ペットが死んだら廃棄物か? コンビニ弁当などのごみと一緒に焼却、法的問題は
愛知県犬山市などでつくる広域事務組合から火葬業務の委託を受けた火葬業者が火葬場のペット火葬炉でペットの死体を火葬する際、従業員が食べたコンビニ弁当などのごみと一緒に焼却していたとして問題となっている。
ペットの死体は「廃棄物」か?
廃棄物処理法は「動物の死体」を「ごみ」「粗大ごみ」「燃え殻」などと並んで「廃棄物」の一つとしており、みだりに捨てたり、焼却したりすることを禁止している。廃棄物の処分事業を行うには許可が必要だ。
では、飼い主がそうした許可を得ていないペット専用の霊園事業者などに依頼して葬儀をあげ、火葬し、霊園で埋葬することもアウトかというと、そうではない。廃棄物処理法では、先ほど挙げた「ごみ」などが「汚物又は不要物」であることが「廃棄物」の前提とされているからだ。
飼い主らからすると、家族の一員だったペットの死体は「汚物又は不要物」ではなく、きちんと火葬して骨を引き取り、埋葬や供養などを行いたいと考えることだろう。そこで、ペットの死体の場合には、そうした飼い主の意向に従い、「廃棄物」に当たらない場合もあるという運用となっている。
専門の業者に依頼されたか否かがポイント
具体的には、1977年に当時の厚生省が出した通知文書によると、動物霊園事業において取り扱われる動物の死体は「廃棄物」には該当しない。2004年の国会答弁でも、そうした事業者では宗教上の理由や社会慣習などによって埋葬、供養されていることから、社会通念上、「廃棄物」には当たらないとされている。
ペットの死体の火葬は、飼い主が(1)自治体に持ち込む場合と(2)民間の霊園事業者や火葬業者に依頼する場合とがあり、(1)も(a)自治体が自らクリーンセンターで焼却する場合と(b)民間業者に火葬を委託する場合とが考えられるが、それぞれのパターンによって取り扱いに食い違いが生じる。
すなわち、(2)では「廃棄物」とはされず、火葬時の立会や収骨なども可能である反面、(1)よりもはるかに手数料が高く設定されている。中にはいい加減な業者がいたり、周辺住民とトラブルになることもあるので、条例で規制している自治体も多い。
これに対し、(1)は(a)だと飼い主が自治体に持ち込んだ段階で所有権を放棄した「廃棄物」とされる一方、(b)だと「廃棄物」には当たらないと考えられる。ただし、いずれも手数料が1体1千円~3千円程度と(2)よりも安く設定されており、ほかの動物の死体と合同で火葬され、収骨もできない。
(b)の場合は飼い主の心情などに配慮し、小動物用の火葬炉で火葬する自治体がほとんどだが、(a)だとクリーンセンターにそうした特別な火葬炉がない限り、ごみと一緒に大型焼却炉で焼却されることになる。
自治体の中には、通常の5倍程度の料金で単独での火葬を請け負い、立会や収骨などを可能とするプランを用意しているところもあるので、自分の住む自治体がどのような火葬方法を採用しているのか、調べてみるとよいだろう。
廃棄物処理法違反では?
今回は合同による火葬であり、飼い主らの立会や収骨などができないケースだったが、火葬業者に委託された(1)(b)のパターンなので、ペットの死体は「廃棄物」ではなかったと考えられる。
これを明らかな「廃棄物」であるコンビニ弁当などのごみと一緒にペット火葬炉で焼却したことは配慮に欠けるばかりか、ペットや飼い主らに対する冒涜でもある。しかも、少なくとも10年間にわたってこの火葬場でそうした行為が繰り返されていたという。
火葬場は「廃棄物」の処分事業に関する許可を得ていないはずだし、そもそもコンビニ弁当などの「廃棄物」を勝手に燃やして処分すること自体、廃棄物処理法に抵触する。最高刑は懲役5年、罰金だと1千万円以下と重く、事業者も処罰される悪質な行為にほかならない。(了)