アメリカの20州では成人の3割以上が肥満判定を受けている
成人の3割以上が肥満な州は20に及ぶ
ベーコンをはじめとした油気の強い物への欲望に代表されるダイナミックな食生活、ファストフードなどの外食産業の浸透、加工食品の普及ぶり。さまざまな特徴的な生活様式に影響を受ける形で、アメリカでは肥満体系を有する人が多いことで知られている。その実情をCDC(Centers for Disease Control and Prevention:米疾病予防管理センター)の公開データを元に確認していく。
図中で使われる「BMI」について補足説明をしておく。これは「肥満」度合いを示す基準の一つ。具体的には「体重÷身長÷身長」で算出される。日本肥満学会ではBMIが22で平均的体格・体重、25以上を太り気味、18以下をやせ気味としているが、アメリカでは
・Underweight(低体重)……18.5以下
・Normal weight(標準体重)……18.5-24.9
・Overweight(やや肥満)……25-29.9
・Obesity(肥満)……30.0以上
と区分している。
次の図は、アメリカ各州などにおける成人男女(今件では18歳以上基準)のBMI値について、30を超える人、つまり肥満判定を受けている人の割合を示したもの。薄い赤色で背景を着色したのは、30%を超える州。
30%超は全部で20州。最大値を示すMississippi州は35.1%、West Virginia州が同率の35.1%、Arkansas州が34.6%と続いている。「肥満大国アメリカ」という言い回しに恥じないデータではある。全米平均では28.9%、最低の値を示すColorado州でも21.3%。5人に1人が肥満状態。少々信じがたいが事実に他ならない。
肥満以外の人はどれ位いるのだろうか
該当データは肥満以外に「やや肥満」=「過体重」、そして「標準」「やせ気味」それぞれの人の人数比率も用意されている。これらを合わせ、各州「肥満」「過体重」「標準」「やせ気味」の人数区分を示したのが次のグラフ。
↑ アメリカの大人(18歳以上)における肥満判定者などの比率区分(州別)(2013年、CDC・BRFSS)
前述の通り全米では28.9%が「肥満」、35.4%が「やや肥満」。標準スタイルの人は33.4%に留まっている。「やせ気味」の人は1.8%のみ。
大よそ「肥満」と「過体重」の合計が6割から7割を維持している。つまり「肥満」の少ない州でも「過体重」の比率が高く、「標準」+「やせ型」の比率が一定(4割足らず)に留まっている。
さらに前年分、つまり2012年分の「肥満」判定を受けた人の割合を2013年分と比較すると、増えた州の数は減った州のほぼ3倍にあたることが確認できる。
多くの州で「1年間で」肥満と判定される人が「全成人の」1%ほど増えている計算になる。100人大人がいれば、毎年1人ずつ、肥満の人が増えることを意味する。
今件状況の説明、理由付けは多様に及ぶ。生活様式に加え、食生活の改善と変化、交通機関の整備、社会生活そのものの変移、さらには現在5000万人に届かんばかりで伸び続けているSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program:補助栄養援助プログラム、旧フードスタンプ)が一因との見方もある。
また歳を取るほどBMI値は上がる傾向にあることから、平均寿命が延びているのが一因とする説もある(それにしては急激だが)。しかし加齢による積上げはほとんど無関係であるのもCDC内の別検証では明らかにされている。
もちろん一つひとつ単独の項目のみが原因ではなく、複数の要因の積み重なりによる結果ではあろう。しかしこのままではアメリカにおいて、「今世紀中頃までには国民全員が肥満判定を受けてしまう」との半ばジョークとして伝えられた話が、絵空事でも何でもないことも十分納得できるというものだ。
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