ダウ平均がエクソンを除外、米株式市場で石油株の凋落加速
米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは8月24日、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業平均株価の構成銘柄から、石油大手エクソン・モービル、製薬大手ファイザー、防衛大手レイセオン・テクノロジーズの3社を除外する一方、ソフト大手セールスフォース・ドットコム、製薬大手アムジェン、産業機械大手ハネウェル・インターナショナルの3社を新規で組み入れると発表した。8月31日から新たな30銘柄で構成されるダウ工業平均株価の算出が開始されることになる。
ダウ工業平均株価は、僅か30銘柄で米国の上場株式市場全体像を反映するように意図されている。定量的なルールはないとされているが、1)時価総額が大きい、2)企業として名声がある、3)多くの投資家が関心を示している、4)持続的な成長を示している、5)米国で設立され本社がある、6)売上高の大半を米国内の営業活動で生み出しているなどの特性を有している。
ただ、時代の変化によって株式市場の全体像を反映する銘柄は変わるため、株価平均委員会が見直しを行い、常に最適な30銘柄が選択されるようになっている。例えば、指数の計算が始まった1800年代は農業や鉱工業の比率が高かったが、その後は経済発展と連動する形で情報通信業や医療などのサービス業の比率も高まり、近年はNASDAQに上場するハイテク企業から選択されることも増えていた。
エクソン・モービルは、現在のダウ工業平均株価を構成する銘柄では、採用年が1928年と最も古くなっているが、ついに除外されることが決定したのが今回の発表になる。これで、ダウ工業平均株価を構成する石油株は、シェブロンの1社になる。
エクソン・モービルは2006~12年にかけて、時価総額で米国最大の企業となった時期もあったが、脱化石燃料の動き、環境に配慮するESG投資、更にはコロナ禍におけるエネルギー需要の停滞を受けて、投資家から敬遠される傾向が強くなっていた。「石油の世紀」を支配する主要企業の一つだったが、もはや米国の株式市場においては、石油会社がダウ工業平均株価の中に2銘柄も組み込まれる力はなくなったと評価されている。
そして、エクソン・モービルの事実上の代替銘柄として選ばれたのがクラウドの顧客管理を主力とするセールスフォース・ドットコムになる。エクソン・モービルの代替銘柄が製造業ではなく新たなハイテク株になったことは、「データの世紀」への移行を象徴する動きの一つと言えるかもしれない。企業や国の競争力を高める原動力が、「原油」から「データ」に変わりつつあるトレンドが、ダウ工業平均株価の構成銘柄に対しても大規模な入れ替えを迫っている。