『おじカワ』に続き40代から主役でも花開く眞島秀和 「余計なことを考えなくなって仕事を楽しめてます」
20年以上にわたり数え切れぬほどの作品に出演し、バイプレイヤーとして広く顔を知られてきた眞島秀和。昨年はドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』に主演して、人知れずかわいいキャラクターを愛でる中年課長ぶりが話題に。14日スタートの『#居酒屋新幹線』でも、出張帰りの新幹線でご当地テイクアウトグルメを楽しむ役で主演する。40代に入ってから、いっそうの魅力を醸し出す背景にあるものは?
おいしそうに見えるように豪快に食べます
――『#居酒屋新幹線』で出張帰りの新幹線の車中での眞島さんの食べっぷり、飲みっぷりは本当においしそうというか、幸せそうです。ああいう食べ方は研究したのですか?
眞島 研究というほどのことはないですけど、他のグルメ系ドラマはもちろん観ていますし、どう食べたらおいしそうに見えるかは自分ではわからないので。監督と相談して「豪快にいきましょう」ということになりました。たとえば串ものでも、普段より多めに頬張る勢いで食べていました。
――お酒を飲んだあとの目の細め方も絶妙です。
眞島 自分が飲んでるときのことを思い返したり、人間観察的に飲んでる人の顔を見たりは普段もしているので。いろいろなところから得た感覚を詰め込んでいます。実際に撮影で出たものは、おいしかったですし。
――眞島さんも食や酒にこだわりがあって?
眞島 そんなにグルメというわけではないですけど、地方ロケに行ったら、その街のいわゆるB級グルメや薦められた地酒は必ず試すようにしています。「せっかく行ったんだから」と最近思うようになって、自分でリサーチもしますね。
――今回演じる高宮進と通じてますかね?
眞島 そうですね。今回はロケから東京に戻る新幹線の車内で、本当にプチ居酒屋新幹線みたいなことを自分でもして、楽しんでいました。
テンション高いモノローグでコメディに繋げて
――グルメドラマをやりたい気持ちはありました?
眞島 どういう役をやりたいとか、こだわりは持ってないです。ただ、僕は山形出身で、今回は東北方面に日帰り出張するドラマなので、少しでも東北の盛り上がりに繋がればいいなという想いはありました。
――こういうドラマではモノローグが重要ですよね?
眞島 そうなんです。僕が演じた高宮進がおいしいものに感動したテンションを表すのに、モノローグはすごく重要でした。映像での動きや表情よりも、かなり幅広く表現できたと思います。抑えたリアクションを撮って、モノローグではすごくテンションが高い。それがドラマ内の仕掛けとして、コメディに繋がればいいかなと。
――高宮進はキャラクター的には入りやすい役でした?
眞島 自分とは職業は違っても同年代で、仕事にそれなりに責任があって、家に帰れば父親としての役割もある。その隙間の時間をどう充実させるかという感覚は、共有できました。入りにくさはまったくなかったです。高宮進はきっと、仕事もある程度できる人なんでしょうね。その分ストレスも抱えているのを、新幹線での移動時間でうまくリフレッシュしているイメージでした。
主役とも若手ともやり取りがある役は難しい
――そもそも眞島さんくらいになると、役によってやりやすいとか難しいというのは、もはやあまりない感じですか?
眞島 いやいや。いただく役によっては、ものすごくハードルが高いこともあります。今回はそういうふうに取り組む役でなくて、撮影を楽しみましたけど。
――どんな役に難しさを感じますか?
眞島 時代劇は難しいですし、刑事もので「どうしたものか?」となるときもあります。主役の方と若い俳優の間でどういう立ち位置でいたらいいのか、芝居上でも現場でも探ることをしたり。
――4年前の『CRISIS』での、公安に協力して新興宗教の教団に潜入しているうちに精神的に追い詰められる役なんかだと、演じていてキツくなったりもしますか?
