【高野町(高野山エリア)】千年前にタイムスリップできるお寺で五感を刺激。古いコト・モノを残す価値とは
今回、世界遺産・高野山にあるお寺「親王院」にお邪魔させていただきました。
親王院では現在、クラウドファンディングが行われています(~8/31まで)。
お寺の文化財を次の100年後も残すために、宝物蔵の建て替えへの支援を呼びかけられているものの、ネット上でのお寺についての情報はかなり少なく、どんなお寺か分かり辛かったのでご住職に伺ってきました。
前述の宝物蔵の宝物とは、キラキラ輝くきらびやかな工芸品や貴金属のことではありません。
高野山のお寺の中でも「学侶方」と呼ばれて仏教を長年研究していた親王院には、経典(古文書)が数多く伝えられています。
1000冊を超えるそれら貴重な書物を保管しておく蔵は既に100年以上経ち、白壁は剥がれて内部の土が剥き出しになり、屋根からは雨漏りがし、書物にとっての大敵である「カビ」も発生してきている状態です。そのため蔵を建て替えるべく、クラウドファンディングに挑戦されています。
クラウドファンディングとは
不特定多数の人が、インターネット等を通じて、他の人々や会社、各種団体に資金提供などを行うことを指す言葉です。
一般的には「何かを実現したい」というプロジェクトを立ち上げた人や会社に対して、不特定多数の人が寄付や購入といった形で金銭的に支援をし、発案者はそれで得た金銭を使ってプロジェクトを実行します。
親王院 基本情報(クラウドファンディングサイトより引用)
和歌山県高野山の壇上伽藍の直ぐ側、本中院谷にある真言宗の別格本山です。
今から約1200年前に弘法大師空海の十大弟子の一人、真如親王が開かれたお寺です。
約350年前に建てられた蔵造りの本堂には、、燈明の明かりだけが点っており、智証大師円珍作の本尊不動明王像、白鳳時代の金銅阿閦如来立像、平安時代の木造兜跋毘沙門天立像などの重要文化財を蔵しています。その他にも開基以後1200有余年にも及ぶ長い歴史の中で歴代先徳が収集し、大事に護持してきた国指定の重要文化財指定等を含む仏像仏具や、聖教経典類を数多く所蔵する寺院でもあります。
筆者の聞いた・視た親王院の姿
親王院は、現在もお坊さんを育てることに力を入れており、特に高野山で唯一の年齢制限無くお坊さんになりたい方を受け入れて、住み込みで修行を行うための道場(加行道場)を有しています。
また、高野山にお詣り目的の方や本来の姿の宿坊に泊まりたい方をこれまで受け入れてきたため、観光地化はされておりません。代わりに建物は高野山で一番古い様式を残しており、昔ながらの姿が残っている貴重な寺院でもあります。
本堂には、信仰の対象である不動明王像の他に、1000年前の平安時代から使われてきた燈火器の油壺、お香を長時間焚くための常香盤など大昔からの仏具類が残されており、しかも親王院では毎日日常の中で使われています。
ここでは千年の時が止まったまま、今も生活の中で息づいている貴重な姿を見ることが出来ます。
一方、護摩堂は築350年で、本堂と同様に電気は通っておらず、自然光の下で行を行います。悠久の護摩祈祷によるススで堂内の位牌や天井は真っ黒になっています。
※ちなみに、普通の護摩祈祷では参加者は護摩壇の後ろからお坊さんの背中を眺めながら「何が行われているかよく分からないまま」時間が過ぎる場合が多いですが、こちらでは護摩壇の真横に座って、見学・体感もできるかなり貴重な場でもあります(毎月28日限定)
その他、私の目に付く範囲内だけですが、様々な調度品がありました。
(下部宿泊に関する項目のところの写真もご覧ください)
親王院では、「古い」「昔から変わらない」という一見ネガティブにも思える言葉だけでは語れない価値がありました。
現代のデジタル社会では急速な変化の波が絶えず起こり、追い立てられ、付いていかねば取り残されるような感覚に囚われるこの時代に、このような場所があり、空間が残されていて、変わらない儀式に触れることができ、そこで心の安らぎを得たり自分を見つめ直す事ができ、また明日から頑張れる。
私は仏教の教えそのものの知識は全くありませんが、今回親王院の中を拝見させていただき、視覚・嗅覚・触覚・聴覚(泊まれば味覚も)の五感を通じて日常には無いものをたくさん感じることが出来ました。
