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藤井猛九段(48)藤井システムの名局で宿敵・羽生善治九段(48)を降す 叡王戦九段予選2回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月3日、東京・将棋会館において叡王戦九段予選2回戦▲羽生善治九段(48)-△藤井猛九段(48)戦がおこなわれました。19時に始まった対局は21時14分に終局。102手で藤井九段の勝ちとなりました。

 勝った藤井九段は予選決勝で井上慶太九段と対戦します。

【前記事】

羽生善治九段(48)と藤井猛九段(48)が7年ぶりの対戦 9月3日19時開始、叡王戦九段予選2回戦

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190903-00141139/

 振り駒の結果、先手は羽生九段。後手番の藤井九段は△4二飛と、十八番の四間飛車に振りました。

 羽生九段が居飛車穴熊を目指すのに対して、藤井九段の作戦は、自らが考案し、一世を風靡した藤井システム。そしてその新趣向を見せます。すぐに攻めかかりたいところ、じっと歩を一つ突いて力をためたのが、藤井九段の工夫でした。羽生九段との戦いに用意しておいた秘手かもしれません。

 以下は穴熊に組んだ羽生玉の上部で戦いが始まります。難解なねじり合いの中で、藤井九段は△5一玉と、元の居玉の位置に戻りました。

「居玉は避けよ」

 これが将棋における鉄則です。しかし藤井システムはその逆をいく発想で将棋界に革命を起こしました。

 戦いは局地戦から盤面全体に広がっていきます。

 そして最終盤。藤井九段が羽生玉に迫り、焦点は藤井玉が詰むや詰まざるやという一点にしぼられました。

 詰むや詰まざるやの息が詰まるようなやり取りの後――。藤井九段の玉は、奇跡的に詰みを逃れていました。

 羽生九段の鋭い追及を逃れた藤井玉は、最後は再び、居玉の位置に戻ります。どうしても藤井玉は詰まない。そこで羽生九段は投了を告げました。

「そうか・・・」

 局後に羽生九段の長いため息がもれました。

「そうか、最後、どうやっても△5一玉の形で詰まない」

 羽生九段は感想戦で何度も何度も、「詰まない」とつぶやいていました。

 藤井九段は藤井システムの新趣向で宿敵・羽生九段を相手に勝利。102手と短手数ながら「名局」と呼ぶにふさわしい、密度の濃い一戦でした。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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