【東京】神楽坂近くに「地鶏&飲み放題」の新店!15品越えの焼鳥コースがうまい! 7/2オープン
今回冒険するのは、東京都新宿区の焼鳥屋「とり卓忠」。そう書いて「とりたくちゃん」と読む。屋号だけ見れば大衆的な匂いを感じさせるものの、じつは都内の高級店で修業した高橋さんが焼き手を務める新店(7月2日オープン)。今後に期待がかかる焼鳥屋がまた一つ増えた。
高級焼鳥ながら飲み放題付きは貴重?
最寄りは神楽坂駅、または江戸川橋駅。「とり卓忠」では焼鳥に一品料理を含めた充実のコースと飲み放題が一緒に楽しめる。それだけ聞くと特段珍しくは感じないかもしれないけれど、なんといっても地鶏オンリーだ。東京を筆頭に全国各地で高級焼鳥が増えているものの、いい地鶏を扱いながら「飲み放題」まで取り入れている高級焼鳥はまだまだ少ない。
どうしても飲み放題となるとワインや日本酒は銘柄が限定的になってしまうけれど、ふだん生ビールやレモンサワー、焼酎のソーダ割を好んで飲んでいるなら、いつもと変わらない感覚で楽しめると思う。
まずは疲れた身体を癒すかのように椀ものから。軍鶏の胸肉に合わせたのは「アカミズ」だそう。おっと、見慣れない野菜。思わず聞いてみれば「秋田県産の山菜なんですよ」と高橋さん。シャキッとした独特な歯ざわりとほのかなぬめり。出汁の風味と相まって、やさしい味わい。うーん、これはいい出だし。
2品目は、地鶏の一品としては定番のたたき。栃木しゃものきめ細かなむね肉をしっとりと焼き上げている。「上にシソベーゼを添えています」と高橋さんが言うように、本来ならバジルを使うジェノベーゼを紫蘇に置き換えている。そう、バジルも紫蘇も同じくシソ科。これが、また合うんだ。
続いては信州黄金しゃものもも肉を塊で焼き上げたもの。しかも、肉そのものをぬか漬けにして風味をまとわせているのが個性的で、日本酒が恋しくなる。まだビールが少し残っていたのだけど、こういう時に気兼ねなく日本酒を頼めるのも「とり卓忠」のいいところ。
焼鳥はホロホロ鳥のむね肉から
さぁ、待ちに待った焼鳥の1本目はホロホロ鳥の抱き身(むね肉)だ! そもそもホロホロ鳥は鶏(にわとり)とはまったく異なる鳥。肉質は繊細で締まりがよく、味も濃いのが特徴だ。噛めばしっとりと吸い付くようで歯切れよく、肉全体に脂がまわり、ふっくらと……。
あぁ、こういう抱き身が1本目というのが嬉しい。ささみ以上にむね肉をうまく焼けるかどうかが職人の腕の見せどころ。1本目の出来でコースの印象がガラッと変わるくらいだ。もちろん「とり卓忠」の抱き身は文句なしの仕上がり。
続いては、砂肝。鳥だけにある部位だからか、砂肝が出されると焼鳥屋に来たことを実感するんだ。ホロホロ鳥の砂肝はサクサクッと軽やかな仕上がり。4貫目と5貫目の間にあるのは……砂肝のえんがわだ。クニュッとやわらかな歯ざわり。こういうひと工夫もなんだか嬉しい。
ホロホロ鳥のもも肉はトップにどしっとボリュームをもたせた主役級の1本。噛めば甘い脂がジュワッと広がっていく……。こういうチカラのあるネタが前半に出てくると、テンションもぐっと高まるというもの。それだけ、最初の数本はコースの満足度を左右するくらいに大事だと思うわけだ。
運が良ければ、白レバーと出合えるかも
ふと焼き場に目をやると、白レバーがずらりと並べられていた。高橋さんが均等に火が入るよう丁寧に返しながら焼いていく。じっと見ているだけで胸が躍り、つられて酒もすすむようだ。
「ホロホロ鳥の白レバーです」と高橋さん。くぅ、これだこれ! この艶やかな質感。口に含めば舌にとろりと絡み、文字どおりホロッと砕けるように溶けていく背徳の味わい……。