眞島 ああいう誰ともほぼ絡まず1人で動く役は、監督と話しながら「そういう感じか」と作っていけます。それより、社会の中の中間管理職だったり、上の人とも下の人ともやり取りがあるほうが難しいです。
パグ太郎をクリーニングに出したら笑われて(笑)
――昨年話題になった『おじさんはカワイイものがお好き。』とか今回の『#居酒屋新幹線』とか、主役はやっぱり嬉しいものですか?
眞島 素直に嬉しいですね。ただ、そこまで「主役をやりたい!」と思ってきたタイプでもないので、「今回は出番が多いな」というくらいだったりもします。あと、メインの役だとどうしてもドラマのイメージを背負うことにも繋がるので、責任重大と感じますね。今回の『#居酒屋新幹線』では食べ物やお酒が主人公だったりするので、それを視聴者の方に伝える役割だと思ってます。
――『おじカワ』の反響は実感されました?
眞島 どうですかね? 劇中で使ったパグ太郎のクッションを近くのクリーニング屋さんに出しに行ったら、店員のおばちゃんに笑われました(笑)。
――パグ太郎グッズを本当に使われていたんですね(笑)。
眞島 うちのワンちゃんのベッドになっていました。汚れを落としてクリーニングに出したらフフフと笑われたので、それも反響なのかなと思いました(笑)。
脇を固めることにやり甲斐を感じてました
――眞島さんはもともと、『東京ラブストーリー』や『愛という名のもとに』といったドラマをご覧になっていたとか。
眞島 本当にその世代ですね。『北の国から』とかも観てました。
――ご自身が俳優を目指すうえで、織田裕二さんや唐沢寿明さんのような主役を張る存在を目指したわけでもなかったんですか?
眞島 というより、最初は「この物語の登場人物の1人になってみたい」という興味の持ち方でした。たぶん、初めから自分は主役タイプではないと思っていて。いろいろな作品で脇を固めるポジションで参加できることに、すごくやり甲斐を感じていました。
――学生時代は目立ってモテたりもしていたんでしょうけど。
眞島 いや、普通じゃないですかね(笑)。至って普通だったと思います。
――では、名バイプレイヤーのポジションは目指した通りだったんですね。
眞島 そうですね。自分が若い頃から憧れていた俳優さんたちは、そういうタイプの方が多かったので。
――憧れの俳優さんはいたんですね。
眞島 たくさんいます。誰とか挙げるにはいすぎるくらいですけど、メインでなくてもいろいろな役ができて、たくさんの作品に出てらっしゃる方たちです。自分もそういう俳優になりたいと、若い頃から今もずっと思ってきました。
デビュー作から本物を見られたのは幸運でした
――眞島さんも20年以上、途切れることなく多くの作品に出演されてきました。その裏では、何か人がやらないような努力もされていたんですか?
眞島 そんな特別なことはないですね。台詞をちゃんと覚えていくとか、当たり前のことだけです(笑)。あとは、ちょっとカッコいい言い方をすると、人との出会いに助けられてきたところが大きいと思います。所属している事務所、使ってくださった監督やプロデューサー、応援してくださる方々……。そういう人たちとの良い出会いの繰り返しで、ここまで続けてこられました。
――そうした出会いの中でも、特に俳優人生の糧になったとか、何かに開眼するきっかけになったようなこともありました?
眞島 デビュー作の『青~chong~』で最初に出会ったのが李相日監督だったことが、どうしても大きかったです。当時の僕は俳優を始めたての22歳で、何をしたらいいかもわからない状態で、李監督は本当に厳しかったんです。でも、最初に“本物はこうなんだ”と見せてもらったのは幸運だったと思います。
――李監督にとってもデビュー作でしたが、何か心に残るようなことを言われたりもしたんですか?
