「夫も家事・育児に参加」をはばむ事情…男性の就労時間動向を探る
兼業世帯の増加、育児休業などと共に男性の家事・育児手伝いにも、これまで以上にスポットライトが当てられている。単純に総時間だけでなく、インターバル的な面でも手間がかかる子育てにおいては、夫婦間の連携・協力が欠かせないものとなるからである。例えば乳児の夜泣き現象では、夜中でも数十分おきに起きて、あやす必要が生じる場合も少なくない。
多くの世帯は「夫が世帯の経済を支える就労を行い」「女性は専業(専業主婦)で、あるいはパート・アルバイトをしながら(兼業主婦)家事や育児を行う」。一方で夫側の家事・育児の手伝いは、必ずしも満足する領域のものではない。その理由として夫側は残業などで時間が足りないとし、時間に余裕が出来れば家事・育児への参加が増やせると説明している。次のグラフは内閣府男女共同参画局が2013年12月に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」の結果をもとにしたものだが、3割強の人が、残業が減れば家事や育児の手助けがもっと出来るとしている。
しかし今世紀に入ってからはやや減少傾向を見せるものの、乳幼児の育児と重なる場合が多い30歳代で、男性の多くは残業を強いられ、週60時間以上の就労状態にあるのが実情となっている。次に示すのは労働力調査の各年平均値を基にした、男性の長時間労働の状況推移を示すグラフである。
2013年時点では男性30歳代は17.2%が60時間以上労働。60時間未満の82.8%の人も全員が法定労働時間の40時間/週きっかりではなく、その多くが相当量の残業をさせられている。例えば男性30歳代では約21%が週49時間から59時間労働という結果が出ている。
30歳代の長時間労働の理由については例えば「会社から与えられる仕事量(残業が必要な作業)が増える一方、それを上手にこなす経験の蓄積が不足しており、時間がかかる」「部下を持ち始めるなどで、立場的に残業が多くなる役職にいる人が多い」「積極的に残業をこなして手取りを増やし、家計を支えようとしている」など多数の可能性が考えられる。
ただし折れ線グラフにある通り、2005年以降はこの長時間労働に該当する人たちの割合は漸減している。最新の2013年分に限ると、各世代で結構な減り方が起きている。特に60歳以上の減少が著しい(8.2%から5.9%)。一過性のものか、継続する動きなのかは来年以降を見極める必要があるが、今件「男性の家事・育児への参加」の観点では好ましい話。
1日は24時間しかない。就労時間が長くなることで、必然的に帰宅時間も遅くなり、結果として家事や育児の「機会」は減る。国際的な比較でも、日本は主要先進国と比べて夫の家事・育児時間は少ない。
育児や家事、さらにそこから連なる形で婚姻・少子化に関する問題を生み出す一要因として、「妻の家事や育児の手伝いに夫が消極的。その結果、妻の家事育児負担が大きくなる」との意見がある。主要他国との時間の比較を見る限り、否定はできない。
しかし一方、「なぜ短時間と成らざるを得ないのか」にもスポットライトを当てなければ、問題の根本的な解決には至らない。「夫の家事育児への参加機会が少ない」原因は今件説明したように「夫の残業が多い」のが一因なのは間違いない。ただしそれだけでは無く、社会習慣的なものをはじめ他にも多様な要素が考えられる。「子育て世代における夫の就労時間が長い」という事象・現実を見据えると共に、夫婦を取り巻く環境の実態を包括的な視点から確認し、夫婦としての子育てを見定めていかねばならないだろう。
■関連記事: