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元イタリア代表のW杯優勝戦士、歩けないほどの健康問題があった 「夢は息子とのサッカー」

中村大晃カルチョ・ライター
ミラン在籍時の元イタリア代表GKアメーリア(写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ)

元イタリア代表GKのマルコ・アメーリアが、健康問題に悩まされていたことを明らかにした。

アメーリアは12月8日、名誉会長を務めるリヴォルノのサッカースクール「ASD Tre e 23 Livorno」のフェイスブックを通じ、長文の手紙を投稿した。その中で、そけい部の痛みに苦しんだ日々を明かしている。

ローマのユース出身で、リヴォルノでブレイクしたアメーリアは、イタリア代表として2006年のドイツ・ワールドカップに参加している。出場機会はなかったが、24年ぶりに世界を制したアッズーリ(イタリア代表の愛称)の優勝メンバーだ。

2010-11シーズンから4年にわたってミランに在籍し、短期間ながら本田圭佑のチームメートでもあった。出場機会はなかったが、2015-16シーズンにチェルシーにも在籍している。

肉体に異変が生じたのは、そのチェルシー時代だ。腰やそけい部に問題が発生。イタリアに帰国し、検査を受けたが、原因は見つからなかったという。

「痛みを抑え、動きをよくするため」に、アメーリアはそけい部に直接ヒアルロン酸を注入。再びプレーできるようになり、2016-17シーズンの終盤にヴィチェンツァで4試合に出場した。

だが、「練習や試合が終わるたびに、痛みはどんどん増していった」。結局、現役を続けたいと願いつつ、アメーリアは引退を余儀なくされる。

「34歳でこの最終決断を下すのを受け入れるのは簡単なことじゃなかった」

指導者になる勉強を始め、ライセンスを取得したが、痛みは増すばかり。適応しようとするも、それによって腰や骨盤などにも別の問題を抱えるようになり、「うまく歩けなくなった」。

弱さを見せまいと、苦しみを隠しながら過ごしていたというアメーリアの苦悩は続く。

「もう子どもたちを抱っこすることもできず、走ることさえできず、私の生活は難しい道をたどっていた。ズボンや靴下をはくことも、靴ひもを結ぶこともできない。妻といることも肉体的な苦しみになっていた。これは男性として心を殺される。悪い考えもよぎり、泣いた。誰にも見えないところで泣いた。いつも笑顔で冷静に、誰にも苦しんでいると見えないように努めた」

「薬を飲まないと夜も寝られない」状況にあったアメーリアの希望となったのが、テニス選手のアンディ・マリーだ。股関節の負傷から復帰を果たしたマリーのことを知り、調べていく中で自分と同じ問題と考えたアメーリアは、同じ股関節置換手術を受けることを決意する。

今年5月には「普通の生活への復帰」が始まるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で、手術が8月、11月、そして12月に延期された。だが、念願の手術を終え、その後は「日に日に良くなっている」という。

ようやく苦しみから解放されつつあるアメーリアは、以下のように希望や夢を記した。

「子どもたちを抱き、ソファーや私たちのベッドで眠ってしまった時にベッドに連れていく。ひとりで靴下を履き、靴を履いて、普通にひもを結ぶ。苦しまず、自由に妻と一緒にいられる。息子とサッカーをして遊び、できれば彼を追いかける。そういったことを夢見ている」

「世界のために、引退したかつての仲間のレジェンドたちと何度か試合したい。でも何より、クリスマス後にピッチに戻り、監督として成長するための道のりを再開するのが待ち遠しい。近年の私を制限してきた、あの肉体的な苦しみを感じることなく」

少しでも早く、それらがすべて実現するのを願うばかりだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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