ドルに連動するはずの暗号資産(仮想通貨)の急落をきっかけに、仮想通貨が総崩れ。金融市場も動揺か
暗号資産(仮想通貨)市場で、ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインの「テラUSD」が一時8割近く下落した。仮想通貨市場からの資金流出を背景に、価値を保つためのアルゴリズムが機能しなくなったためだ(12日付日本経済新聞)
ステーブルコインとは価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)。裏付け資産がないため価格変動が激しく、決済手段としての活用が進んでいないビットコインなどの暗号資産の普及を促し、実用性を高めるために設計された。
価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられる。米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し、価格を連動させる「暗号資産担保型(仮想通貨担保型)」、金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」がある(野村證券のサイトの証券用語解説集より)。
テラUSDはこの4つの種類のうちのアルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」であったようである。発行主体が需給の状況を常にチェックしながら供給量を調節する。テラUSDは価格が1ドルを上回っている場合は流通量を増やして価値を低下させる。反対に下回っている場合には消却などで供給量を減らして価値を上昇させるという需給バランスだけで価値を安定させようとしたものであった。
ところがビットコインなど仮想通貨市場の急落により、このアルゴリズムが機能しなくなった。預ければ高い利回りつくことで資金を集めていた分散型金融(DeFi)プロジェクトが取り付け騒ぎに近い資金流出に見舞われたことが不具合の引き金になったともされる。
FRBは9日、金融安定性に関する最新報告書の中で、ステーブルコインの構造的な脆弱性により、取り付け騒ぎが発生するリスクがあると警告したが、そのリスクが顕在化したようである。
ステーブルコインのテラUSD(UST)の急落がビットコインを含め主要仮想通貨のさらなる価格下落を招き、下落スパイラルとなりつつある。
法定通貨担保型のステーブルコインを発行する企業は裏付け資産をコマーシャルペーパーや譲渡性預金で運用するケースが多いとされる。もし取り付け騒ぎが起きれば、米国の短期金融市場などに影響が及ぶ可能性がある。
暗号資産(仮想通貨)のレバレッジ取引の証拠金要件を満たすために、ステーブルコインを利用するケースが増加しているとFRBは指摘しており、どこまで影響が及ぶかは予想できない。
暗号資産(仮想通貨)の急落が金融市場でリスク資産の下落を促す恐れもあり、また暗号資産(仮想通貨)に関連する企業の株価の下落要因ともなり、金融市場にとっても無視できない状況となりつつある。