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台湾籍と偽って違法操業する中国船の不気味な意図は?

宮崎紀秀ジャーナリスト
台湾周辺で軍事演習する中国軍艦(2023年4月8日福建沖)(写真:ロイター/アフロ)

 東シナ海や南シナ海で中国政府が設定した禁漁期間が16日に終わった。中国と台湾との漁場が被る台湾海峡では不測の事故の発生なども懸念されるが、同海域では禁漁期間中に中国の船が船籍を台湾籍と偽って操業していたことが明らかになり、台湾側はその真意について疑念を抱いている。

 台湾の新聞「自由時報」が漁民の話として報じたところによれば、解禁前の禁漁期間中、台湾側の伝統的な漁場であり、台湾が領有する澎湖諸島の周辺海域に多数の中国漁船が侵入し、しかも船体の識別番号を台湾船籍と装っていたという。

 船の位置や識別番号は、安全航行の為の情報交換を目的とした、VHF帯電波を使ったAIS(船舶自動識別装置)というシステムで自動的に確認される。

 台湾側の漁民は、違法に操業をするだけなら船に積んだAISのスイッチを切れば済むだけなのに、なぜわざわざ手間をかけて台湾籍を装う必要があるのかと首を傾げているという。

 この問題について、台湾側の海上保安当局は、レーダー上で台湾籍の識別番号を示しているが、船の外観から明らかに中国船であり、当該海域を離れるよう命じてきたという。中国の船が何故、台湾の船を装っているかについては、現時点では不明だという。

 中国を巡っては退役軍人や漁民などで組織される海上民兵の存在も指摘されている。台湾側としても漁民や漁船の不審な活動に警戒せざるを得ない。

 また、7月上旬には中国の海警局が、台湾海峡で台湾の漁船を拿捕し乗員を拘束するという強硬な姿勢を見せた。中国は台湾海峡の「内海化」を目指すかのような行為を示しており、台湾側としては予断を許さない。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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