チョコレートは欧州では欠かせない、Mobile World Congressから
International CESのニュースがテレビや新聞から伝えられてくるが、ITライターからの記事はソニー、パナソニックなど日本企業の話が多すぎる。一昨年初めてCESに行ったときは、むしろ海外企業の展示物や発表もの、講演の方が目についた。それも面白いもの(ガゼット)が多い。2年前にイタリアのI’m Watch社は、腕時計型のウエアラブル端末を発表したが(図1)、日本のメディアはどこも採り上げなかった。富士重工のスバルに搭載された衝突防止機能(アイサイト)を安価に実現するためのソフトウエアも出ていたし、クルマの窓に半透明な情報表示もでもされていた。しかし日本のITライターが取り上げる記事は日本企業の話ばかり。
今年はCESに行かなかったために、日本のメディアだけではなく、海外メディアのレポートも読まなくては世界の動きについていけなくなる。せっかくラスベガスまで行っているのに、日本のメディアはなぜ、日本企業しか報道しないのか。もったいない。
昨年のCESでは4K、8Kが大きな話題となっていると日本のメディアが報じたのに対して、海外のレポートを読むと、ファブレット(Phablet)が登場し、スマートフォンとタブレットは画面サイズだけでシームレスにつながったことが伝えられている。
講演も面白い。CESではないが、昨年、スペインのバルセロナで開かれたMWC(Mobile World Congress)の基調講演では、日本にいては絶対に入ってこない情報まで入手できた。MWCのニュースはいつもスマホやタブレットなどの端末がニュースとして日本のメディアから伝えられるが、もともとMWCは、NTTドコモやソフトバンク、KDDIのような通信業者(キャリア)のためのトレードショーであるから、主催者もモバイル端末のことは中心の話題にはしない。
さて、絶対に入ってこない情報とは、ヨーロッパの人たちがいかにチョコレートが好きなのかがよくわかるエピソードだった。ボーダフォンのCEOであり、イタリア人であるVittolio Colao氏(図2)の基調講演で、スマホやタブレットなどのモバイル端末がいまだに全盛でとても衰えない様子を表して、「皆さんはモバイルに飽きましたかね?」と投げかけると、聴衆が首を横に振っている姿を見て、「モバイルは酒やたばこ、チョコレート、セックスと同じで、みんなまだ飽きないようだね」と冗談を言い、「人生においてモバイルはこれからももっと進展する」と本題に入った。
この問いかけの中でチョコレートが人生の楽しみの一つとして入っている。日本では考えられない。ヨーロッパ人にとって(アメリカ人もだが)、チョコレートは毎日揃えて用意している食べ物のようだ。決して切らすことはない。彼の講演の中から、こういったエピソードまでわかるのだ。もちろん、念のためスーパーマーケットでチョコレートを買いに来ている普通のおばさんにそのことを確認したが。
基調講演のモデレータを務めたのは、主催団体GSMAのDirector Generalを務める女性のAnne Bouverotさん(図3)。彼女は講演が全て終わるとパネルディスカッション形式で、Q&Aを行い、理解を深めた。先ほどのボーダフォンCEOのColao氏への質問に対して「先ほどモバイルは、酒やたばこ、チョコレートと同じでまだ飽きていない、とおっしゃったけど、」という切り返しで、セックスという言葉を見事に外した。
こういったやり取りは現地で見て聞かないとわからない。日本企業の取材だけでは、こういった機微は全く伝わってこない。CESでも基調講演は、極めて面白く、日本企業のプレゼンと、クアルコムあるいは台湾企業のプレゼンの違いなども明確に表れてくる。CESやMWCに行くのなら、現地の企業や講演についても取材してもらいたいと思う。
(2014/01/09)