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皮膚の健康を守る!ナイアシンアミドの驚くべき美容効果とは?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

みなさんは、ビタミンB3の一種であるナイアシンアミド(別名:ニコチン酸アミド)をご存知でしょうか?実は、このビタミン成分には皮膚の健康を守る様々な効果があることが分かってきています。今回は、ナイアシンアミドの働きと、それが皮膚の老化や炎症、色素沈着などにどのように影響するのかを解説していきます。

ナイアシンアミドは、体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の合成に関わる重要な物質です。NAD+は、細胞のエネルギー代謝や酸化還元反応に不可欠な補酵素として知られています。また、ナイアシンアミドはDNA修復や細胞ストレス応答にも関与し、細胞の長寿命化や健康維持に貢献すると考えられています。

【ナイアシンアミドの抗酸化作用と抗炎症作用】

ナイアシンアミドは強力な抗酸化物質としても注目されています。酸化ストレスは活性酸素種(ROS)やフリーラジカルの発生によって引き起こされますが、これは細胞の老化や炎症を促進する要因となります。ナイアシンアミドは、NADPH オキシダーゼやNO合成酵素の活性を調節することでROSの生成を抑制し、酸化ストレスから細胞を守ります。

また、ナイアシンアミドには抗炎症作用もあります。炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)の産生を抑制し、抗炎症性メディエーター(IL-10、MRC-1など)の産生を増加させることで、炎症反応を鎮静化します。ニキビや乾癬、アトピー性皮膚炎など、炎症を伴う皮膚疾患の改善に役立つと期待されています。

【色素沈着の予防と皮膚の老化対策】

ナイアシンアミドは、メラニンの生成や転送に関わる酵素の活性を抑制することで、シミやそばかすなどの色素沈着を予防する効果があります。また、コラーゲンやエラスチンの分解を防ぎ、線維芽細胞によるコラーゲン生成を促進することで、ハリのある若々しい肌を保つのに役立ちます。

さらに、ナイアシンアミドは皮膚の糖化を抑制します。糖化とは、タンパク質と糖が結合することで起こる反応で、コラーゲン線維の断裂や黄ばみの原因となります。ナイアシンアミドの抗酸化作用により、この糖化プロセスを防ぐことができるのです。

【皮膚疾患への応用と今後の可能性】

ニキビ、乾癬、アトピー性皮膚炎など、様々な皮膚疾患の治療にナイアシンアミドが用いられています。その抗炎症作用と抗菌作用により、炎症を沈静化し、細菌の増殖を抑制することで症状を改善します。また、色素沈着を伴う疾患、例えば肝斑(かんぱん)などにも効果が期待できます。

近年では、ナイアシンアミドを皮膚に直接届ける新たな製剤の開発も進んでいます。例えば、マイクロニードルを用いたナイアシンアミドの経皮吸収や、ヒアルロン酸を基材としたナイアシンアミド含有の皮膚注入剤などが研究されています。今後、さらに効果的で使いやすいナイアシンアミド製剤が登場することでしょう。

ナイアシンアミドは、その多彩な効果により、皮膚の老化や炎症、色素沈着などの予防に役立つ有望な成分だと言えるでしょう。美容と健康のために、ナイアシンアミドを上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献:

1. Boo, Y.C. (2021). Mechanistic basis and clinical evidence for the applications of nicotinamide (niacinamide) to control skin aging and pigmentation. Antioxidants, 10(8), 1315.

2. Rolfe, H.M. (2014). A review of nicotinamide: Treatment of skin diseases and potential side effects. Journal of Cosmetic Dermatology, 13(4), 324-328.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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