温泉専門家が教えるハズさない湯宿選び 「海温泉」と「山温泉」で迷った時の答えとは?
温泉ジャーナリストの植竹深雪です。
突然ですが、「山温泉」と「海温泉」で効能が変わるってご存知ですか?
ストレスによる疲労がかなり溜まったとき、現実逃避したい気持ちになって、ふと「温泉旅にでも行きたいなあ」と思ったことはありませんか? 温泉旅から得られる効果の一つに「転地効果」というものがあります。日常から離れ(できれば100キロメートル以上離れているのが理想)、自然環境に恵まれた温泉地に出かけることで、五感に刺激を与えることができるとされています。
また脳内ホルモンの調整をつかさどる自律神経のスイッチが入りストレス解消、体調や精神的な疲労の回復に効果があるとも言われているので、旅は上手に活用したいものです。
「海の近くの温泉に行きたいな」または「山にある温泉に行きたいな」などと思うのは、もしかしたら身体が発したSOSのサインなのかもしれません。
もちろん「海が好きだから海の温泉に行きたい」「山派だから山の温泉に行きたい」という温泉地の選び方は大切だと思います。 しかし、心や身体が特定の状態のときにそのような選び方をしてしまうと、実はいい作用や効果が得られず、最悪の場合、悪化してしまう恐れもあるのです。落ち込んでいるときは「海温泉」を選ぶなかれ 海が近い温泉の温泉分析表を見ていると、たまに禁忌のところに「うつ病」と明記されていることがあります。
立地によって、得られる効果に違いがあるのでしょうか?
ざっくりとした結論から言うと交感神経を優位にさせて元気になりたいなら「山温泉」を、心身を落ち着かせたい気持ちのときは「海温泉」を選ぶのがよいと言われています。
「山温泉」と「海温泉」の効能と禁忌について、まとめてみました。
《山の温泉地》
・標高が高い場所は交感神経が高まるので、気分転換したいときに最適
〇明るくリフレッシュがしたい
〇元気になりたい
〇気持ちが落ち込み悩んでいる人、うつ病の人
×イライラしている人
×高血圧の人
《海の温泉地》
・適度な湿度でリラックスができ、開放感のある景色に気持ちが明るくなる
・塩分やオゾン等を含んだ空気が、副交感神経を刺激し緊張が緩和する
〇疲労が溜まっているので休養したい、癒されたい
〇気持ちを落ち着かせたい
〇イライラしている人、高血圧の人、呼吸器系が弱い人
×痛みがある人
×気分が落ち込み、沈んでいる人(うつ状態)
では、オススメの山温泉と海温泉をいくつか紹介したいと思います。
山の温泉ならば、標高1800mに位置する群馬県の「万座温泉」。
ここは、硫黄成分含有量が日本トップクラス。緑に囲まれた上信越高原国立公園内にある高山温泉郷で、一日に540万ℓと湧出量が豊富です。万座温泉には日帰り温泉施設や宿泊施設がいくつかありますが、なかでも「万座ホテルジュラク」にある「法性の湯」は、硫黄含有量が日本ナンバー1です。
このほか、北海道にある「十勝岳温泉(標高1280m)」、岩手県にある「藤七温泉(標高1400m)」、栃木県にある「奥鬼怒温泉郷(標高1500m)」、鹿児島県にある「霧島温泉郷(標高700m)」も山の景観美とワイルドで濃厚な温泉を楽しみつつ、心身が元気になったと実感できました。
海の温泉ならば、青森県深浦町にある「黄金崎不老ふ死温泉」。
ここは、露天風呂が海から1mという近さで、鉄分を含んだみかん色の温泉を楽しみつつ、圧巻の絶景を楽しむことができます。晴天に恵まれた日の、あたり一面が黄金色に染まる夕暮れ時の景色は見事です。 また近年、海と温泉の浴槽が一体化しているような「インフィニティ温泉」が人気ですが、そのはしりとも言われ絶大な人気を集めている、兵庫県赤穂市にある「赤穂温泉 絶景露天風呂の宿 銀波荘」。
ここは、瀬戸内海と空と温泉の一体感を体験することができ、瀬戸内海の水平線を望む絶景に感動しきりでした。 さらに、和歌山県那智勝浦町にある「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」または「ホテル浦島」。どちらも那智勝浦温泉で、送迎船で行くような場所にあるため、とことん非日常の時間を堪能できました。潮騒を聞きながら浸かる露天風呂で、ぼーっと海を眺めて気持ちも安らぎ、かなりリラックスできた海温泉でした。
この記事は、2024年12月13日に発売された自著 おとな「ひとり温泉旅」のススメ(外部リンク 三笠書房)から抜粋、転載しています。
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