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ウクライナ軍「ウクライナ兵はロシアの艦隊を攻撃して水上攻撃ドローンに餌付けしてます」

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ政府提供)

2023年8月にウクライナ軍は公式SNSで「ウクライナ軍の兵士はロシアの艦隊を攻撃してウクライナの水上攻撃ドローン(naval drone)に餌付けしています」と魚に餌付けするイメージのイラスト付きで投稿していた。

ウクライナ軍では以前から水上攻撃ドローンでロシア軍の艦隊や軍港などに攻撃を行っていた。2023年8月に入ってからもウクライナ軍が黒海沿岸でロシア軍の艦船に水上攻撃ドローンで攻撃を行ってダメージを与えていたと報じられていた。水上攻撃ドローンに搭載されたカメラで標的に突っ込んでいく動画も公開していた。ロシア国防省は艦船が砲撃をして撃退したとコメントしていた。他にもウクライナ南部クリミア半島とロシア本土の間のケルチ海峡でウクライナ軍の水上攻撃ドローンがロシアのタンカーを攻撃していたと報じられている。

ドローンは空中からの監視・偵察や攻撃が多いが、水中で敵軍の艦船の監視や攻撃を行う水中ドローンも戦場では重要である。水上攻撃ドローンは標的の艦隊や艦船をめがけて突っ込んでいき爆破させる。いわゆる「水上神風ドローン」である。

ウクライナ政府は黒海にあるロシア軍の艦隊からのミサイルに対抗する水上攻撃ドローン(NAVAL FLEET OF DRONES)の開発のためのクラウドファンディングでの資金提供を世界中に呼びかけている。2022年11月にはゼレンスキー大統領はウクライナ軍は100機の水上攻撃ドローンが必要と伝えていた。ウクライナ軍は2022年9月と10月にも水上攻撃ドローンを使用していた。ゼレンスキー大統領は「ウクライナ軍は我々の海、平和な街をロシアの艦隊から発射されるミサイルから守らないといけない。世界中への穀物輸出にとっても重要です」とロシアとウクライナで多くの人に使用されているSNSテレグラムで語っていた。

2023年2月からは水上攻撃ドローンの開発の費用に充てるためにウクライナ政府として初のNFTアートの販売を行っている。目標として4機の水上攻撃ドローンを開発するために4000万フリヴニャを集めようとしている。「UACatsDivision」(ウクライナ軍のキャット部隊)という愛称の猫の絵柄は1万種類以上あり、ウクライナ軍の制服などを着ている。

ウクライナ政府によると1機の水上攻撃ドローン開発につき25万ドル(約3750万円)かかる。空を飛ぶドローンは民生品の安価なドローンで偵察や監視、さらに爆弾をつけてロシア軍に投下して殺傷したり戦車を破壊したりすることもできる。空を飛ぶドローンに比べると、水上攻撃ドローンはかなり高価である。水上攻撃ドローンは敵軍の艦隊や海軍の基地に攻撃して爆破すると基本的に再利用はできない。だが破壊力は大きい。上空のドローンから爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させる標的は戦車や軍事施設、塹壕のロシア兵など様々だが、水上攻撃ドローンの標的は艦隊や海軍の基地などで標的も大型である。そのため破壊力のある水上神風ドローンが必要である。また上空のドローンと比較すると深夜の暗闇の水中では迎撃されにくい。

ウクライナ製の水上攻撃ドローン「MAGURA V5」はトルコのイスタンブールで開催されていた国際防衛展示会2023でも展示されていた。

▼ウクライナ軍公式SNS

「ウクライナ軍の兵士はロシアの艦隊を攻撃しウクライナの水上攻撃ドローン(naval drone)に餌付けしています」

▼ウクライナ軍の水上攻撃ドローンによるロシア軍への攻撃シーン

▼ウクライナ軍が開発している水上攻撃ドローン

▼世界初の水中攻撃ドローン開発のため資金提供を呼びかけるウクライナ政府

▼水中神風ドローン開発に向けてウクライナ政府初のNFTアート購入を呼びかけ

▼イスタンブールで開催されていた国際防衛展示会で展示されていたウクライナ製の「MAGURA V5」

「MAGURA V5」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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