【4回目の打ち上げ追記】議論を呼ぶスターリンク通信衛星 3回目の打ち上げ。2020年は月に2回実施へ
【追記】
2020年1月27日23時49分(日本時間)、スペースXのStarlink(スターリンク)衛星の4回目の打ち上げが実施される見通しだ。1月20日、新型宇宙船クルードラゴンの飛行中断試験から2日後に行われる予定だったが、Falcon 9ロケットを回収する海上の天候が荒れていたため延期されていた。27日日中は天候が安定しており、実施されるとみられる。
1月27日の打ち上げはロケットの着水、回収を行う海域が荒天のため延期された。新たな打ち上げ予定日は2020年1月29日23時6分(日本時間)に設定された。
4回目の打ち上げが成功すれば、スペースXが2020年の目標として表明している「1ヶ月に2回のスターリンク衛星打ち上げ」が実現することになり、衛星数は全240機となる。スペースXは北米での衛星通信サービス開始を2020年、グローバル展開は2021年までとしており、グローバル・サービスの中には日本も含まれる。1カ月に2回の打ち上げが遅延なく進めば、年末までにサービス開始目標の衛星数を達成する見込みだ。
スターリンク衛星が夜間に太陽光を反射して光って見え、光害対策となる問題について、スペースXは3回目の打ち上げの際には衛星の底面に反射を抑えるコーティングを施し、対策すると表明していた。今回のミッション概要にはそうした記載はなく、対策が行われるかどうかは不明だ。
米ヴァンダービルト大学の法学研究者は、科学雑誌サイエンティフィック・アメリカンの記事で「環境保護を定めたアメリカの『国家環境政策法(NEPA)』で保護する対象に夜空の景観も含まれ、打ち上げの許認可に関わる米連邦通信委員会が適切な評価を行わなかった可能性がある」として、衛星打ち上げが中断される可能性を指摘した。今後発表される論文に詳細が明かされるという。高速の衛星網構築は環境保護の面から歯止めがかかる可能性がある。
2020年1月5日記事
天文観測に影響を及ぼすとして議論を呼んでいる米スペースXの巨大通信衛星網、Starlink(スターリンク)衛星の3回目の打ち上げが日本時間で1月6日に実施される見通しだ。「光害対策」の改良を施した最初の衛星を含む60機となり、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、ファルコン9ロケットに搭載される。
スターリンクは、スペースXが計画する1万2000機以上の低軌道通信衛星で、世界規模の衛星通信網を構築する計画。2019年5月から打ち上げを開始しており、11月に2回目の60機の衛星を軌道に投入した。3回目の打ち上げは当初は日本時間の1月4日昼ごろに計画されていたが、悪天候が予測されることから6日に延期となった。予定時刻は、現地時刻1月6日21時19分(日本時間7日11時19分)となる。
3回目の打ち上げが成功すれば、180機のスターリンク衛星が高度550キロメートルの軌道を周回することになる。超小型衛星による地球観測網を運用する米Planetの運用数を超え、単独で世界最大の衛星を運用するオペレーターとなる。
今回の60機のうち1機には、機体表面に低反射塗装を施した衛星が含まれる。2019年に打ち上げられた120機は表面が光を反射しやすい素材でできており、打ち上げ直後から「スターリンクトレイン」と呼ばれる太陽光を反射して光る衛星の列が観測されていた。
※「低反射塗装を施した衛星は60機中の1機」とのご指摘を受け、本文を訂正いたしました。2020年1月5日12時20分
日没後の夜空で見えるスターリンク衛星の列には、天文観測への悪影響があるとして昨年から批判が高まっていた。スペースXのグウェン・ショットウェル社長は、米宇宙開発専門誌SPACENEWSの報道で「衛星の底面にコーティングを施した」と述べており、光の反射を抑えているという。「子供たちが望遠鏡で(夜空を)見られるように、するべきことをする」とのコメントもあり、光学観測への影響低減策を実行中だとしている。
スターリンク衛星のような「メガコンステレーション」と呼ばれる多数の衛星による通信網は、他にもAmazonのカイパー計画、ソフトバンクが出資するOneWebなどが計画され、衛星網を構築中だ。スターリンクと同様に天文への影響が懸念されており、中でも飛び抜けて衛星数の多いスターリンクが対策することで他の計画にも影響を与える可能性はある。
科学雑誌ネイチャーの報道によれば、スターリンク衛星が光学的に影響を及ぼす時間は日没後と夜明け前のそれぞれ1時間ほどで、スペースXの計画初期の1584機の衛星が打ち上げられた場合、6機から9機の衛星が光って見えるとの試算がある。また、各社のメガコンステレーション計画が進み、今後2万7000機の衛星が打ち上げられると、欧州南天天文台(ESO)では観測時間の0.8パーセントが犠牲になる可能性があるという。光学観測の場合、日没後すぐ、また夜明け前に長時間の露出を伴う観測をすることはあまりないといい、影響が軽微ですむ可能性も指摘されている。
光の問題以外にも軽視できないのが、電波干渉の影響だ。将来、スターリンク衛星が使用すると表明しているミリ波の帯域(V帯)は電波天文学で使用されている帯域にあたり、干渉が懸念されている。2017年にスペースXがV帯の使用についてFCC(米連邦通信委員会)に提出した文書では、電波天文学を尊重し、ITUのガイドラインに沿って必要な調整を行う旨が明記されていた。とはいえ、光害の件のように打ち上げてから表面化する問題もある。また過去には、イリジウム衛星が電波天文と隣接する帯域から発した電波が干渉を引き起こし、観測データから通信衛星の影響を取り除く「イリジウムフィルター」と呼ばれるソフトウェア処理を強いられたこともあった。
ショットウェル社長は「トライ・アンド・エラーで最も良い解決方法を探る」とも述べており、解決に曖昧さを残している。スターリンク衛星による光害が表面化してから7カ月で改修を施し迅速に対応しているものの、有効な解決方法が確立するまでには時間がかかることも考えられる。2020年、スペースXは全24回、1ヶ月に2回のペースでスターリンク衛星を打ち上げると表明しており、対策が確立するまでに大量のスターリンク衛星が軌道にある、という事態になるかもしれない。