国連インターで重要視される日本では絶対にあり得ない3つのこと
幼稚園なのに16ページの通知表!
5月から6月にかけて、アメリカの学校は一番忙しい時期を迎える。長い夏休み前の年度末。遠足に発表会、運動会のようなスポーツデイに、母の日や上級生の卒業式といったイベントも重なり、親も子も駆け抜けるような日々を送る。
そんな中、6月にはレポートカードという名の「通知表」が渡された。
といっても、娘はまだキンダガーデン。日本でいう幼稚園の年長にあたる6歳児だ。幼稚園で通知表?!と思うかもしれないが、レポートカードをもらうのは昨秋に続き2度目。しかも、プリントアウトしたら16ページにもなる立派なレポートなのだ。
国連インター幼稚園の通知表、気になる中身とは?!
娘が通うのは、私立校となる国連インターナショナルスクール(United Nations International School、UNISと略しユニスと呼ばれる)。元々は国連職員が自分の子供のためにと1947年に立ち上げた学校で、国連本部があるニューヨーク州マンハッタンと、郊外のクイーンズ地区に2つのキャンパスを構えている。目が飛び出るほど高い学費のため、我が家はファインナンシャルエイドという家庭の収入に応じて決まる返済しない奨学金を得ての入学だった(次年度はさらなる学費の値上げとファイナンシャルエイドの減額により、国連インターは1年限りの在籍に・・・)。
ユニスは日本でも文部科学省が2018年までに200校と推進目標を掲げたため注目度が高い国際バカロレア(IB)校で、高校生活の最後の2年はIBのディプロマ取得が大きな目標となる。
といっても、高校なんてまだ先のこと。幼稚園なのだからのびのび過ごしているし、公立のキンダガーデンに比べると宿題も少ないが、年に2回もらう「通知表」が驚きのオンパレードなのだ。では、国連インター幼稚園では16ページもの通知表で何を評価しているのか?!
幼稚園からある時間割
ニューヨークでは、幼稚園から担任の先生のほか、音楽や美術などの専門科目でクラス担任とは別の先生がつくのが一般的だ。日本の幼稚園のように1人のクラス担任が電子ピアノを弾きながら歌い、工作を手伝い、読み書きも教えるということはない。幼稚園から時間割があり、音楽や美術の時間になるとみんな揃ってクラスを移動し、専任の先生の授業を受けるのだ。
そのため、通知表にはクラス担任を含め7人の先生が10科目を評価し、全ての先生が成長度合いなどをコメントしてくれている。全生徒にコメントしていると思うと、先生にとっては相当骨が折れる作業だろうし、授業料が高いのも納得してしまう。
担任の先生は言語、算数、サイエンス、社会性の4つを、さらに美術、音楽、体育、ICT(コンピューターなどを使うIT授業)、フランス語、ELL(英語が苦手な子へのサポートクラス)を合わせ10科目となる。
日本では考えられない評価項目とは?
評価項目は、ラーニング・スキルとサブジェクト・スキルの2つに分かれており、ラーニングスキルでは、提出物を期限通りに出せるかや、先生の指示に従って活動することができるか、クラスメイトの意見や自分とは違う考えも受け入れ、目標に向かって協力しあうことができるかといった責任感や協調性が項目に入っている。
驚いたのは、オーガニゼイションに道具の整理整頓だけでなく、授業の時間をきちんと使えるかが入っており、小さい頃から時間をどう使うか、タイムマネージメントを考えさせられているのが分かる。今回もらったレポートの中で、フランス語の先生のコメントの中にも「授業の最初から学ぶ姿勢ができている」とあり、限られた時間を有効に学びに使うことが重要視されているのだ。
そしてコラボレーションには、他人の意見や自分とは違う考えもリスペクトし、建設的な意見を出せるかまである。
そして何より、イニシアティブの項目があること!
イニシアティブの欄には、「新しい考えや意見、経験などを発表できる」事とともに、「伸びる部分に自分の強み(strengths)を使うことができる」と書いてある。
クラスの時間を有意義に使うこと、自分とは違う考えや意見を尊重し建設的な意見を出せること、さらには自分の「強み」を使いイニシアチブをとっていくと言うこの3つは、日本ではあり得ない項目かもしれない。
これらが、Developing 、Succeeding、 Exceedingの3段階で評価されており、娘はこの1年で特に協調性の部分で成長したのがわかる。それに、キンダーの頃から建設的な意見が出せなかったり、強みが分からなくても、親がそれらを意識して子育てに向かうのと、そうでないのとでは、結果的に差が出てくるのだろう。
国連の理念が反映されるクラス目標
実際、授業ではこれらをサポートするような取り組みが行われている。昨年9月の入学当初、クラス内には「友達との付き合い方」と言う約束事が書かれており、自分と違う意見を尊重できるようになる前段階として、「友達を傷つけてはいけない」「からかってはいけない」の他に、「友達の家に行っても荒らさない」というのがあった。もし、友達を国に例えたら・・・。相手の国に勝手に行って荒らしてはいけない。そう思うと、細かいところにも国連っぽさが出ているなと思う。
さらに、通年を通して毎週金曜日には「シェアリングタイム」という時間があり、生徒それぞれがみんなの前で短いプレゼンをするのだ。家でのお絵かきや、週末に出かけた場所での出来事、日本にいる家族の話やおもちゃなど他愛もないテーマを話すのだが、それについてクラスメイトからの質疑応答があり、小さい頃からディスカッション慣れしていくのがわかる。
項目だけ見るとシリアスな通知表だが、先生からのコメント欄にはポジティブな言葉が並び、うちの子天才?なんて勘違いしそうだが、褒めて育てよなのはアメリカらしい。
幼稚園でもサイエンス、算数が入っているのは、球根や種を植えて成長を観察するのもサイエンス(科学)だし、ハロウィンの時期にかぼちゃの種を数えたことは算数につながっているから。遊びながらも全てが学びにつながっている。
このレポートカードは星の数ほどあるニューヨークの学校のほんの一例だ。しかし、真の国際人を育てるには何が必要か、それが少し垣間見える気がした。