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広角ホームラン打法の中日・ビシエドの勢いは続きそうだ

豊浦彰太郎Baseball Writer
メジャー時代も右方向への本塁打を量産したビシエド(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

中日の新外国人選手、ダヤン・ビシエドが打ちまくっている。

17日の阪神戦では、10回裏無死一塁で右翼ポール直撃のサヨナラ本塁打を放った。これで、中日は今季初の同一カード3連勝となり、首位に1.5ゲーム差の2位に浮上した

現在、彼の本塁打は両リーグ1位タイの6本だ。それだけではなく、長打率(.685)、塁打(50)でもリーグ1位。打率は.370で.459の出塁率とともに同2位、打点14は3位と、月間MVPに向け突っ走っている。

元々メジャー通算66本塁打の実績と27歳の若さで期待は大きかったのだが、ここまでの活躍は十分1億7000万円の年俸に見合ったものだと言えるだろう。

後はこの調子をどこまで維持できるかが、ファンにとって最大の関心事だろう。

実は昨年オフに中日とビシエドの契約が内定した頃に他の媒体に書かせてもらったのだが、メジャー時代のビシエドはとても粗い打者だった。いわゆる「フリースインガー」というやつで、大袈裟に言えばバットが届く範囲ならどんなタマでも振り回していた印象がぼくにはある。したがって、日本でもとてつもないパワーを発揮する可能性がある一方で、NPB投手の制球の良い変化球には手を焼くのではないか?という懸念もあった。

その観点で、少々意地悪くビシエドの現在の成績を分析してみると、打率は.370だが、BABIPも.368と異様に高い。このことは、現在の高打率はたまたまインプレー打球が野手のいないところに飛んだことの恩恵を受けている可能性があり、今後はフロックの減少により打率は低下する懸念があることを示している。

しかし、明らかに好調の要因と思えるポジティブな要素もある。それは、アメリカでは四球をほとんど選ばず三振がやたら多かった彼だが、来日後はこれらが大きく改善されていることだ。メジャーでは通算5.3%だった四球率(四球数÷打席数)は9.4%へ、同じく21.6%だった三振率は8.5%と劇的に改善されている。四球の多さはドラゴンズ打線の「5番問題」もあると思うが、三振率も改善されていることを踏まえると、やはり彼の打席でのアプローチに成長と順応があったと判断べきだろう。

そして、見落とせないのが彼の広角ホームラン打法だ。17日の6号は右翼ポール直撃だったが、これまでの6本中これも含めて右に2本、センターに2本ときれいに打ち分けている。

待てよ、と思ってメジャーでの66本もチェックしてみた(Baseball-Referenceなどのスタッツ系サイトで確認できる)。すると、右に17本、右中間に8本、センターには6本とやはり広角打法なのだ。

ぼくは、メジャー時代から彼のことはよく知っているつもりだったが、そのパワーとフリースインガーぶりに目を奪われ、うかつにも彼が 右方向にも本塁打を打てる打者であるということを見落としていた。

右方向にもブチ込めるパワーヒッターの本塁打数は伸びる、という経験則からの信念をぼくは持っている。ここから先もビシエドには期待できそうだ。広いナゴヤドームのライトスタンドに彼の弾丸ライナーが突き刺さる場面が数多く見れるのではないか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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