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“スコットランドの英雄”による引退勧告にT・ウッズが痛烈皮肉で反撃、しかし勝機はある!? #ゴルフ

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

今季最後のメジャー大会、全英オープンは7月18日から21日の4日間、スコットランドのロイヤル・トゥルーンで開催される。

早々に会場入りし、練習に精を出しているタイガー・ウッズは16日に開幕前の会見に臨んだのだが、そこでウッズに投げかけられたのは「引退を考えるべきときだと思うか?」という辛辣な質問だった。

なぜ、唐突にそんな質問が飛び出したのかと言えば、全英オープン開催地であるスコットランドの英雄として、地元では大人気を誇る61歳のコリン・モンゴメリー、通称「モンティ」が、前週に英メディアの取材に応えた際に、こんな発言をしたからだった。

「すべてのスポーツ選手には、いつか必ずグッバイ(さようなら)を言うべきときが訪れる。タイガー・ウッズに『今がそのときだ』と告げるのは、とても難しいことだ。なぜなら、明らかにタイガーは自分がいまなお勝てると思っているからだ。(しかし、周囲の)私たちは、もっと現実的だ」

ウッズへの引退勧告を口にしたモンティ発言を受け、英国人記者はウッズ本人に「モンティはそう言っていたが、アナタ自身は引退を考えるべきときだと思うか?」と問いかけたのだ。

あからさまに不愉快そうな表情になったウッズは、短く「ノー」と答えた。しかし、それでもなお執拗に食い下がる質問が続いた。

今季のウッズが試合でプレーしたラウンド数は、トータルでわずか9ラウンド。ジェネシス招待は途中棄権、マスターズは決勝進出こそ果たしたものの最下位に終わり、全米プロと全米オープンは予選落ち。優勝や優勝争いからは、ほど遠い成績だったのだが、それについて問われたウッズは、成績に関して答える代わりに、毅然とこう言った。

「僕は自分がプレーできる限りはプレーしたいと思っているし、今でも勝てると感じている」

だが、モンティ発言に関する質問がさらに続くと、不快感をあらわにしたウッズは、こんなことを言った。

「僕は全英オープンの過去の優勝者(注・過去3勝)だから、60歳まで出場できる。でも、モンティは、そうではない。モンティは全英オープンの過去の優勝者ではないわけだから、彼には出場資格がなく、だからいつ全英オープンから引退しようかという決断を下す機会すらない。でも僕にはそれがある」

モンティに対する痛烈な皮肉を込めたこの返答は、いかにもウッズらしいユーモアとウィットに富んだ反撃で、会見に参加していた世界のメディアからは苦笑と失笑が漏れ聞こえてきた。

だが、実際のところ、ウッズに勝機はあるのかと問われたら、今季のこれまでの成績やプレーぶりから考えれば「難しそうだ」と答えたくなる。

ウッズ自身は「ジムでハードなトレーニングもできているし、肉体もそれに対応することができている。だから、いいショットが打てている。長時間の練習はできないけど、今年これまでにできなかったことが、今はできていることはナイスだよね」と、自信さえ漲らせている。

そんなウッズの発言をSNSで熱烈にサポートしているのは、驚くなかれ、ウッズの元スイングコーチで、ウッズの不倫騒動の際に自らウッズのコーチを辞任したハンク・ヘイニーだ。

「タイガーがメジャー優勝を挙げるベストチャンスはマスターズだと多くの人々が思っているだろうが、実はそうではない。彼が勝てるベストチャンスは、この全英オープンだ。リンクスゴルフをタイガー以上に熟知している選手はいない。そして今週のタイガーの練習ぶりを見る限りでは、彼の今のスイングはとてもいい」

ロイヤル・トゥルーンにおけるウッズの成績は、1997年大会が24位タイ、2004年大会が9位タイ。2016年大会は欠場したため、ウッズがこの地でプレーするのは実に20年ぶりとなる。

「60度のウエッジはバンスの少ないものを使う。3番アイアンのロフトは低弾道のショットでランも稼げるよう、1度立てた。グリーンはとてもスローなので、パターに鉛を貼って対応する」

準備は万全。あとは試合で「まだまだ戦える」「まだまだ勝てる」ことを示し、モンティ発言にさらなる反撃を食らわすのみである。

48歳のウッズが60歳になるまで全英オープンで戦い続けることが現実的であることを、是非とも試合で実証してほしい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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