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Go Toトラベルの再検討時期ではないか?沖縄・愛知で独自の緊急事態宣言が出てもこのまま続けるのか

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
県の緊急事態宣言後の8月4日の観光客がまばらの那覇・国際通り(筆者関係者撮影)

 7月22日からスタートした「Go Toトラベル」(以下Go To)が開始から2週間が経過した。準備不足が否めないなかでの見切り発車でスタートし、開始直前の7月17日に東京都を発着する旅行が除外となったことが物議を醸したが、今、感染者拡大で再検討の時期に来ている。

 7月23日~26日までの海の日を含めた、本来は東京オリンピックの開会式に合わせた4連休に間に合う形になったが、沖縄県などでは4連休に旅行した人の感染が徐々に明らかになるなど、本来は安心して旅行ができる際にスタートさせる主旨のGo Toが感染を拡大させてしまったことが否定できない段階になっている。

沖縄県内の各空港では到着ロビーでサーモグラフィーによる体温チェックが行われている(7月23日、石垣空港にて筆者撮影)
沖縄県内の各空港では到着ロビーでサーモグラフィーによる体温チェックが行われている(7月23日、石垣空港にて筆者撮影)

沖縄県・愛知県の緊急事態宣言でもGo Toを続けるのか

 感染状況の状況を見ながら、Go Toの適用除外、除外解除を見直すことになっているが、沖縄県が8月1日~15日まで県独自の緊急事態宣言を発令したほか、8月5日には愛知県でも8月6日~24日まで同じく県独自の緊急事態宣言を発令することでお盆期間中の移動自粛を求めることになるなど、安心して旅行へ出かける状況に程遠い状況だ。

 また、大阪府や宮崎県などでも飲食店に対する自粛・休業要請も含め、誰の目から見ても今すぐGo Toの見直しが必要だ。

沖縄では県独自の緊急事態宣言以降、臨時休業も相次ぐ

 特に沖縄では、感染者数の急拡大による直前キャンセルが相次いでおり、那覇市内の国際通りでは観光客の数が少なく、お土産店や飲食店の休業も目立つ状況になっているそうだ。人気観光地の美ら海水族館も8月2日~15日までの予定で休業しているほか、観光客にも人気の人気ステーキ店「ジャッキーステーキハウス」でも8月1日から店内飲食を取りやめ、テイクアウトのみの営業に変更されている。

那覇の人気ステーキ店「ジャッキーステーキハウス」も8月2日からはテイクアウトのみの営業になっている(8月4日、筆者関係者撮影)
那覇の人気ステーキ店「ジャッキーステーキハウス」も8月2日からはテイクアウトのみの営業になっている(8月4日、筆者関係者撮影)

 首都圏などのからの観光客の中には、那覇市内には立ち寄らずに、宿泊するリゾートホテル内で滞在期間中ずっと過ごすケースも増えているようだが、石垣島や宮古島を含めて「沖縄県内では4連休期間中にはなかった緊張感が今はある」と沖縄県民は話す。

7月24日の石垣港の離島ターミナル。竹富島や小浜島、西表島へ向かう観光客で賑わっていた(筆者撮影)
7月24日の石垣港の離島ターミナル。竹富島や小浜島、西表島へ向かう観光客で賑わっていた(筆者撮影)

旅行者が自主的にキャンセルする動きに。お盆の予約も低調

 日本全国における新型コロナウイルスの感染者拡大、更には沖縄県独自の緊急事態宣言によって、Go Toに関係なく8月の旅行をキャンセルする動きが急拡大し、旅行会社・航空会社ではキャンセル件数が増加している。政府の方針よりも、自治体の動きや感染者数のニュースを見て、旅行者自身が自主的に旅行中止を判断している。

 7月31日に航空各社は、お盆期間中(8月7日~16日)の国内線予約状況を発表したが、ANAでは前年比64.8%減、JALでは前年比61.2%減、スカイマークでも前年比56.4%減の予約数に留まっているほか、JR東海が7月22日に発表した東海道新幹線のお盆期間中(8月7日~16日)の指定席予約は前年比79%減となっている。

 お盆期間中の首都圏などからの帰省においても、急激な感染者数拡大によって見合わせる動きが航空会社・鉄道会社のお盆期間中の大幅減からも読み取ることができる。Go Toを見直すことになった場合に考えなければならないのが「キャンセル料」「Go Toで予約済みの旅行の取り扱い」だ。

8月4日の羽田空港第2ターミナル。4月・5月の緊急事態宣言中に比べると利用者は増えたが、混雑している状況にはなっていない(8月4日午後、筆者撮影)
8月4日の羽田空港第2ターミナル。4月・5月の緊急事態宣言中に比べると利用者は増えたが、混雑している状況にはなっていない(8月4日午後、筆者撮影)

コロナ禍に柔軟に対応できるキャンセル料の特別対応を国主導で考えるべき

 キャンセル料については、少しでも感染拡大を止める意味でGo Toの適用有無にかかわらず、キャンセル料の特別対応を国が主導する形で考えて欲しい。「キャンセル料がかかるから旅行を強行する」というのを止めるだけでもコロナウイルス感染拡大を阻止する効果は大きい。国内旅行のパッケージツアーでは、出発20日前から8日前まで20%、7日前から2日前まで30%、前日は40%、当日で50%のキャンセル料が必要となる。

