日銀の高田審議委員の発言を受け、今月の決定会合でのギアシフト(金融正常化)の可能性が強まった理由
9日に日銀の高田審議委員が滋賀県で講演を行い、その内容が日銀のサイトにアップされた。
日銀の執行部と呼ばれる総裁と二人の副総裁の講演などによる発言には細心の注意を払うようにしていたが、審議委員については田村委員以外の発言内容については、それほど注意を払う必要はないとみていた。
その理由としては、その内容がある程度想像が付いていたためである。何かと理由を付けて正常化には極めて慎重である姿勢を常に強調していたためである。
現在の日銀はプロパーである内田副総裁の影響力が大きいとみられ、事務方執行部がそれを支えている。
植田総裁や氷見野副総裁は正常化に向けた動きに理解を示すというか、正常化すべきとの考え方を持っていたとみられるのに対し、黒田前総裁を支えていた内田副総裁は政治への配慮もあってか、極めて慎重との見方が強かった。
それが昨年12月あたりから状況に変化が出てきた。植田総裁や氷見野副総裁による正常化に向けた意向が反映されてきたのである。それが昨年12月や今年1月の日銀の金融政策決定会合の主な意見や議事要旨から窺えた。
審議委員の多くが慎重派から正常化に向けた動きに同調してきたと思われるのである。それが確かなのかどうかを見極める上でも、今回の高田審議委員の講演に注目した。
高田委員は講演のなかで、「粘り強く金融緩和を続けるなか、私自身としては、現在の日本経済について、不確実性はあるものの、2%の物価安定の目標実現が漸く見通せる状況になってきたと捉えています」と語った。
さらに「今日のきわめて強い金融緩和からのギアシフト、例えば、イールドカーブ・コントロールの枠組みの解除、マイナス金利の解除、オーバーシュート型コミットメントの在り方など、出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要と考えています」としていた。これが現在の執行部が行おうとしているものとみられる。
こうした状況に至るまでに長期にわたる時間を要した理由も述べていたが、肝心の政治的な配慮には説明はなく、このあたりの説明がないと、なかなか理解が難しいものでもある。
それはさておき、肝心の、きわめて強い金融緩和からのギアシフトの時期であるが、今回の高田審議委員の説明を読む限り、少なくとも、それを織り込みつつある市場にブレーキを掛けようとしたものではなかった。
むしろ高田氏は懇談会後の記者会見で、3月会合でのマイナス金利解除の判断について「2%の物価目標の実現が視野に入ってきている状況。その認識に沿って3月、その次も対応していきたい」とも語っていたのである(1日付日本経済新聞)。
先日、日銀の企画局を担当する清水理事は衆院予算委員会で、2%の物価目標の達成について、現時点ではまだ十分な確度は持っていないと発言するなど、事務方執行部は銀行などによる早期のギアシフトを睨んだ動きを牽制するかのような動きも出ていた。
しかし、今回の高田審議委員の発言内容を見る限り、ある程度春闘の状況も把握できる3月での金融政策決定会合でのギアシフトの可能性は高いのではなかろうかと思われる。