMINISTYLE サウナ部 冊子(筆者撮影)

ホテルとサウナでいえば、先述したベッセルホテルのようなビジネスホテル&サウナの組み合わせは昨今王道になりつつあるが、ビジホ温泉にサウナのパイオニアが「ドーミーイン」だ。筆者は全店へチェックインした経験を持つが(2018年9月現在)とにかくサウナと水風呂がドーミーインを選ぶ理由のようなところもある(夜鳴きそばもね)。ドーミーインの温浴施設、そして同社のサウナや水風呂に対する徹底した探究心は知れば知るほど感動的なのだ。

ドーミーイン・global cabin浅草(筆者撮影)
ドーミーイン・global cabin浅草(筆者撮影)

コロナ禍で最近では出向く機会も限られているが、久々に都内2軒のドーミーインへ行ってみた。「展望大浴場 あさひ湯 ドーミーイン・global cabin浅草」は、最近ホテルで流行の長期滞在向けにリニューアル等なされており注目している施設。こちらの大浴場ではオープンエア(ととのい)スペースから、金のう○こでお馴染みなフィリップスタルクのオブジェやスカイツリーも望めととのい癒やされる。もう1店は3月18日に開業したばかりの「天然温泉 豊穣の湯 ドーミーイン池袋」。こちらの露天風呂にはビューはないが、なんと露天風呂スペースの入り口にポカリスエットが設置されていた。水風呂の針も12~13度辺りを指しており刺激的だ。ドーミーさんわかってるぅ!と欣喜雀躍。

ドーミーイン池袋(筆者撮影)
ドーミーイン池袋(筆者撮影)

ところで、先日ドーミーインの方から話を聞く機会があったが「サウナ部」の話題が出た。ごくごく控えめに「こんなのがあるんですが」といった程度の語り口であったが、サウナ好きホテル評論家としてはマジかよ!というキャッチーなワードだ。正式には「DOMINISTYLE サウナ部」といい、Facebook公式ページが密かに開設され“入部者”も増えているという。ドーミーインといえば人気ビジネスホテルとしての地位を不動のものにしつつあるが、ドーミーインと大浴場、そしてサウナ&水風呂への情熱を知るほどにサウナ部とはなんとも感慨深い部活動と感じるのは筆者だけであろうか。オロポカップ(サウナ好きにはわかる)なるものまで紹介されている…これは本気だ。

ドーミーイン池袋(筆者撮影)
ドーミーイン池袋(筆者撮影)

「DOMINISTYLE サウナ部員による全国ドーミーイン勝手にランキング!」という冊子をいただいた。サウナ編・水風呂編・ととのいスペース編・泉質編とそれぞれランキングされておりチラー装置の有無まで掲載されている。細かく見ていきたいところであるが、そろそろ本稿のスペースも尽きてきたので今回はここまで。別の機会にランキングも詳しくチェックしてみたい。

今回は水風呂の温度に注目してみたが、13.4度に15度、そして12~3度とホテルサウナ/水風呂温度に見るまさに“冷戦”の様相。熱くそしてクールな戦いは続く…

*     *     *

このご時世、最新の注意を払ってサウナライフを愉しみたいものだが、サービスを提供するサウナ施設側でもとにかく対策に気遣っていることがうかがえる。利用者としては静かになるべく密を避けるのは基本だ。そういえばドーミーインのサウナではスタッフが頻繁にチェックに来て換気のため一定時間ドアを開放していた。まぁ温度が少し下がるのは残念であるが、サウナストーブの強烈パワーですぐに復活するのでヨシとしよう。もうすぐきっときっと復活するだろういつも通りの生活をへ期待を抱きつつ-今日もサウナにはととのいが溢れている。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

ホテル評論家の辛口取材裏現場

税込330円/月初月無料投稿頻度:月1回程度(不定期)

忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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