タイガー・ウッズに絶賛され、みんなに祝福されたトニー・フィナウの5年ぶり復活優勝
「タイガー・ウッズ」の名前が久しぶりに公けの場で聞かれた。
「みんな祝福してくれた。1000以上のお祝いメッセージが届いた。でも、まず最初に届いたのが、タイガー・ウッズからのメッセージだった」
そう語ったのは、米ツアーのプレーオフ・シリーズ第1戦、ザ・ノーザントラストを制し、通算2勝目を挙げた31歳の米国人、トニー・フィナウ。2016年のプエルトリコ・オープンで初優勝を挙げて以来、実に5年ぶり、1975日ぶりの復活優勝となった。
この勝利でフィナウは米ツアーのポイントランキング(フェデックスカップ・ランキング)で1位へ浮上した。残るプレーオフ第2戦のBMW選手権でも好位置を維持し、最終戦のツアー選手権を制することができれば、年間王者に輝いて、1500万ドル(約16億5000万円)のビッグボーナスを手に入れることができる。
「その夢に現実的に近づいたことがうれしい」
うれしさのあまり、その夜、フィナウはチームの面々と一緒に高級ステーキ・レストランへ繰り出し、美味しいステーキ・ディナーで復活優勝を祝ったそうだ。
夜11時すぎに、ようやく宿舎へ戻ったものの、興奮は収まらず、ステーキを食べたというのに腹が空いてたまらなくなり、フィナウとスイングコーチは再び街中へ舞い戻って、今度はファストフード・レストランでビッグなハンバーガー2つにフライドポテト、デザートまで平らげたという。
そんなにもフィナウを興奮させていたものは、もちろん5年ぶりの勝利の味だが、かつては雲上人のような存在だったウッズから祝福してもらったことは「何よりもスペシャルなことだった」とフィナウは言った。
フィナウは苦労人だ。両親はトンガとサモアの出身。フィナウは兄弟姉妹8人の上から3番目で、彼がまだ幼いころに一家揃って米国ユタ州に移住してきたが、家計は苦しく、「温かい食事をお腹いっぱい食べることは難しく、我が家の生存競争は、それはそれは激しかった」と、いつだったか話してくれたことがあった。
バスケットボールの選手だったフィナウは高校時代にゴルフへ転身。2007年にプロ転向したものの、練習代や用具代、ミニツアーや下部ツアーの転戦費用を捻出するための副業にばかり時間を取られ、なかなか芽が出ないまま、苦節8年。2015年に米ツアーに辿り着いた。
そして2016年に初優勝を挙げたが、その後は嫌というほど惜敗を繰り返し、2勝目を挙げるまでには5年の歳月を要した。
しかしフィナウは、勝てなかった苦しい時代にも、故郷ユタ州で貧困に苦しむ人々のためにチャリティ・ディナーを自力で開くなど社会貢献に力を尽くしてきた。
そんなフィナウの優しさに触れた人々、助けてもらった人々が、彼にようやく訪れた2度目の優勝を知って、みんな祝福の言葉を送ったからこそ、彼のスマホには1000以上のメッセージが届いた。
その筆頭がウッズからのメッセージだった。
「タイガーは僕を誇りに思うと言ってくれた。僕のファイトや度胸をいかに誇りに思っているかを説明してくれた。つまり、タイガーが僕のプレーを見てくれていたということ。それは僕にとって、とても特別なことだ」
ウッズの祝福がフィナウの復活優勝に大きな花を添えていた。