新型コロナワクチン3回目接種はじまる オミクロン株への有効性・接種対象・接種券の注意点は
12月1日から新型コロナワクチンの3回目接種が始まっています。まず医療従事者から開始され、2022年1月から高齢者、3月頃に企業や大学の職域接種、4月頃に64歳以下の人の接種が始まる見込みです。早ければ今月から高齢者に接種券が郵送されます。
3回目接種の有効性:オミクロン株に効果はある?
12歳以上における新型コロナワクチンの感染予防効果は、2回目接種後1か月以内では88%と高いものでしたが、5~6か月後には47%にまで半減します(1)。デルタ株に対しても、接種後は高い予防効果がありますが、経時的に抗体価が低下します(2)。入院や重症化を予防する効果は高いまま維持されるため、個々のレベルでは2回接種しておけば自分を守るという側面では概ね安心できます。ただ、国レベルで新型コロナを制圧していくには3回目接種をすすめていく必要があります。
ウイルスが少し変異を獲得しても、臨床的に問題になることはありませんが、オミクロン株の流行は懸念事項です。オミクロン株のスパイクタンパクの抗原領域に多くの変異が確認されており、モデルナ社のCEOがインタビューで答えていたように予防効果が損なわれる可能性があります。
ただし、専門家の多くは、現行のワクチンがオミクロン株に全く歯が立たないわけではないと考えています。感染予防効果は損なわれても、入院や重症化を予防する効果が十分存在すれば、緩衝材として期待できます。また、「現時点でEUで確認されているオミクロン株感染者212人は全員無症状~軽症で、死亡例はない」とヨーロッパ疾病予防管理センター(ECDC)は報告しています(3)(2021年12月6日22時追記)。オミクロン株がどのくらい脅威なのかは、今後明らかになるでしょう。
オミクロン株に特化したワクチンがもし必要になったとしても、今のワクチン技術はとても進んでおり、ウイルスの配列が分かっていることから、2022年前半には完成すると見込まれています。
オミクロン株に対するワクチンの有効性は、2週間以内にデータが提示される見込みですが、現時点では、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「現行のワクチンをブースター接種すべき」と推奨しています(4)。WHOは「(オミクロン株に対する)不確実性はあるものの、現行のワクチンは、重症化や死亡をある程度防ぐことができると考えるのが妥当」としています(5)。
ただ、現在3回目の接種が必要な理由は、欧米が現在苦しんでいる流行が日本でも再燃する可能性があるためです。現在世界で流行しているのは、オミクロン株ではなくデルタ株です。
3回目の接種対象
CDCは、ファイザー社製とモデルナ社製の新型コロナワクチンの3回目接種対象を「2回目接種から6か月以上が経過した18歳以上のすべての人」に拡大しています。韓国やイギリスでは感染者数の拡大を受け、これよりさらに前倒しして3回目接種を行うと発表しています。
日本では現時点では「2回目接種から原則8か月以上が経過した18歳以上のすべての人」(図1)とされていますが、海外の動向をふまえ、接種間隔を各自治体が地域の感染状況を踏まえ「2回目接種から6か月以上」に前倒しすることができるようになりました。とはいえ、例外を除いて、現時点では原則「8か月」になります。今後前倒しに関して議論されると思われます。
接種対象は18歳以上ですが、ファイザー社はアメリカにおける16~17歳に対する3回目接種も承認を申請しています。18歳未満への3回目接種が必要なのかどうかは、まだ議論の余地があるところです。
使用されるワクチンは?
現時点で3回目接種の薬事承認を受けているのはファイザー社製のワクチンのみです。武田/モデルナ社製のワクチンも承認審査中であり、いずれこれも用いられるようになる見込みです。
1回目と2回目で異なるワクチンを接種する交互接種が認められていることから、3回目についてもおそらく可能になると予想されます。
初回接種で使用したワクチンと異なるワクチンを3回目接種で使用しても、抗体価の上昇は良好で、副反応も初回接種と同程度とされています(6)(ただし査読前論文)。
3回目の接種券に関する注意点
医療従事者のワクチン接種は2021年2月~7月に実施されましたが、早い人では2回目接種からもう8か月が経過しています。接種券発送は接種予定の1か月前になりますが、自治体によって速度感に差があるかもしれません。
先日、私のところにも、3回目接種用の「新型コロナワクチン追加(3回目)接種のお知らせ」と「接種券」が届きました。
医療従事者は1回目・2回目のときは自治体から郵送された接種券を使用せず職場で接種していましたが、3回目に関しては医療従事者も接種券が必要です。誤って捨てないよう注意が必要です。
なお、3回目接種から「接種券一体型予診票」に変わります(図2)(7)。1回目・2回目のようにシール型の接種券ではありません。
なお、3回目の接種券が届かないケースがあるため、注意が必要です(図3)。たとえば、現時点では18歳以上が3回目接種の対象となっているため、すでに2回接種した12~17歳については接種対象外です。しかし、厚労省はファイザー社から追加データが提出されれば、対象年齢の引き下げを検討するとしています。
2回目接種した後に転居して住民票所在地が変更となった場合、本人の同意がなければ自治体が接種歴を照会できなかったため、接種券が届かないのではという懸念がありました。しかし、デジタル庁は12月中旬から、各自治体が転出元の自治体に情報照会をできるようにすると明言しており、引っ越した人がわざわざ自分で問い合わせをしなくても3回目の接種券を受け取れるようになる見込みです。
とはいえ、自治体の足並みがそろうかどうか分かりません。2回目接種から8か月が経過しても接種券が届かない場合、自治体の窓口に問い合わせたほうがよいかもしれません。
(参考)
(1) Tartof SY, et al. Lancet. 2021 Oct 16; S0140-6736(21)02183-8
(2) Chemaitelly H, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 6;NEJMoa2114114.
(3) Epidemiological update: Omicron variant of concern (VOC) – data as of 6 December 2021 (12.00)(URL:https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/epidemiological-update-omicron-variant-concern-voc-data-6-december-2021)
(4) COVID-19 Vaccine Booster Shots(URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/booster-shot.html)
(5) Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States (URL:https://www.who.int/publications/m/item/enhancing-readiness-for-omicron-(b.1.1.529)-technical-brief-and-priority-actions-for-member-states)
(6) Atmar RL, et al. medRxiv. 2021 Oct 15;2021.10.10.21264827.(査読前論文)
(7) 新型コロナワクチンの予診票・説明書・情報提供資材(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_yoshinhyouetc.html)