海外の人が日本に求める文化やコンテンツの優先順位
国や地域によって住まう人々の生活様式や歴史や環境には違いが生じ、そこから文化の差異が発生する。他の国に足を運ぶと、まるで異世界を来訪した気分にすらなれる。今はテレビや雑誌、そしてインターネットで世界中の情報を入手することは可能だが、それでも実際にその地を訪れ、さまざまなものを体験することは、何ものにも代えがたい刺激や喜びを得られることになる。日本における文化、コンテンツで、海外の人たちが「これは観たい、体験したい」と考えている、関心のあるものは何だろうか。総務省が2016年8月に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」の調査結果項目(2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。インターネット経由の調査であることの回答値のひずみを考慮した上で各値を読む必要がある。また各国の全体値に関しては年齢階層別の人口比率を元にウェイトバックが成されている)から、その実情を確認していく。
日本でのオリンピックを控え、日本の文化やコンテンツで海外の人たちはどのような分野項目に興味があるのかに関して、改めて注目が集まっている。今項目ではその点を複数回答で答えてもらっている。
韓国を除いた6か国では「日本の自然」への関心がもっとも高く、韓国では「日本食」が一番の関心事となっている。2番目に高いのは、韓国とインドを除いた5か国で「日本食」、韓国では「日本の自然」、インドでは「神社・寺院」。「日本の自然」「日本食」への関心が極めて高い様子が改めて確認できる。
他方、3番目以降の動向だが、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、オーストラリアでは「神社・寺院」となり、韓国は「アニメ」、中国「日本の四季(春夏秋冬)」、インド「日本食」。アジア圏とそれ以外の地域では関心が分かれているのが特徴的。「神社・寺院」が文化的に近しいものなのか、稀有な存在なのかで興味関心の度合いに違いが出てくるようだ。
他方、日本国内でよく話題に登る「アニメ」「漫画」の回答率はさほど高く無い。韓国と中国でやや高めの値が出ている程度で、上位陣項目と比べると随分と見劣りがする。慣れ親しんでおり関心を有するほどのものでは無いとの解釈も可能だが、同じ視線で判断した場合、「日本の自然」「神社・寺院」「日本食」「日本の四季」と比べると見劣りするのは事実ではある。
実際、上位陣のうち「神社・寺院」「日本食」と、「アニメ」「漫画」それぞれに付き、回答国の年齢階層別にその関心度を見て比較すると、「アニメ」「漫画」は若年層のみの支持であることが分かる。
「アニメ」「漫画」は若年層(赤系統)の回答率が高いが、高齢層(青系統)の回答率が一段と低い。高齢層が高めに出ているのはインドぐらい。他方、「神社・寺院」「日本食」では一部で若年層の低回答が見られるものの、大よそ世代を超えて高い評価が集まっており、関心度合いの質の違いが見えてくる。
無論それぞれの関心度の強度、消費性向の違いも考慮する必要はある。しかし日本の文化やコンテンツを海外に披露する場合には、実際の需要に合った切り口を考える必要があるのだろう。
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