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妊娠線を防ぐには?皮膚の変化に着目した最新の研究とケア方法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【妊娠線とは?皮膚への影響と発生メカニズム】

こんにちは。今回は、多くの妊婦さんを悩ませる「妊娠線」について詳しく解説していきます。

妊娠線とは、妊娠中に皮膚が急激に伸びることで生じる皮膚の裂け目のようなものです。妊娠線は、お腹だけでなく、太もも、お尻、胸などにも現れることがあります。

妊娠線ができる原因は、まだ完全には解明されていませんが、ホルモンの影響で皮膚の弾力性が低下することが関係しているようです。エストロゲンや副腎皮質ホルモンなどが、コラーゲン組織に作用して皮膚の伸展性を変化させると考えられています。また、皮膚の真皮層にあるエラスチンやフィブリリンが減少することも、妊娠線の発生に関与していると報告されています。

初期は赤みや紫色を帯びていますが、時間が経つと色が抜けて白っぽい線になります。ひどい場合は、かゆみや不快感を伴うこともあるそうです。妊娠線は医学的な問題はありませんが、見た目が気になって心理的なストレスになる方も多いのではないでしょうか。

【妊娠線のリスク因子は?予防するためのポイント】

では、妊娠線のリスク因子にはどのようなものがあるのでしょうか。

論文によると、妊娠前の体重やBMI値が高い人、妊娠中の体重増加が大きい人、若年で出産する人などに妊娠線ができやすい傾向があるようです。また、家族に妊娠線ができた人がいる場合も、リスクが高まるそうです。

一方で、予防オイルやクリームの使用、喫煙習慣の有無、肌質、水分摂取量などは、妊娠線の発生とは関連がないことがわかっています。スキンケア商品に頼るのではなく、妊娠前からの体重管理と適度な運動が妊娠線予防に役立つのかもしれません。

興味深いのは、男の子を妊娠している人の方が、妊娠線になりやすいという報告もあることです。胎児の性別によって分泌される性ホルモンの量が異なることが、お母さんの皮膚に影響を及ぼしているのかもしれません。

【妊娠線の治療とケア方法】

いったんできてしまった妊娠線を完全に消すことは難しいです。早期であればレーザー治療である程度改善できる場合もありますが、完治は難しいというのが現状です。

予防としては、妊娠前からの体重管理が重要だと言えるでしょう。妊娠線は皮膚の急激な伸展が原因なので、妊娠初期から全身の保湿を心がけるのも良いです。ただ、市販のオイルやクリームに頼りすぎるのは避けた方が賢明です。

また、妊娠中は皮膚が敏感になっているので、刺激の強い化粧品は控えめにしましょう。紫外線によるダメージを避けるために、日焼け止めを忘れずに塗るのも大切です。

妊娠線は年月が経てば色も薄くなります。過度に気にしないように、自然な経過だと受け止めることが大切です。痒みなどの症状がある場合は、皮膚科医に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献:

- Ersoy et al. (2016) Is it possible to prevent striae gravidarum? Journal of the Chinese Medical Association, 79(5): 272-275.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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