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【全日本大学駅伝】17位・皇學館大。大エース不在でも、関西勢に割って入る健闘を見せる

和田悟志フリーランスライター
3区の笹竹が悪い流れを断ち切る(皇學館大学提供)

 11月7日の全日本大学駅伝は、駒澤大と青山学院大の大接戦の末、駒澤大の2連覇で幕を閉じた。

 全日本大学駅伝は、全国25大学に日本学連選抜、東海学連選抜を加えた全27チームが参加して行われる駅伝の大学日本一を決める大会にもかかわらず、1位から15位までを関東の大学が占めたように、どうしても箱根駅伝の“前哨戦”として位置付けしてしまいがちだ。

27秒の間に3チーム! 非関東勢の熾烈なトップ争い

 そんななか非関東勢に目を向けると、この駅伝のもう1つの側面が見えてくる。

 近年は、立命館大が前回15位、前々回12位と関東勢の間に割って入る健闘を見せていた。今回は、関西地区選考会(出場枠3)では立命館大が1位で通過しているが、本大会では関西学院大が非関東勢ではトップとなる16位となった。

 そして、8秒差の17位には東海地区代表の皇學館大、さらに19秒遅れて立命館大と続いた。

 7区終了時には、立命館大を除く非関東勢は全て繰り上げスタートとなり、見た目の順位と実際の順位とは異なっていたため、実際の順位を把握するのは難しかったが、実は、非関東勢のトップをめぐる争いもこんなにも熾烈だったのだ。

大エース不在でも、関西勢に割って入った皇學館大

 個人的に注目していたのは、東海地区代表の皇學館大だ。

 関東地区に次いで、有力校が多いのはやはり関西地区で、東海地区は3番手というのが大方の見方だ。その中で、皇學館大は、関東勢には届かずとも、初出場以来、関西勢の間に割って入る健闘を見せてきた。

 しかし、昨年まで絶対的エースだった川瀬翔矢(現Honda)の存在が大きかっただけに、川瀬が卒業した今季は、戦力ダウンを囁かれたこともあった。

だが、決してそんなことはなかった。

 東海地区選考会では1位通過で5大会連続5回目の本大会出場を決めると、本大会でも健闘を見せた。特に、初出場以来なかなか勝てなかった“関西の雄”立命館大に(ブレーキがあったとはいえ)先着したことは、客観的には小さなトピックでも、当事者にとっては快挙と言えたのではないだろうか。

「関西学院大にも、京都産業大にも、これまでは勝ったり負けたりなんですが、立命館大にだけはなかなか勝てませんでした。

“東海地区の大学が立命館大に勝ったのって、いつぶりですか?”と聞かれて、調べてみたら、2001年に愛知工業大が勝って以来でした。20年ぶりでした」

 日比勝俊監督は、なかなか勝てずにいた相手に勝利したことを素直に喜んだ。

次期エース候補の佐藤は6区14位。終盤に向けて仕切り直した(皇學館大学提供)
次期エース候補の佐藤は6区14位。終盤に向けて仕切り直した(皇學館大学提供)

 皇學館大は序盤で遅れをとったが、3区笹竹陽希(3年)が区間19位ながら3人を抜いて、悪い流れを断ち切った。そして、6区の佐藤楓馬(2年)が区間14位、7区の松野颯斗(2年)も区間14位と、後半に盛り返し17位に浮上。最終区では関西学院大には抜かれたが、立命館大を逆転し、過去最高タイ(3回目)17位でフィニッシュした。

 上に名前を挙げた3選手の高校時代の5000mのベストタイムは、笹竹が15分23秒、佐藤が15分11秒、松野は15分00秒となっている。ちなみに、昨年(2020年)度の高校ランキングでは、15分台の記録では1000傑にも入らない。選手には失礼な表現にはなるが、そういうレベルから全国大会で活躍できるまでに成長を見せたのだ。

7区の松野で17位へ(皇學館大学提供)
7区の松野で17位へ(皇學館大学提供)

 まだ関東勢を脅かすまでにはなっていないが、大エースに頼らずとも、まずは関西のトップ校とは互角に戦えることを示した。

 また、今年3月のびわ湖毎日マラソンでは、出場した4人全員がサブ20(2時間20分切り)で走るという、ささやかな快挙を成し遂げているだけに、この冬も、駅伝以外にも注目したい。

テレビドラマでも皇學館大が活躍!?

 余談だが、TBS系で放映中の話題のドラマ『最愛』の第1話では、松下洸平演じる主人公が通う白山大学陸上部が、駅伝で全国大会出場を目指して、東海地区大会に臨む場面があった。そのライバル校として、実在の皇學館大学が実名で登場していた。

 実は、大会遠征に合わせて、選手もエキストラ出演予定だったという。だが、悪天候で撮影が順延となり、出演は叶わなかった。

 ドラマの中では、白山大は関東勢と渡り合う強豪校に成長したようだが、皇學館大にも、近い将来、そのような活躍を期待したい。

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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