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台風8号は「過去最強」だったのか?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
台風8号の気象衛星画像

台風8号は11日朝、関東の東海上で温帯低気圧に変わりました。「過去最強」という言葉がひとり歩きした台風8号、結局のところはどうだったのでしょうか。

条件付きの過去最強

台風8号は、接近前から「沖縄付近では7月として過去最強クラス」と言われました。たしかに、沖縄本島周辺では、そのレベルの猛威をふるいました。

ただ、今回は「沖縄付近」で「7月として」という条件付きの「過去最強」。しかも、「クラス」ですから一番強かったわけではないですし、一年を通してだと「過去最強」には遠い台風でした。

にもかかわらず、「過去最強」という言葉が、ひとり歩きをします。

九州や本州に来る頃には、勢力を落とす予報が出ているのに、気象予報士の手の届いていない所で、「過去最強」がかなり引っ張って使われているのには、首をかしげざるを得ませんでした。 

煽りは、将来の誰かを犠牲にする

「毎年のように過去最強の台風が来てない?」と、おかしさに気付く人もすでに出てきていますが、本当に過去最強が来た場合は、なんと表現するのでしょうか。「宇宙最強」とか、安物の宣伝のような表現にするのでしょうか。

これが繰り返されると、「また大げさに言っている」と感じる人が増えます。

将来、本当に危険な気象状況になった時、誰かの避難をさまたげるかもしれません。

きつい言葉で言えば、大げさに煽ることは、将来の誰かを犠牲にするかもしれない、ということです。

災害を防ぐには大げさなくらいの呼びかけでもいい、という考えもありますが、「将来の誰かを」という視点も必要なのではないでしょうか。

多種多様な気象情報から選ぶ力

今回、すべての気象情報が、「過去最強」と伝えていたわけではありません。そうでない情報も存在しています。

もちろん、どちらの情報が良いかの判断は、人それぞれでしょう。

多種な場所から、多様な気象情報が出ている時代です。自分に合う気象情報を選ぶ力が求められます。

■台風8号が急速に衰えた理由については、10日の記事に。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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