眞島 いっぱいあると言えばありすぎますけど、当時の僕の感覚からも、李監督は最初から映画監督らしかったんですよね。
年齢を重ねたら肩の力がどんどん抜けて
――眞島さんは40代に入ったくらいから、ご活躍がいっそう際立つようになりました。近年で転機になったような作品はありました?
眞島 作品というより、自分のことを振り返ると、年齢を重ねてからのほうが仕事が楽しいんですよね。そこが一番じゃないですか? 20代とか若い頃は今思えば、余計なことばかり考えていた気がします。自分の評価とか、この役が何に繋がるとか、芝居するに当たってはまったく必要ないことを気にしすぎていた部分がありました。それが年を重ねるごとに、肩に入っていた力がどんどん抜けていって。評価を気にするより、現場で一生懸命やって、それを楽しむ。いつの間にか、そんなふうに変わっていきました。いろいろな出来事を楽しさに変換するのが大事だと、今は思っています。
――演技的にも、若い頃になかった味が出てきたりもしていませんか?
眞島 どうでしょうね? 技術的なことになると、何がどう成長してきたのか、自分ではわからないですね。ただ、心の持ちようとしては、作品自体を楽しむようになってきました。
――『#居酒屋新幹線』ではコメディっぽいところもあって面白いです。2話の支倉常長のことが出そうで出ないくだりとか。
眞島 “支倉”が“はせくら”と読めなかったり、こういうこともあるよな、という。そういうところも、今回は僕自身がすごく楽しんでやっています。
移動時間が人生の楽しみに繋がって
――人生的にも、年齢を重ねてから新たな楽しみを見つけたりもしてますか?
眞島 『#居酒屋新幹線』の影響で、移動時間をどう充実させるかも人生の楽しみ方に繋がっているかなと思うようになりました。せっかくどこかに行くなら、おいしいものを食べて帰ろうと調べたりすることも、若い頃はあまりやってなくて。今回のロケでは、仙台で台本にないB級グルメを食べたり、1人でその街ごとにサウナを探しにいったりもしていました。
――普段の生活の中ではどうですか?
眞島 暇なときはのんびり過ごしてます。体力が落ちてきたので、適度に運動するくらいのことは気をつかっています。
――俳優としての将来について考えたりはしませんか?
眞島 健康で続けられたらいいなと思いますけど、若い頃に憧れていた先輩たちは当時、今の自分くらいの年齢だったんですよね。そこからさらに先に行かれて、距離は変わってないんです。自分がそれくらいの年齢になったとき、あんなに元気なまま芝居への好奇心を持ち続けて、若い俳優にさすがだなと思われているのか。そう考えたら本当にすごくて、僕はまだまだですね。
――でも、『#居酒屋新幹線』はまた反響を呼びそうです。
眞島 もしそうでしたら、すごく嬉しいです。個人でできるお楽しみとして、新幹線に乗るときは1人だけの居酒屋をぜひ試してほしいです。相当ぜいたくな時間を過ごせると思います。
Profile
眞島秀和(ましま・ひでかず)
1976年11月13日生まれ、山形県出身。
1999年に映画『青~chong~』に主演してデビュー。主な出演作はドラマ『海峡』、『なぜ君は絶望と闘えたのか』、『サウナーマン~汗か涙かわからない~』、『おじさんはカワイイものがお好き。』、映画『愚行録』、『そらのレストラン』、『蜜蜂と遠雷』、『夏への扉-キミのいる未来へ-』など。12月14日スタートのドラマ『#居酒屋新幹線』(MBS・TBS)に主演。2月4日公開の映画『大怪獣のあとしまつ』に出演。
ドラマイムズ『#居酒屋新幹線』
12月14日スタート
MBS/火曜24:59~ TBS/火曜24:58~
損保会社の内部監査室で働き、日帰り出張で全国を飛び回る高宮進。ご当地テイクアウトグルメと酒を帰りの新幹線で堪能するのが密かな楽しみになっている。