それらは「お寺が何かしてくれる」という受け身であれば単なる経験にとどまり何かを生み出すことは難しいでしょうが、自ら感じようとした際には大きな刺激となり、宗教というジャンルを超えて自身が生きていくための糧になります。
観光地化されてサービスが整い、エンターテイメント化したお寺よりも、このような「変わらない」お寺の存在こそが大変価値のあることではないでしょうか。
宝物庫に入っている古文書の価値も、一般人の私には分かりません。
ただ、それらを昔から研究して、その結果として人の行動が生まれ、親王院というお寺が形作られ、1200年経って今に残っているのであれば、これからの世のためにもその『親王院を形づくるモノ達』を伝え、後世に残していくお手伝いが出来ればと思いました。
ご住職の想い(クラウドファンディングサイトより一部抜粋)
高野山に限らず真言宗において重要な役割を果たしている宝物類ですが、保存、護持管理してきた蔵が長年の風雨雪や経年摩耗にて大きく損傷し、維持していくことが難しくなっております。そこで、数々の歴史的遺産をよい状態で後世へ繋いでいくために、このたび蔵を建て替えることを発願いたしました。
この建て替えには総額6千万円が必要です。さまざまな資金調達方法を考えていますが、近年のコロナ禍で宿坊をご利用いただく方が激減した影響もあり、全てを賄うことができない状況です。
そこでクラウドファンディングにて広くご支援を募ることを決意いたしました。当院としても大きな挑戦です。先人たちの手でここまで繋いできた歴史を、今度は我々の手で守り継いでいくため、どうかあたたかいご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
現在開催中のクラウドファンディング プロジェクトページはコチラ
■目標金額:1200万円
■資金使途:高野山親王院の新しい蔵の建立にかかる費用、クラウドファンディングの諸経費
クラウドファンディング リターンの内容例
・支援者のみに特別御朱印を提供(写真は通常版の御朱印)
・お寺に宿泊
当院は観光地化されおらず、特徴は昔ながらの宿坊の姿を残していること。築300年のお部屋で泊れます。
※昔のままの姿を残しているので個室はなく、ふすま仕切りです。
特別客室の方は、一部関係者にのみ提供されていたお部屋が開放されます。
一般客室も特別客室も、手作りの精進料理を楽しめます。
・修行体験
宿坊に泊まった際によくある朝のお勤め・写経・阿字観体験などの他に、下座行(げざぎょう)と呼ばれるお寺の日常的な修行や、お坊さんと同じ食事を頂く体験なども返礼品として体験可能。
俗世的な言い方になりますが、こちらにはたくさんの調度品があるもののデザインに宗教要素は少なく、私にとっては「美を間近で感じられる、泊まれる博物館」のように感じました。伝統や文化、あるがままの美に関心の高い方にはとても貴重な機会になると思います。
この姿を後世に伝えるためにも、良ければ、今回のプロジェクトに限らず、高野山 親王院に皆さまのご縁をお繋ぎくださいませ。
また、このクラウドファンディングはAll or Nothing方式で目標金額に1円でも満たなかった場合、ご支援者様に全額返金となり、お寺には一切お金が入りません。背水の陣で遂行されておられますので、当記事のシェア拡散にご協力頂ければ幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
※なお、お寺を応援したい!という方の中には「小難しいことは分からないけど、応援したい」「小さな画面の文字を読むのがつらい」「インターネットは見るのは見れるけれど、どう動いたら良いのか良く分からない」などという方も居られると思います。
そんな場合はお寺に直接連絡されてみてください。ご対応していただけると思います。
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「高野山 親王院」
住所:和歌山県伊都郡高野町高野山144
営業時間:9時~18時
電話:0736562227
メール:koyasan.shinnoin@gmail.com
公式HP
※毎月28日の護摩祈祷は、13時半~15時ごろまで行われます(護摩の申し込みをすれば誰でも同席可能、当日も可)
★クラウドファンディング実施中 ~8/31
プロジェクトページ
★令和5年(2023年)はお大師さまがお生まれになって1250年の記念の年です。