ただ、「とり卓忠」では信州黄金しゃもや栃木しゃもといった地鶏も扱っているので、いつもホロホロ鳥のネタが出されるわけじゃない。地鶏やホロホロ鳥は希少。だから、この白レバーに出合えたなら、きっと幸運の証だ。
手羽は燻製に仕上げていっそう香ばしく
ここで、燻製した手羽。地鶏の手羽は若鶏と違ってどうしても筋肉質で筋っぽさがある。そりゃそうだ。とくによく動かす部位なのだから、長期飼育の地鶏の手羽ならなおさらそう。それを燻してうまみを閉じ込めつつスモーキーに仕上げている。かぶりつけば香ばしさが鼻を抜けるようで、もう手が止まらない。
奥にそっと添えられた黄身のみりん漬けもこっくり、まったりとしていい口あたり。さすがに口には出さなかったけれど、ほっかほかのごはんが欲しくなったくらいだ。
2種の地鶏のもも肉をねぎまに
そろそろ終盤に入ろうというところで、王道のねぎま。「1貫目は信州黄金しゃも、2貫目は栃木しゃもです」と高橋さんが教えてくれた。こういう風に異なる地鶏の肉を一度に味わるのも貴重な体験だ。
信州黄金しゃもはとにかくバランスがいい。甘い脂とうまみ豊かな肉に一体感がある。一方、栃木しゃもの脂はさっぱりと。キュッとした肉質で噛むほどに味があふれるイメージ。好みとしては信州黄金しゃもだけど、どちらも異なるおいしさ。これが、地鶏の楽しみでもあるんだよなぁ。
最後はつくねとうずらの玉子の2本出し
最後の串は、つくねとうずらの玉子の2本出し。「とり卓忠」が扱っている地鶏の肉をミックスしたつくねは肉のうまみ豊かで、ふっくらと。うずらの玉子はとろりしとした半熟。わんぱくだけれど、これを交互に食べるのがうまいんだ。
コースの〆を飾るのはたけのこの仲間である「ネマガリタケ」の炊き込みごはん。焼鳥屋の〆というとそぼろごはんや親子丼、鶏そばを出す店が多いのだけど、ここはシンプルな炊き込みごはんときた。サクサクッとした小気味よい食感。しっかり焼鳥を味わったあとだからか、この優しい味わいが身体にじんわりしみ渡るよう……。いや、優しすぎておかわりしたくなったくらいだよ。
地鶏の焼鳥をしっかり食べて、肴を摘まんで、〆も堪能して。飲み放題付きだからとビール、レモンサワーに加え、たっぷりと日本酒も味わった。これで税込12,000円。7杯は飲んだものだから、もう2軒目いらず。焼鳥好きの吞兵衛にとってはとくに"刺さる"店だと思う。
確かに地鶏の焼鳥と飲み放題は魅力的ではあるのだけど、それ以上にコースの組み立てにぐぐっと来た。高橋さんは秋田県出身。それもあって、一品料理には秋田県産の「アカミズ」や「アカモク」「トンブリ」「ネマガリタケ」といった食材も取り入れているわけだ。そう、飲み放題は主題じゃない。うまい焼鳥と郷土愛あふれる一品。それが「とり卓忠」の醍醐味だ。
「まだまだこれからです。まずは、しっかり焼鳥と向き合っていきます」と意気込む高橋さん。修業時代の姿も見たことはあるけれど、焼鳥職人としていっそう顔が引き締まっていた。またいつか訪ねる日が楽しみだな。
▼冒険のおさらい
①地鶏の焼鳥に飲み放題付きのコース
②ホロホロ鳥の白レバーが秀逸
③店主の地元・秋田県産の食材も
店舗情報
【店名】とり卓忠(とりたくちゃん)
【最寄り駅】神楽坂駅、江戸川橋駅
【住所】東京都新宿区山吹町6-3
【予約】予約サイト「Table Check」
【定休日】月曜
【串のアラカルト】なし
【コース(セット)】おまかせコース(12,000円、飲み放題付き)
【鶏メモ】信州黄金しゃも、栃木しゃも、ホロホロ鳥ほか