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NY原油9日:期近高・期先安、クッシング在庫の増加が鈍いとの見方

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油4月限 前日比0.39ドル高

始値 49.60ドル

高値 50.79ドル

安値 49.52ドル

終値 50.00ドル

期近高・期先安とまちまちの展開に。

アジアタイムは中国の2月原油輸入量が前月から8.7%減少したことを受けて、やや調整売りが優勢の展開になった。世界的な過剰供給体制の見直しが進んでいることもあり、戻り売り圧力が上値を強力に圧迫した。ただ、ニューヨークタイムに入るとWTI原油先物の受け渡し場所であるクッシング地区の在庫増加は抑制されるとの見方が強くなったこともあり、期近2限月はプラスサイドを回復するなど、下げ渋った。引けにかけては再び戻りを売られる展開になったが、4月限は辛うじて50ドル台を維持して引けている。

米石油リグ稼動数の減少傾向は続いているが、増産傾向に大きな変化が生じている訳ではなく、米国内では在庫積み増し圧力が継続している。このため、WTI原油相場の上値が重い状況に変化はみられず、本日も期先限月は続落している。ただ、クッシング地区で貯蔵能力の限界が意識され始める中、原油貯蔵場所を米内陸部からメキシコ湾岸などに移動する動きが活発化し始めており、クッシング在庫の急増傾向がWTI原油の期近限月を押し下げるフローにも一服感が見受けられる。これで原油相場が本格的に買われる訳ではないが、当先の順ザヤにやや過熱感が強くなっていることもあり、鞘バランスの修正圧力が活発化し易い状況に。期近限月にはポジティブ、期先限月にはネガティブな動きである。

一方、石油輸出国機構(OPEC)のバドリ事務局長は、今年後半に世界の原油需給バランスが均衡を取り戻すとの見方を示した。足元の需給環境について詳細は述べなかったが、一時期は日量200万バレルに達した供給過剰が、今年下期中には解消されるとしている。また、世界石油需要に関しても、昨年は予想を下回ったが、今年は前年比で日量120万バレル増加するとの強気の見方を示している。OPEC非加盟国の増産が続く中でOPECは増産ができないとの危機感を示すなど、目先は供給超過状態に大きな変化は生じない見通し。ただ、下期には少なくとも過剰供給が解消されるとの見方が示されたことは、中長期的な原油相場の底入れ期待につながろう。この辺の見通しは国際エネルギー機関(IEA)やサウジアラビアなどからも示されていることで新鮮味はないものの、心理的には一定の支援材料になる。

米ゴールドマン・サックス・グループが目先再び40ドルを試すリスクを指摘するなど、足元の過剰供給環境が原油相場の上値を圧迫するフローは維持されている。冬の暖房用エネルギー需要がピークを脱する中、改めて原油相場の値下がりが促されても何ら不思議ではない。ただ、時間の経過は主に需要サイドから過剰供給の幅を縮小させることになり、夏場が近づくと徐々に売り込みづらくなることには注意が必要。

手掛かり難からボックス気味の相場展開が続いているが、今なお強力な需給緩和圧力が報告されている中、反発力は限定されよう。需給バランスの歪み是正の動きが強くなっていることは間違いないが、この時期から原油相場が反発してしまうと、需給均衡化をもたらすのに十分な生産調整が進まず、今後の反発力が限定されてしまうことになる。中長期的にはボトム圏に近づいているのは間違いないが、短期スパンでは依然として戻り売り対応の方に魅力を感じる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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