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全英オープンへの熱い想いが、そうさせた!?この1週間で90ホールを回ったタイガー・ウッズ。

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 全英オープン出場を控えたタイガー・ウッズが、とんでもない勢いでゴルフクラブを振り続けている。

 ウッズは先週はじめの7月4日(月)と5日(火)にアイルランドで開催されたJPマクマナス・プロアマに出場し、合計36ホールをプレー。

 2日後の7日(木)には、北アイルランド出身のローリー・マキロイとアイルランドで18ホールのプライベート・ラウンドを行なった。

 そして、9日(土)には全英オープンの舞台となるスコットランドのセント・アンドリュースでジャスティン・トーマスとともに18ホール回り、コースを後にしたのは午後10時半を回っていたという。

 それからわずか10時間後の10日(日)の午前8時半ごろには、ウッズは再びセント・アンドリュースに現れ、さらに18ホールをプレーした。

 全部足し上げると、1週間で90ホールを回った計算になる。

 そんなに一気に回って、右足は大丈夫なのだろうかと心配になる。実際、ウッズは日曜日には「右足を引きずるようにしながら歩いていた」という目撃談も聞こえてきたが、スイングの際は「右足に負担をかけないよう、体重移動を制限しながらスイングしていた」という声も聞かれるなど、ウッズはさまざまな工夫をしながら練習ラウンドを重ねている様子だ。

 ともに回ったトーマスは「今年、タイガーは、とにかく全英オープンを心待ちにしていた。セント・アンドリュースはマスターズのオーガスタや全米プロのサザンヒルズと比べると、コースが格段にフラットで、歩くのがずっと楽だからね」。

 ウッズの相棒キャディ、ジョー・ラカバもトーマスと同じことを言っていた。

「タイガーはセント・アンドリュースでプレーすることを今年ずっと楽しみにしていた。なぜって、タイガーは理屈抜きでセント・アンドリュースが好きなんだ。そして、このコースは歩いて回るのが他のコースよりずっと楽。それも、タイガーが今年の全英オープンを楽しみにしていた大きな理由の1つだ」

 昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったウッズは、今年4月のマスターズで試合復帰を果たし、71-74で予選通過を果たしたものの、決勝2日間は78―78と振るわず、47位に終わった。

 続く5月の全米プロでも予選を突破。しかし、右足の状態は日に日に悪化し、3日目を79で回った後、無念の途中棄権となった。

 6月の全米オープンは、迷わず欠場を選んだ。「ここで無理をしたら、全英オープン出場が危うくなる。そうだとしたら、迷う理由はなかった」

 つまり、ウッズは全米オープン出場を捨てて、全英オープン出場を選んだのだ。

 今年の全英オープンは150周年記念大会。戦いの舞台は「ゴルフの聖地」セント・アンドリュースだ。ウッズはこれまで全英オープン3勝を挙げているが、そのうちの2勝はセント・アンドリュースで挙げた2000年と2005年の勝利だ。

 ゴルフの聖地で、もう1度勝ちたい。150周年を迎える全英オープンを制したい。そして、交通事故からの奇跡の復活をメジャー16勝目へつなげたい。

 そんなウッズの想いを叶えたい一心で、相棒キャディのラカバは、一足早くセント・アンドリュースに乗り込み、トーマスのキャディであるジム・“ボーンズ”・マッケイとともに5時間以上をかけて18ホールを歩いて回り、綿密なコースチェックを行なった。

 「私が最後にセント・アンドリュースを回ったのは2015年。あれから7年が経過し、コースはずいぶん変わっている。まずはバンカーの位置とそこからのラインを見出すことが先決。100%は無理でも、フィーリングはつかめる」

 そうやって、相棒キャディのラカバが献身的にサポートに努める一方で、ウッズ本人は精力的にラウンドを重ね、戦う感覚をブラッシュアップしている。

 1週間で90ホールも回ったのは、そんなウッズの意気込みの反映に違いない。

 セント・アンドリュース入りして以来、まだウッズはメディアに向き合っていないのだが、今は寸暇を惜しんで聖地と向き合いたいという気持ちなのだろう。

 11日の月曜日に150周年記念のエキシビションマッチ、セレブレーション・オブ・チャンピオンズに出場予定のウッズは、おそらくその際に、胸に秘めた熱い想いをメディアに明かすはず。

 目指すは「優勝」――強気でストレートで、ちょっぴりセンチメンタルなウッズならではの言葉が聞かれる予感がする。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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