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侍ジャパン敗戦は残念、ここから先は他国の戦いぶりを楽しみたい

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:ロイター/アフロ)

この原稿を書いているのは、19日の深夜というか20日の未明。東京ドームから帰って来た後のことだ。

それにしても、凄いゲームだった。試合後、ドームを出て地下鉄まで歩いていると、興奮冷めやらぬファンの声が聞こえてきた。「敗戦理由は、9回の継投の失敗より7-8回のチャンスをものにできなかったことだね」、「松井を1人で替えるくらいなら則本続当だよ」。中には「大谷を替えるんなら、後でまた登板できるよう外野を守らせておくべきだった」などというユニークな意見もあった。ぼくは、帰宅後もまだ余韻に浸っている。A席のチケット5300円は決して安くはないけれど、見に行って良かったと思っている。

侍ジャパンは大熱戦の末、韓国に惜しくも敗れ去った。まだ3位決定戦が残っているが、多くのファンに取って、「2015年の野球が終わっちゃったよ」なのかもしれない。しかし、侍ジャパンのVの夢が潰えても、プレミア12は終わっていない。いや、それどころかいよいよクライマックスだ。こういう世界大会では、目一杯自国に肩入れするのは大事なことだ。ぼくもそうなのだけれど、多くの野球ファンがサッカーの国際大会での全国民的な盛り上がりを羨ましく感じていると思う。「あーっ、野球でもあんなに盛り上がりたいよう!」と。

プレミア12にせよWBC にせよ、成り立ちや運営のいびつさはある程度認めざるを得ないのだけれど、これらの国際大会は、そんな野球ファンの渇きを潤してくれたことは間違いない。侍ジャパンは敗退したけれど、ここまで自国チームの動向に一喜一憂する悦びを与えてもらったことに感謝したいと思う。

そして、ここから先は世界大会のもうひとつの醍醐味である、「世界の野球」を堪能したいと思う。日韓戦の東京ドームはチケット完売だった。でも、20日のアメリカ対メキシコ戦はまず間違いなくガラガラだろう。21日土曜日の3位決定戦&決勝の共通チケットは良く売れているようだが、侍ジャパンが出場する3位決定戦が終わった後にどれだけのファンが決勝戦まで残っているか、大いに不安だ。

もしぼくの懸念通りとなったら、それはあまりに残念だしもったいない。外国の選手、外国の戦いぶりを目のあたりにする機会は(メジャーリーガー抜きでも)、大事にしたいと思う。それがホスト国ファンの特権であり、異国のチームに対する敬意というものだろう。

例えばアメリカでは、WBC には選手もファンも関心を寄せていないと揶揄される。確かに、アメリカ戦でも満員にならないが、他国同士のカードでもそこそこは入っている。少なくとも、WBC 日本ラウンドでの日本戦以外や、今回のプレミア12台湾ラウンドでの台湾戦や日本戦以外で時折見られるように、限りなく無観客状態ということはない。先日のラグビーのワールドカップでも、英国では他国同士の試合にも多くのファンがスタジアムに駆けつけ熱い声援を送っていた。自国が絡まない試合にどれだけ関心を寄せているかは、その国のその競技に対するファンやメディアの成熟度を映し出していると思う。

現実には、チケットの高さとか色々問題はあるのだけれど、ここから先は侍ジャパン以外の戦いぶりにも目を向けて欲しいと思う。

もちろん、ぼくは今日のアメリカ対メキシコ戦も見に行くつもりだ。チケットも買ってある。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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