 仮に一人2泊3日で5万円の沖縄旅行で二人で10万円の旅行で2日前にキャンセルするとキャンセル料だけで3万円もかかってしまうことになる。Go Toを適用することで2名10万円の旅行は35%割引の6万5000円で旅行できるのに、キャンセルすると3万円を払わなければならないということになれば、感染者数が少ない段階でも旅の計画自体が難しくなってしまう。

パッケージツアー利用時のキャンセル料対策は急務

 ホテルや旅館など宿泊のみの予約の場合は、各宿泊施設が柔軟な対応をしてくれるケースが多いが、パッケージツアー商品の場合は規定通りに徴収されることがほとんどである。現状を考えると旅行業法で定められているキャンセル料を半額にするとか、もしくは一定条件で無料にするなどの政策を国が主導で考えて欲しい。先日の東京都発着除外の際にはリスクに対する説明がなかった点もあり、国がキャンセル料を払うべきで、最終的にそのような方向になったが、今後は国がキャンセル料を払うというよりは、仕組み作りをしっかりして欲しい。そうでないと安心して旅行の予約が出来なくなってしまう。

石垣空港では、石垣市長名で観光客の皆様へ向けたメッセージを到着ロビー前に掲示していた。8月3日現在、13名の新型コロナウイルス陽性者が療養しているほか、西表島でも陽性者が確認された。(7月23日、筆者撮影)
石垣空港では、石垣市長名で観光客の皆様へ向けたメッセージを到着ロビー前に掲示していた。8月3日現在、13名の新型コロナウイルス陽性者が療養しているほか、西表島でも陽性者が確認された。(7月23日、筆者撮影)

Go To適用除外ではあるが、航空会社は柔軟な対応

 Go Toの適用外にはなるが、ANAやJALなどでは航空券のみの予約においては、ANAは6月24日以降に購入した7月1日~10月24日搭乗分においては、予約変更ができない運賃でも最大355日先の便への変更を取消・払戻手数料なしで可能となっている(台風・災害時などの特別対応とは異なり、予約変更希望日の運賃額との差額は必要。ただし運賃が安くなる場合には差額を返金する)。JALでも7月3日~9月30日までの購入分で7月4日~10月24日までの予約変更不可の航空券においては440円の手数料のみで払い戻しが可能で、変更する場合には払い戻しした後に再度購入する形となるなど、柔軟に対応している。

 またLCC(格安航空会社)でも、ピーチでは便変更が無料な運賃「コミコミ割」を積極的に推奨しているほか、ジェットスター・ジャパンでは8月4日に新たに「FareCredit(フェアクレジット)」という名称で、販売されている運賃に区間ごとに設定されている1200円~1850円を追加することで、突然キャンセルする場合でも元々の運賃部分が全額次回使えるバウチャーとして受け取れるサービスを開始するなど、柔軟な対応をしているケースが目立つ。

一時休止になった場合、既に予約済みのGo To旅行はどうなる?

 仮にGo Toが一時休止になった場合に起こる問題が「Go Toで予約済みの旅行の取り扱い」だ。7月27日以降、旅行会社などでの直接割引がスタートし、楽天トラベルやじゃらんなどでも準備に時間を要したが7月30日から割引された金額で販売している。混乱を最小限にすることを考えると、一時休止前の予約はそのまま適用し、キャンセルする場合はキャンセル料の減免・免除もしくは無料での先の日程への変更が望ましいだろう。変更を無料にするだけでも旅行者の心理的負担は大きく減るだろう。

 今の状況だと、通常通りのキャンセル料を課される可能性が高いが、旅行者が金銭的な被害を受けないようにすることを第一に考えて欲しい。

このままだと出張利用者がGo Toの中心となる

 今回のGo Toはビジネス出張の利用でも適用可能となっている。既に宿泊予約サイトを見ると、東京都の宿泊施設及び東京都民でなければGo To適用の35%引きで予約可能だ。その為、ビジネス出張で活用するケースも増えている。会社規定の金額の範囲で実費精算であればいつもより上のランクのホテルを選べるほか、出張費自体の削減も可能となっている。

 旅行や帰省に比べると、出張しなければならないケースは多くあり、このままだとGo Toの割引による恩恵が出張者や企業が中心になる可能性も否定できないだろう。

8月1日の中部国際空港(セントレア)。国内線エリアには人が見られたが、国際線エリアは閑散としていた。愛知県の緊急事態宣言は帰省を含めた移動を自粛して欲しいという意味合いも強い(筆者撮影)
8月1日の中部国際空港(セントレア)。国内線エリアには人が見られたが、国際線エリアは閑散としていた。愛知県の緊急事態宣言は帰省を含めた移動を自粛して欲しいという意味合いも強い(筆者撮影)

地域内でのGo Toにするべきだっただろう

 Go Toの主は旅行者であり、上限はあるが(1泊一人あたり旅行代金4万円分まで)、35%の割引価格で旅行をして、9月以降に配布開始予定の15%分の地域限定クーポンを現地のレストラン、お土産店、観光施設などで活用することで地域経済に貢献できることになる想定である。

 地域経済の問題も考えなければならないのも事実であり、ある程度の感染者であれば経済を少しでも動かす意味でもこのままGo Toを継続すべきであると筆者も考えていたが、その域は現状では超えている。安心して旅行ができる状況ではない今、少なくても日本全国を10~15程度のブロックに分け、地域内のみでGo Toを継続すべきだと考える。自治体の声を反映される形に今からでもして欲しいものだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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