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浅田真央「自分の体力って無限!」アイスショー千秋楽公演スタート、赤ちゃんの泣き声も「温かい気持ちに」

野口美恵スポーツライター
千秋楽公演がいよいよスタートした(c)BEYOND

 浅田真央さん(32)が座長を務めるアイスショー『BEYOND』の17日間にわたる千秋楽公演が7月1日、スタートした。

「去年の9月から全国ツアーをしてきて、とうとう立川での千秋楽公演にたどり着きました。いよいよ最後の地だ、というすごい覚悟を持って初日を迎えました。千秋楽公演だけのスペシャルな演目もあるので、さらにBEYOND(進化)した私たちを見てほしいです」

千秋楽公演がスタート(c)BEYOND
千秋楽公演がスタート(c)BEYOND

過去最高の声援、「一番上の席の人まで笑顔が見えました」

 アイスショー『BEYOND』は、昨年9月の滋賀公演を皮切りに、全国23箇所103公演を11人の精鋭スケーターで滑りぬく。

「小さいころから、あゆさん(浜崎あゆみ)のように一座を引き連れて、音楽や衣装、舞台、音響すべてが一体化した大きなエンターテインメントをするのが夢でした」

と真央さん。その夢を実現したかのような、真央さん自身が10曲を超えるプログラムを滑り、メンバーたちも含め90分間ノンストップでパワーを振り絞るショーだ。

 7月1日に始まった、立川での千秋楽公演。その初日、会場はかつてない盛り上がりだった。真央さんらが近くを通過するだけで、客席からは『ヒュー!ヒュー』と声援が湧き起こる。演目中だとしても、声出し、拍手すべてOK。すでに何度も公演を観にきている“おかわりBEYOND”のファンらも、千秋楽公演とあって最高のパワーで声援を送った。

「千秋楽公演の初日、本当にすごい歓声でした。過去最高の声援が本当に幸せで、私たちが逆にパワーをいただいたくらいでした」

 同公演では、暑さも考慮して観客のマスク着用は任意に。お客さんの表情も見えるようになった。

「とうとう皆さんの笑顔が見えました。観客席の一番上まで本当によく見えるので、あのお客さんとは目が合ったな、あそこには小さい子供がいるな、あのお客さんは下むいてたな(笑)とか。コンパクトな会場でスタンド席もしっかり見えているので、目線を全体に配るようにしています」

客席の左右すべてだけでなく、一番上の席にまでアピールする(c)BEYOND
客席の左右すべてだけでなく、一番上の席にまでアピールする(c)BEYOND

「家族みんなで」をコンセプトに、年齢制限はなし

 真央さんがショーをプロデュースするにあたって、最初からコンセプトにしたのは、「お客さんとの距離」と「家族みんなで楽しめること」だった。

 特に「家族みんなで」を実現するために、チケット代はギリギリまで抑えた。実際にはリンクの設営維持に莫大なコストがかかるため、多くのアイスショーは2万円台が主流。しかし真央さんは「小さい子がいるような家族でもアイスショーを観にきてほしい」という思いから、チケット代を極力低く設定。また3歳以下は膝上無料とし、入場は制限しないという方針を貫いた。

 そのため千秋楽公演では、演目の合間で静かになった場面でも「まおちゃ〜ん」という子供の声が、四方八方から聞こえてくる。乳児もOKなので、演目中にオムツ替えに立席する人がいたり、赤ちゃんの泣き声が聞こえたりする。「スケーターの集中力が切れないだろうか」「周りの人に迷惑ではないだろうか」と心配になるような場面だが、真央さんはきっぱりとこう言い切った。

「赤ちゃんが泣いていてもいいんです。今日の公演中も、『真央ちゃーん』という子供の声や、赤ちゃんの泣き声が、あっちからもこっちからも聞こえてきて……。ああ、温かいな、って。温かい空間だなって。子育てが大変な中でも、お母さんたちや家族みんなが観にきてくれてるんだなと思ったら、ありがとう、という気持ちになりました。年齢制限はないので、赤ちゃんや子供たちが来ていることは可愛らしいし、むしろ、温かい空間になりますよね」

 これが、真央さん32歳の矜持である。一糸乱れぬショーを全力で追求していても、見る側の気持ちに立つ。その気持ちの切り替えは簡単なことではないはずだが、真央さんはこう続けた。

「ショーは、試合とはまったく違います。試合は自分自身に集中していたけれど、ショーはお客さんにパワーを渡す場。特に目線への意識、観客との距離感は、全然違います。『シェヘラザード』でツイズルをガーっとやって、止まったところの近くにいたお客さんを、じっと眼ヂカラで見つめたり。1公演で20人くらいは、じっくりと目が合います。そこは本当に意識してきたので、“おかわりBEYOND”の方がハマってくれた理由かも(笑)」

柴田嶺との熱演に全力で挑む(c)BEYOND
柴田嶺との熱演に全力で挑む(c)BEYOND

午前公演で全力を出し切っても、午後公演も再び全力「私の体力は無限」

 すべての観客に楽しんでもらおうと、SNSでの反応を聞いて、10ヶ月の公演を経て演技内容を磨いてきた。

「公演ごとに『こっちの席にアピールが来なかった』という声があれば、そこをフォローできるようなフォーメーションに変えて、というポリッシュを繰り返してきて、この千秋楽公演があります。特に今日の『カプリース』は本当に盛り上がりました。お客さんがノリノリだったので、私も負けていられないなって思うくらい。初演のころとは髪型も(ポニーテールの結び目を)だいぶ高くしたことで動きを出して、今日は、とにかく髪の毛を振り回してました(笑)」

 昨年9月にツアーが始まったばかりのころは、土日で4公演をこなすためには「32歳にもなり、体力配分が大切になってきた」と語っていた真央さん。しかし10ヶ月を超えて、言葉に変化があった。

「全国ツアーを回ってきたことで、かなり体力がついてきました。午前公演の時は『午後がどうなってもいいから全力を出し切ろう』と思いますし、土曜は『明日どうなってもいいから130%を出そう』と思ってやります。そうやっても、結局、次の公演でも同じように全力でやれるということが、90公演を超えて分かってきたので。自分の体力は無限だなって思います。そういった意味で、常に自分を超えてきたことで、常に過去最高の状態になっていると感じています」

 真央さんだけではない。44歳の田村岳斗さんも3回転ジャンプを降りるたびに、着地の姿勢のまま観客席にドヤ顔を見せる。すべてのスケーターが、9月の初演よりアピール力が増してきた。

「全員が進化です! ひとりひとりが素敵なスケーター。それぞれの魅力をアピールし続けてきたことで、全員が進化してこられたことが、本当に宝物です」

 千秋楽公演の「アリーナ立川立飛」は、来年秋に完成予定の『MAO RINK』とわずか数分の距離にある。

「これから立川は私の大切な場所になる。その場所でBEYONDの千秋楽を迎えることができて、次に繋がると実感しています。残りの公演を全力で楽しんで、一瞬一瞬を大切に、みなさんにBEYONDの世界を届けたいと思います」

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スポーツライター

元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝、20年冬季マスターゲームズ・シルバー部門11位。

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