0か100しかない働き方、もうやめませんか? 育児休業明けワークスタイルの多様化を
5月もあっという間に終わって6月に入り、4月に育児休業を終えて職場復帰されたワーキングマザーの皆さんは、そろそろ少し疲れを覚えている頃かもしれません。いかがお過ごしでしょうか。育休復帰ママと全力で共同戦線を張るパパたちだって、「こんなに大変だとは思わなかった…」と少し戸惑われているかもしれません。
かく言う私も、5年ほど前の今ごろはそうでした。どうして仕事と育児の両立に殺気立っていたあの日々を乗り越えられたのかと改めて考えていた時、ちょうどこちらの記事に出会いました。見出しに「待機児童」とあるのでそちらのテーマに眼が行ってしまいがちですが、私が「やっぱりなあ」と注目したのは、記事の冒頭に出てきた管理職女性のワークスタイルです。
私と同じ5歳のお子さんの母親というこの女性は、出産前後に約7ヵ月間の産休・育休を取り、生後6ヵ月で通常の70%に当たる週28時間の契約で元の職場に復帰。その6ヵ月後に週32時間、さらに6ヵ月後から現在までフルタイムで働き、2週間に一度は泊まりがけの国内出張にも出かけているのだそうです。
この「徐々にペースを上げていく働き方」、実は私もまさに同じことをしていました。この女性とほぼ同じ期間(6ヶ月)育休を取り、ほぼ同じようなペースでフルタイム復帰していきました。当時は少人数の編集部に属していたので、育児休業給付金を1年しっかりもらって育休を取れるような境遇ではなく、これが唯一無二のサバイバル術でした。
これ、実際にやってみると、なかなか良かったです。これから育休復帰する皆さんにも、お勧めしたい働き方でした。
何が良かったか。私の場合、さきの記事中のドイツ人女性ほど明確な時間契約はしていませんでしたが、週に1日は完全在宅勤務にさせてもらいました。通勤時間の節約になりますし、仕事の合間にちょこっとした家事もできますし、こうしたことを通じて気持ちの余裕を取り戻せて、子どもとも笑い合いながら過ごせる――。一石二鳥どころではないメリットがありました。
しばらくスポーツを休むと、再び慣れるまでに多少の練習時間を必要とするのと同じように、仕事だって多かれ少なかれそのような側面があるのではないでしょうか。出産という一大事業を終えた身体で、育児というこれまた新たな一大事業が加わっての復帰ですから、徐々に「肩慣らし」をしながら心身ともに仕事時間は仕事に打ち込めるようにできれば、働き手の力を最大限引き出すことにもつながるでしょう。それは労使双方にとってメリットになるはずです。
でも、周囲を見渡してみると、日本ではこの「育休復帰後徐々にペースを上げていく働き方」をする人自体が、フリーランスでもない限り、まだまだ圧倒的に少数派です。育休社員への支援制度が整う大手企業や行政の場合、1年間の育児休業後に時短を選べるとはいえフル復帰するのが一般的。ご本人もお子さんも元気で、周囲のサポートが得られる人は大丈夫かもしれませんが、そうでない人にとっての大変さを想像してしまいます。
いきなり出産前のように出力100%で働くのではなく、前述のドイツ人女性のように、60%ぐらいから復帰して徐々に「上げていく」働き方も選べたら、日本の女性たちも、もっと自然な形で働き続けられるのではないかと思えてなりません。
こう言うと、就業規則や各種制度がしっかり決まっている大きな組織(とりわけ日本企業)では無理だという声が上がります。確かにそのような傾向が今は強いですが、こちらについても風穴を開けられそうな動きが出てきました。
厚生労働省、育休給付の支給要件緩和 在宅勤務拡大向け10月めど(サンケイビズ)
現状では、育休中に11日以上働くと給付金がもらえなくなってしまうのですが、これによって、育児をしながら在宅で一定時間集中して働けるようになるかもしれないのです。先ほどは「上げていく働き方」を推奨しましたが、このように「半育休」とでも言えそうな「ちょこちょこ働く」スタイルも、可能になればいいなと思います。特に、経営者や管理職など意思決定を求められる立場にある人たちにとっては、仕事と育児の両立の強力な味方となってくれることでしょう。
育休復帰社員が増えるにつれて、企業も彼らを持て余す余裕がなくなってきています。労働力不足は、これからまずます顕著になってきます。育休復帰社員、さらには介護も含めて時間制約のあるすべての人たちにやりがいを感じてもらいながら、かつきちんと戦力化していくためには、柔軟な働き方の多様な選択肢を提示するのが急務です。
「上げていく働き方」しかり、「ちょこちょこ働く」スタイルしかり、ゼロ(完全に休む)か100(過労死を恐れながらの長時間勤務)ではない多彩なワークスタイルを!働く女性のすそ野を広げないと、「女性活用」を訴える安倍政権のウーマノミクスも絵に描いた餅で終わってしまうのではないでしょうか。