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有名人の妊娠・出産報告から産婦人科医が伝えたいこと(2) #専門家のまとめ

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

春から夏にかけて、多くの有名人の妊娠や出産の報告がニュースになっています。今回は産婦人科医の目線で、今年のニュースから「有名人の妊娠・出産報告を通じてぜひ知っておいてほしいこと」をまとめてみました。

ココがポイント

▼学生の頃の「性教育の不十分さ」について言及されています

・43歳で出産したELT持田香織さん「授かるまでは苦労しましたが、今だからこその育て方もできています」|STORY(magacol)

▼40代での不妊治療の大変さと精神面への負担がうかがえます

・44歳で初産・元日テレ宮崎宣子さん「不妊治療中に一番つらかった」こと|VERY(magacol)

▼妊娠中に妊娠糖尿病や高血圧などの合併があったとのことでした

・浜田翔子 38歳、第2子男児を出産「涙が止まりませんでした」 去年7月に体外受精による妊娠を発表(日テレNEWS NNN)

エキスパートの補足・見解

一つ目の記事に関して、「結婚して子どもを授かることは“あたりまえ”ではない」はその通りなのですが、持田さんの「学生の頃はできないようにとばかり教えられたように思います」というコメントも重要なものでしょう。性教育として、性行為における安全や配慮を学ぶことはもちろん重要ですが、一方でライフプランとしての「年齢による妊娠可能性」「不妊につながり得る疾患やその徴候」などは若年世代にもしっかり伝えるべきものだと考えます。

二つ目の記事に関して、日本のデータでは40歳以上だと高度生殖医療(体外受精など)をしても1周期あたりの成功率(出産できる確率)は1割以下となっており、決して高いものではありません。また、不妊治療中には大きなストレスを抱えやすく、「終わりの見えない治療」、「ひとりで抱え込む苦しみ」、「アイデンティティの揺らぎ」などが要因となります。パートナーもしっかり一緒に向き合い、適宜カウンセラー等とも話しながら乗り越えていくことが大切です。

三つ目の記事に関して、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群は妊婦さんの年齢が上がるごとに発症リスクが高まる傾向にあります。妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて診断された血糖値異常のことで、放っておくと胎児の元気さや発達に悪影響を与えてしまうので、しっかりした血糖管理が必要になります。妊娠高血圧症候群は約20人に1人の割合で起こり、血圧が上がるだけでなく妊婦さん自身や胎児の発育に大きな影響を与えてしまうリスクもあります。主治医としっかり連携し、必要な対策を講じていきましょう。

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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