年齢階層別の持家と借家の割合をさぐる(2020年公開版)
昨今では価値観の変化や近所付き合いのわずらわしさ、防犯、転勤などの問題から必ずしも最優先されるとは言い難くなったものの、今なお多くの世帯にとって持家を得ることは夢の一つであり、一生の目標に他ならない。一方で、金銭的な問題、管理のし易さなどを優先し、借家住まいを好む人も少なくない。今回は総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の確定集計結果から、世帯主の年齢階層別区分を中心に持家率の実情を確認する。
まずは全体的な持家と借家などの割合。持家と借家、両者の比率は6対3.5程度であまり変わりなく推移している。
直近調査結果、つまり2018年分では持家率は約6割。それでは世帯主の年齢階層別に見ると、割合にはどのような変化があるだろうか。持家率をグラフ化したのが次の図だが、当然のごとく若い世帯主の世帯ほど、低い割合となっている。
20代はさすがに1割足らずでしかないが、30代に入ると急激に持家率が増加し、40代後半には6割に達している。30代以降持家が欲しいとの思いが急激に強まり、取得していくようすがよく分かる。
60代前半、つまり世帯主が定年退職時期においてはおおよそ4人に3人の世帯で、住宅を保有していることになる。住宅取得への思いの加熱は50代でほぼ終結し(言い換えれば「可能性のある世帯」「願望を持つ世帯」における取得が終わり)、それ以降の持家率の伸び率は微々たるものとなる。見方を変えれば定年退職後も約2割の世帯は賃貸住宅住まいになるが、これに関しては機会をあらためてメスを入れることにする(単純に住宅取得をしなかった他に、持家を売却や譲渡で手放し、新たに賃貸住宅住まいを始める事例も少なくない)。
「それにしても若年世帯の持家率が低い」という声が聞こえてきそうな結果だが、経年データを見ると、その声にうなづかざるを得なくなる。
60代前半までの間で近年になるに連れて持家率が低下する傾向にある。若年層ほど低下度合いが著しい。世帯主の年齢だけを考えれば、「若年層の持家取得が年々難しくなっている」と結論付けられる。
しかし今調査では単身世帯も含まれていることから、単身世帯も二人以上世帯も合わせて計算されている点に注意が必要となる。そして家計の上でやりくりが難しい単身世帯率が(特に若年層で)増加している以上、住宅取得率が減少しても仕方が無いとの一面もある。
とはいえ、単身世帯の増加だけでは、若年層の急激な持家率の低下は、説明が付きにくいのも事実ではある。財力の格差、将来を見越した上での住宅取得の回避など、さまざまな理由が若年層の持家率を下げていると考えた方が、道理は通りそうだ。
■関連記事:
新築・既存ともに物件増加、特に既存物件が大きく増加…賃貸住宅会社の物件の増減をグラフ化してみる(2019年12月発表分)(最新)
半世紀以上にわたる民間・公営賃貸住宅の家賃の変遷をさぐる(2019年公開版)
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。