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PO進出10チームを徹底比較!勝つために必要なのは打撃力より投手力だった?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
すっかり熱狂を取り戻したMLBのポストシーズン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【熱気を取り戻したMLBのポストシーズン】

 NPBより一足先にポストシーズンに突入したMLB。連日生き残りを賭けた熱い試合が繰り広げられている。

 昨シーズンは新型コロナウイルスの影響で、通常のホーム&アウェイ方式ではなく中立地球場で行われ、観客数も制限される中(地区シリーズまでは無観客)で実施されたが、今シーズンはまだコロナ対策が続いているとはいえ、ほぼ通常通りのかたちで実施されている。

 どの球場も満員のファンが集結し(レイズの本拠地球場だけはちょっと違ったが…)、NPBのように声援が禁止されていないためプレー一つ一つに大歓声が沸き上がるなど、その熱狂ぶりはTV画面越しからも十分に伝わってくる。

 改めてポストシーズンの醍醐味を堪能するとともに、NPBが1日も早く日常を取り戻ることを願ってやまない。

【例年以上に盛り上がったポストシーズン争い】

 すでにポストシーズンは地区シリーズからリーグ優勝決定シリーズに移行しようとしているが、シーズン終盤のポストシーズン争いは例年以上に盛り上がり、見応えがあった。

 ア・リーグのワイルドカード争いとナ・リーグ西地区優勝は、結局レギュラーシーズンの最終戦までもつれる接戦となり、史上初の3チームによるタイブレークの可能性もあったほどだった。

 そんな激闘の末ポストシーズン進出を決めたのが、ワイルドカードを含めた10チームになるわけだが、これら10チームと、涙を呑んだ20チームの間にはどんな違いがあるのだろうか。

【10チームを投打別に徹底比較】

 野球ファンの間ではよく議論になることだが、野球という競技において勝つために重要なのは投手力か打撃力というテーマだ。

 もちろんその両方が揃っているのが理想的なのは当然だが、バランスよく戦力を整えるのは簡単ではない。ならば重要性が高い戦力を揃えた方が、チームを強くする近道ということになる。

 そこでポストシーズンに進出した10チームの投手力と打撃力についてMLB内のランキングを比較することで、何らかの傾向が出てこないものかと考え、ちょっと比較検討してみる気になった。

 例えば、あるチーム成績のMLBランキングで、ポストシーズンに進出した10チームが上位10位を独占しているようならば、それだけ重要な指標になると考えたからだ。

【あまり重要ではなかったチーム打率】

 まずは打撃力について考えてみたい。

 今シーズンのチーム打率、本塁打数、得点数について、10チームをMLBランキングに合わせ並べたものを表にまとめた。各項目の括弧内の数字は、10チームが上位10位以内に入っているかどうかの「マッチ率」を示したものだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

 とりあえず驚かされたのがチーム打率だ。10チーム中上位10位以内に入っているのが、たった4チームしかいなかった点だ。なかでもナ・リーグ中地区を制したブルワーズは27位と、完全に下位に低迷しているのだ。

 ところがと本塁打数と得点数を見ると、事情が変わってくる。10チームの多くがランキング上位に顔を揃え、それぞれ70%のマッチ率を誇っている。

 それだけ現在の戦術は、安定した打撃ではなく長打による得点を重要視していることが理解できると思う。

 だがその一方で、ヤンキースのように6位の本塁打数を誇りながら、得点数は19位に沈んでいるケースもあり、如何に効果的に得点を奪うかも重要になっていると考えられる。

【投手力は10チームがほぼ上位を独占】

 次に投手力についてだ。こちらはチーム防御率、被打率、被本塁打数のランキングを比較してみた。

(筆者作成)
(筆者作成)

 もう説明する必要は無いと思うが、すべての項目において10チームが上位10位以内をほぼ独占しているのだ。

 特に自分が注目しているのが、被本塁打数だ。現在ワイルドカード、地区シリーズを勝ち上がり、リーグ優勝決定シリーズ進出を決めているレッドソックスは、チーム防御率、被打率では10チーム中最下位で、しかも被打率はMLBでも平均以下ながら、被本塁打数ではMLBで6番目に少ないのだ。

 打撃力の比較でも明らかなように、長打を中心とする得点が主流になっている現在の戦術では、どれだけ本塁打を抑えるかがより重要になっている証拠ではないだろうか。

【勝つチームをつくるにはまず投手力から?】

 如何だろう。かなり単純な比較でしかないが、それでも打撃力と投手力で明確な差が生じている。つまりここでの結論は、チームが勝つためには打撃力よりも投手力が重要になるということだ。

 ただし奪三振数を見ると、そのマッチ率は60%まで落ち、カージナルスの奪三振数はMLB最下位に止まっている。つまりすべての投手成績で10チームが上位を独占しているわけではないことも付け加えておきたい。

 すでにポストシーズン進出を逃したチームとポストシーズンで敗退したチームはオフシーズンに突入し、来シーズンを見据え動き始めている。自分のお気に入りチームがどんな補強をしていくのかをチェックしながら、是非オフシーズンも楽しんで欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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