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中国、ネット通販大手JDがドローン配送試験:トラックよりも輸送コスト70%減

佐藤仁学術研究員・著述家
(JD.com)

中国のネット通販大手のJD.comがドローンでの配送の試験を実施している。中国陝西省で当局からの認可も得ており、ドローンによる空中からの配送試験を行う。同社では2016年からドローン配送の試験を行っており、既に江蘇省、北京郊外、四川省、広西チワン族自治区でも実施。2017年1月時点は20程度でのドローンの飛行ルートだったが、2017年末までには100ルートまで拡張したいとのこと。

各家庭への直接配送ではない

ネット通販で購入した荷物はドローンで都市部から田舎まで飛行。各家庭の上空まで直接配送されるわけではない。JD.comの荷物受け場所にドローンが到着すると荷物は落下。そこで職員が荷物を受領して、その職員が各家庭まで配送するようだ。1回の飛行で8~15個の荷物が配送される。Amazonなどもドローンによる配送試験を行っているが、こちらは各家庭の上空まで飛行して荷物を落下させる仕組みだから、ドローンを受け入れ可能な場所にしか配送できない。ドローンが上空から荷物を落下してもいい家は、地方で大きな庭のある家など限定されてしまうが、JD.comのドローンであれば地域ごとに纏めて配送も可能なので、効率的だ。また固定のルートであれば、配送ごとに詳細なルート設定なども不要。

ドローンで配送コスト70%減

またJD.comでは農産物を農産地から都市部へドローンを活用して運搬することも検討。同社によると今後2~3年以内には重さ1トン(1,000キロ)までの荷物を運ぶことが可能になる予定。JD.comのCEOのRichard Liu氏によると「ドローンによる配送はトラックでの地上での輸送よりも70%も配送費用が削減できる」とのこと。国土が広い中国では燃料費と人件費が高いトラックでの配送は大きな負担。またトラックでは20分以上かかるところをドローンなら5分で配送できるので時間短縮も可能だし、渋滞を考慮する必要がない。中国でも長距離トラック運転手の仕事がドローンに奪われるようになるのだろう。

JD.com

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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