【大分市】何気ない日常に寄り添う、小さな本屋さんが新たにオープン《鯛文庫》
街の本屋が減少している
あなたの街に、本屋さんはありますか?今、全国的に本屋さんの数が減少しています。かつては全国に2万5000店もあったものが、その3分の1にまで減少しているという情報もあるほど(参照ttps://president.jp/articles/-/70292?page=1)。
2023年7月、大分市でも大型の本屋であるジュンク堂が閉店したことは記憶に新しいのではないでしょうか。スマホと電子書籍の普及により、紙媒体の本そのものに触れる機会が少なくなっていると感じます。
都市部では大型店舗に集約化されているという一面もあるものの、全国チェーンの本屋が古着店を併設するなど経営方法を変えたり、そもそも忽然と姿を消したりしているのが、私の周りでの現状。本屋さんの大小問わず、その在り方を問われているのではないかと考えてしまいます。
大分市に生まれた、店主念願の本屋さん
「本屋さん」に触れる機会が少なくなってきた中で、新たに産声をあげたお店があります。それが2024年10月に、牧駅の近くにひっそりとオープンした小さな本屋さん《鯛文庫》。古着屋さんやご飯屋さんも入る、コの字型のビルにあります。
「縁起の良い『鯛』にあやかろうと思って」と店名の由来を語ってくれたのは、店主の後藤紀子さん。
「高校生の時には書店員になりたかったんですけど、『力仕事だからお前には無理だ』と親に反対されたんです。でもずっと諦めきれなくて。3年ほど引きこもっていた時期もあったんですけど、ついこの前、書店員になれました」
幼い頃から好きだった本に携わるお仕事は、楽しくて仕方がないそう。とは言え正社員ではないため、書店に入荷する「選書」まで任せてもらえることはありません。
「自分が好きな本も、もっと多くの人に知って欲しい」
その思いが後藤さんを突き動かし、まずはガレリア竹町にある古着店でスペースを借りて本を販売する「間借り営業」からスタートさせるに至りました。
しかし間借り営業が3ヶ月を超える頃には、本の在庫を抱えきれなくなっていったんだそう。物件を探し、出合ったのが今のお店の場所だったと言います。
そんな店内はこじんまりとしつつも、レトロさもありかわいらしい内装で、まさに本屋さんという印象。後藤さんがこの物件を見つけた時にはリフォームが完了していたというから、運命的なものさえ感じます。
エッセーや俳句集など、素敵な本がズラリ
《鯛文庫》で取り扱うメインの本は、自費出版のもの。世間で話題になった本を入荷することもありますが、主に店主・後藤さんが自ら足を運んで見つけた「まだ世にあまり知られていない素敵な本」が、店内にズラリと並べられています。
例えば『奄美旅「アダンの海辺」〜1.2日目〜』は、イラストレーターでもある中村一般さんが奄美大島への旅した時の様子を、ゆるやかなマンガに仕立てた一冊。
『鬱の本』を出版した点滅社オーナーによる、書店ができるまでを記したエッセーもあります。
絵本も豊富。大分県で活躍する作家・キャビンカンパニーの絵本をはじめ、「対象年齢0歳〜あなたまで」とする不思議な絵本もあります。
新刊だけでなく、古本販売も行うのが《鯛文庫》。新刊にはちょっと手が届かないけど、なにか読んでみたいという方にもおすすめです。
記憶をつくってくれる場所
ゆるやかで、なんだかいるだけで心が落ち着くような雰囲気の《鯛文庫》。後藤さんが、「本屋は思い出を持って帰る場所」と表現してくれました。
「昔、ガレリア竹町にある《カモシカ書店》で本を買った時に、たまたま店主さんがレジ対応してくれて。私が買おうとした本を見て、『これ面白いよ』と言ってくれたのが、ずっと記憶に残っているんです。まさか私が売る側になるなんて、当時は思ってもいませんでしたけどね」
ネットで買った本は、画面をタップするだけですぐに手元に届きます。でも本屋さんで買った本には、選んだり悩んだりした時間、その時の空気感、手触り、誰かと交わした言葉も、記憶として残っているもの。そういった何気ない「思い出」をつくる場所が街の本屋なのです。
イベント開催もしたい。今後も楽しみな店
また今後は作家さんを呼ぶなど、本関連のイベントも開催したいと、静かに意気込んでいた後藤さん。書店員をしながらの経営になるため、《鯛文庫》のオープンは不定期になるようですが、随時Instagramで情報を更新しているそうです。
かわいらしいレトロガラスの販売も一緒に行っているそうなので、気になる方はそれ目的でお店をのぞいてみるのも大歓迎なんだとか。
まだまだ新たな本も入荷していくようなので、今後の動きにも目が離せません。
新たな世界への扉が開ける街の本屋さん。ぜひ一度のぞいてみてくださいね。