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NYでプラ製レジ袋有料化スタート 施行初日、本当にレジ袋は消えたのか?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) Kasumi Abe

ニューヨーク州では昨年3月、スーパーやデリなど小売店での使い捨てプラスチック製レジ袋やポリ袋の提供を禁ずる法案が可決され、いよいよ3月1日から施行した。

1度使って後は捨てられるだけのビニール袋は州内で年間約230億枚とされており、この試みによりそれらの削減に大きく期待が寄せられている。

その初日、果たしてニューヨークの街中からプラ製買い物袋は消えたのか? いくつか小売店を覗いてみた。

ニューヨークでは法律が施行されても、実際の取り締まりまで数ヵ月の猶予期間が設けられることが多いため、筆者は正直なところ、初日と言えどもあまり期待はしていなかった。

しかしアパートを一歩出て大通りを歩くと、レジ袋を持った人が心なしか少ない感じがした(実際には数人見かけたのだが、使い回しでは?と思えた)。これは今日という日を迎えたからか、もしくはただの気のせいか?

まず足を運んだのは全米に415の支店を持つ、大手の巨大スーパーチェーン。

入り口近くの野菜売り場に行くと、野菜やフルーツを必要な分だけ入れるための薄いロール状のビニール袋が、いつものように置かれてあった。ここは変化なし。

次にパン売り場へ。ここは出来立てのパンがケースに入れられていて、薄い透明のビニール片で掴み取る仕組み。ビニール片はいつものように置かれていて、ここも変化なし。

左奥はレジコーナーだ。ここには通常の対人レジのほかに、自分で会計ができる無人レジコーナーもある。そこにはいつも1つのレジに対して3束に分けられたレジ袋が大量に置かれている。つまり取り放題なのだ。アメリカの一般のレジ袋は薄いので、人々はレジ袋を二重にして使うことが多い。また肉や魚介類を買った場合、パッケージングされたものでも、念のためここでさらにレジ袋に入れることもある。

そのいつもよく使う無人レジを覗いてみて、驚いた。見事にレジ袋(3山)がきれいさっぱりと撤去され、すっからかんとなった台の上に少しばかりの紙袋が置かれていたからだ。驚いたと言えば、この全米規模のスーパーに失礼だろうか。日本の感覚からしても大袈裟に思うかもしれない。

しかし、ニューヨークという街とここに住む人々はいい意味で「いい加減」な面があるので、施行初日と言えども、移行の過程でいくつか余ったレジ袋がまだ使われているのでは?と、筆者は半ば高を括っていた。

ここの紙袋は持ち手がないから、購入しても持ち運びにくそう。(c) Kasumi Abe
ここの紙袋は持ち手がないから、購入しても持ち運びにくそう。(c) Kasumi Abe

スタッフに聞くと、紙袋は1枚につき5セントと言う。しかしこのお金は店には行かず、2セントは地方自治体に、3セントは州の環境保護基金に割り当てられるそうだ。

すべての商品の計算が終わった後に「何枚必要か」を支払い画面上で聞かれる。しかし「利用」と「枚数」については自己申告だ。買い物後もスタッフにチェックされることはなかった。

プログラミングが追いつかなかったのか、筆者にはイラストがまだ「プラ製レジ袋」に見えてしまう。(c) Kasumi Abe
プログラミングが追いつかなかったのか、筆者にはイラストがまだ「プラ製レジ袋」に見えてしまう。(c) Kasumi Abe

周りを見渡すと、だいたいの人はレジ袋有料化を心得ていたようだ。8割くらいの人は再利用できるトートバッグを持参し(写真一番上)、2割くらいの人は有料の紙袋を利用していた。

またスーパー内では「リユーザブル・バッグを利用しましょう」キャンペーンも行なわれていた。女性スタッフがノベルティー用のノートを無料配布しながら、トートバッグ(50セント〜6ドル)の紹介や販売促進をしていた。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

スーパーの帰りしな、米系大手ファストファッション店にも寄ってみた。ここから出て来た買い物客が大きなビニール製の買い物袋を抱えていたので、不思議に思ったからだ。スタッフに尋ねると、このような返答だった。

「州では移行期間が1ヵ月設けられています。その間、在庫のレジ袋を使い、全部使い切ったら、5セントの有料紙袋にシフトします」

よく行く近所のデリ(商店)にも寄ってみた。この店では、まだ大量にプラスチック袋の在庫があるとのこと。いつまでに使い切るという期限については厳密に決めていないようで「なくなり次第、紙袋にはするけどね」というやる気のない回答だった。

この日は日曜日。平日は忙しいニューヨーカーにとって唯一のグロッサリーショッピングの日だ。レジ袋の有料化の実施初日として、いっせいにプラ製レジ袋を排除した店、移行中の店、まだ以前と変わらない店とさまざまだったが、家路につく途中、プラ製レジ袋を両手に抱えた人を見かけることはなかった。

個人的にプラ製レジ袋は、個人に向けた家庭用ゴミ袋の指定がないニューヨークでは重宝していた。しかし、環境保全のためにはどこかで大胆な試行をし変わらなければならない。この日、持続可能なグリーンシティへ向け大きな第一歩を踏み出したニューヨークの新しい姿をしっかり感じたのだった。

安くて可愛いトレーダージョーズのリユーザブル・トートはいつも人気(左から3.99ドル、99セント)。(c) Kasumi Abe
安くて可愛いトレーダージョーズのリユーザブル・トートはいつも人気(左から3.99ドル、99セント)。(c) Kasumi Abe

プラスチック袋がゼロになるわけではない。いくつかの例外

以下のケースでは、引き続きプラ製袋を利用しても良いとされている。

  • 肉や魚介類などの食材を包装するもの
  • 花、植物などで、損傷を防いだり衛生上プラスチック袋が必要とされる場合
  • フルーツや野菜、穀物、ハードウェア製品、生きている昆虫や魚介類で、防水袋が必要な場合
  • スライスされた食品
  • 購読されている新聞
  • 一般販売されている包装済みのビニール袋、サンドイッチ袋、ペットの糞の回収に使用するもの
  • ドライクリーニングや洗濯サービスに使う衣類用
  • 薬局での処方箋用(プライバシーと健康上の理由から)

また食品購入の割引が適用されるフードスタンプ利用者など低所得者層などは、紙袋の有料化は適用されない。

ニューヨーク市衛生局では、BYOBagキャンペーンを実施中で、90%リサイクル素材でできた使い捨てトートバッグを70万枚用意し、1回限りで無料配布するなど、市民に再利用のトートバッグ利用促進をしている。バッグを持ち歩かない男性または高齢者や障害者には、どの程度使い捨てバッグが浸透するのか。

州北部のアルバニー市では、移民を中心とした1万4000の小商い経営者から、代替バッグの準備が整わず、法施行の延期が求められた。また、1000万人が住む大都市でこのようなサステイナブルな試みはなかなか難しいのではという市民の消極的な声も否定できない。大都市が取り組むグリーンシティに向けたチャレンジに注目したい。

(Photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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