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今季も故障の大谷翔平、後半は歴史的快投のダルビッシュ有 「2019年MLBの◯と×(選手・球団編)」

豊浦彰太郎Baseball Writer
後半戦は歴史的快投のダルビッシュ、できればカムバック賞を取らせてあげたかった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

2019年MLBの◯と×、前回は出来事と傾向を取り上げたが、今回は選手と球団編だ。

<選手編>

ザック・グレインキ(ダイヤモンドバックス/アストロズ) ◯ これぞリアル二刀流?

4月2日のパドレス戦で、投げては10奪三振、打っては2本塁打。これはここ45年で2人目の記録。これぞリアル二刀流?ちなみにシーズン通算での打撃成績は、打率.280、3本塁打、OPS.888という立派なもので、7月末まで在籍したナ・リーグのシルバースラッガー賞を投手部門で受賞した。

大谷翔平(エンジェルス)× これで3年連続故障欠場

NPB時代も含め初めて打者に専念するシーズンだったが、またしても故障(左ヒザ)で竜頭蛇尾のシーズンに。故障の原因に二刀流があるのかは不明だが、これで3年連続で故障欠場あり、となってしまった。日本メディアはサイクル安打達成などを取り上げ「また、大活躍」と煽るが、今季が期待外れだったこと、今後の二刀流継続に懸念が高まったことは間違いない。来季は投手としても復帰するが、また故障するようだと、投打どちらかに専念せよ、との声も高まるだろう。

スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)◯ 7年前の「過保護」は正解だった?

「ガラスのエース」のイメージがあるが、今季はレギュラーシーズンではリーグ最多の209回を投げ、18勝で最多勝利のタイトルを獲得した。ポストシーズンでも6登板5先発で5勝0敗、防御率1.98、36.1回で47奪三振と大活躍で、ワールドシリーズでは2勝を挙げMVPに選出された。こうなると、2012年のシーズン終盤で「今季予定投球回に達したため、シーズン終了&プレーオフ出場見合わせ」としたことも、妙に説得力を帯びてくる。ワールドシリーズ後、契約に盛り込んであった破棄条項を行使しFAとなったが、球団史上最高額となる7年2億4500万ドルで契約を結び直し、ナショナルズに残留した。

ブライス・ハーパー(フィリーズ)&マニー・マチャド(パドレス)× ハードルが高いだけにビミョウ

これまでの実績と、ともに26歳(当時)という若さから、昨オフの目玉FAの両横綱だった。マチャドは2月19日に10年3億ドルでパドレスと、その9日後にはハーパーが13年3億3000万ドルでフィリーズと契約した。その成績は、マチャドは32本塁打でOPS.796、ハーパーは35本塁打で同.882で、2人とも最終的には帳尻を合わせた、というところか。しかし、この年俸に相応しいメジャーを代表するスーパースターのそれかと聞かれれば、返事に窮すところもある。何よりも2人ともチームとしての結果が付いてこなかったことが印象を悪くしている。

ブラディミール・ゲレーロ・JR(ブルージェイズ)◯ 球史に残る?本塁打競争のヒーロー

前年は、2Aでは61試合で打率.402を記録し、殿堂入りの名選手を父に持つ超プロスペクトのメジャー1年目は、124試合で15本塁打、OPS.772と、数字としてはやや微妙だった。しかし、球宴本塁打競争でのパフォーマンスは彼の資質を全世界に知らしめるに十分だった。特に延長戦も含めて40発を放ったセミファイナルは、後世まで語り継がれるだろう。決勝戦ではピート・アロンゾ(メッツ)に敗れたが、間違いなく今年の本塁打競争ナンバーワンのヒーローはゲレーロだった。

ダルビッシュ有(カブス)◯ カムバック賞をあげたかった

シーズン中にこれほど極端に印象が変わるケースも珍しい。開幕から制球に苦しみ、5月末時点での与四球/9回は6.05でメジャーワーストだった。ところが、6月以降はスライダーを減らしカッターを多用するとともに、執拗にコーナーを突くよりのびのびと真ん中周辺に勢いのあるタマを投げ込むことを重視したと思われ、7月以降の与四球/9回は0.71と超人的水準までに改善された。7月30日から8月21日にかけては、5先発連続で8奪三振以上&与四球ゼロという史上初の記録も残した。シーズンを通した星勘定は6勝8敗でしかないが、このことが「勝ち星は投手のパフォーマンスを反映しない」という近年の通説を改めて認識させてくれた。個人的にはカムバック賞に選出されて欲しかった(ナ・リーグは、ブレーブスのジョシュ・ドナルドソンだった)。

<球団編>

ヤンキース ◯ 故障者続出でもビクともしない総合力

史上最多の30名が故障者リスト入りしながらも103勝も挙げ、7年ぶりに地区優勝。怪我人が出ても、その穴は優秀な控え選手や台頭する若手が埋めた。要するに、「買ってきた」スターばかりでなく、総合的にチーム力が優れていた、ということ。ブライアン・キャッシュマンGMは只者ではない。

レイズ ◯ 貧すれど鈍せず

「資金力がない」ということは言い訳にはならない、ということを今季も証明した。年俸総額は6008万ドル(開幕時)で両リーグで最下位ながら、96勝でワイルドカードを獲得した。ただし、それでも観客動員は今季も低迷し30球団中ブービー賞。

マリナーズ × 覚悟がない

今や、全球団中唯一のワールドシリーズ未経験のチームとなってしまった。それどころかプレーオフも、イチロー初年度で116勝を挙げた2001年が最後。「ポストシーズンからもっとも遠ざかっている球団」の座も2016年から守り?続けている。なのに、チーム戦略は「後退」。オフにロビンソン・カノー(現メッツ)ら主力を一気に放出し、今季を迎えた。マイナー組織に次代を担う人材が枯渇しているのは事実だが、今のマリナーズに求められるのは、「プレーオフ日照り」を断ち切ることではないか。今季は開幕から15試合で13勝と意外なダッシュを見せたが、その後は馬脚を現し終わってみれば地区最下位だった。

2010年オフ、ブルワーズは、プリンス・フィルダーがFA権を得る前にポストシーズン進出を、と将来を見切って若手有望株との交換でザック・グレインキを獲得し、11年は地区優勝を遂げた。2015年のブルージェイズは、フラッグディール戦線では、その時点では勝率5割未満ながらデビッド・プライスやトロイ・トゥロウィツキを獲得し、13年ぶりのポストシーズン進出(地区優勝)を果たした。マリナーズにも、彼らのような勝利への執着が欲しい。

フィリーズ × 逆レイズ?

ブライス・ハーパーを13年総額3億3000万ドルで獲得するなど、前年オフには大補強を展開したが、結果は5割ジャストで地区4位。期待値と投下予算の観点からは、最も期待を裏切った球団と言えるだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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