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【河内長野市】滝畑ダムで熟成していたふるさと納税返礼品、天野酒が引き上げられる様子を見学しました

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市には、ふるさと納税の返礼品として、滝畑ダム内に沈めて熟成させた日本酒があるのをご存知の方も多いと思います。ダム湖の底に日本酒を沈めて熟成させてから引き上げるという一連の行為に、私は大変興味を持っていました。

すると先日、今年のお酒の引き上げを行うという情報を得ましたので、どうにかこの様子を取材できないかと無理をお願いしました。

すると嬉しいことに市の担当者の方から取材の快諾を頂くことができたのです!というわけで、当日滝畑ダムの現場に行ってきました。

滝畑ダムのダムサイト、遮水壁(堰き止めているコンクリートの壁)の横に来ました。ここに滝畑ダムの管理事務所、大阪府南河内農と緑の総合事務所滝畑ダム分室があります。

滝畑ダムは、大阪府によって建設管理しているダムで、飲み水や治水、灌漑用水に使われているので、普段ダム湖に人が入ることは許されません。そのため今回は本当に貴重な取材となりました。

集合時間に関係者が全員揃いました。

この日は河内長野市の担当の方々をはじめ、大阪府の滝畑ダムの関係者の方々、そして酒を醸造してダム湖に沈めた天野酒の西條社長(蔵主)と引き上げた酒を管理してふるさと納税を行った方に熟成酒を送付するL'espace地球屋の阪谷美典さん。

それに加えて新聞記者の方もおられました。

ダム湖に小型のボートで移動し、沖合いにある酒を沈めたポイントまで移動するために、ヘルメットとライフジャケットを着用する必要があります。

さて、事務所の建物の奥にダム湖に向かうボートの発着所があります。

ここで何かを巻き上げるような音がしたのかと思えば、このうようにワイヤーが動いていました。これはなんのためにあるのかと思っていたら!

なんと!ボートがゆっくりと湖面に向かって降りていったのです。

そして日本酒が沈められているのは、ブイの真ん中あたりにある筏(いかだ)の下です。

ボートが湖面まで降りて行きました。撮影場所からは、かなり急な階段を降りる必要があります。

第一陣の方々が、ボートに乗るために階段を降りて行きました。

さて先ほど、ケーブルが巻かれていた建物を逆方向から眺めてみました。レールが敷かれていてワイヤーと滑車でボートを陸上移動させているのは、かつて京都の蹴上に存在していたインクラインのようです。

第一陣の方々を乗せたボートが滝畑ダムの湖面を航行しています。その速度は大変遅いので、よほどのことがない限り転落の心配はないでしょう。

しかし、階段の下まで着いて驚きました。ここには固定の桟橋がなく、不安定な浮き桟橋があるだけです。

第一陣の方々を乗せた船は無事に筏まで行きました。

そして戻って来ました。次はいよいよ私の番です。

ボートはゆっくりと浮き桟橋に近づきます。

正直なところ不安定な浮き桟橋からボートに乗り込むのに少し苦労しました。

でもどうにかボートに乗り込みました。ここからは貴重な滝畑ダムのダム湖の上からの撮影です。

私を乗せたボートは動き出しました。画像はちょうど先ほど降りた階段と浮き桟橋のある乗船口の様子です。今回は3回に分けて小型ボートに乗り込みますので、映っているのは第3陣でボートに乗り込む方々です。

滝畑ダムの遮水壁(ダムの壁)がみえます。

ボートの上の様子です。

前方の船内からブイが見えてきました。

これも初めて知りましたが、ブイのところには小さな水門(通船口)があり、それを越えることでその先に進めるようになっていました。

なぜダム湖にブイがあるのを調べると、これは「網場(あば)」とよばれるもので、上流からダム湖内に漂流してくるゴミや枯れ木が遮水壁側に流れ込んでダムの取水に影響を及ぼさないようにしているためのこと。

さてブイのすぐ近くに設置された筏の上に上陸です。

筏から改めて遮水壁側を見てみましょう。陸上では見られない貴重なショットです。

ここで西條社長にこのような試みを始めた理由をお伺いいました。この試みは7年前からスタートしたそうで、当初はダムの遮水壁のところにあるトンネルに酒を熟成できないかと考えいていたそうです。

大阪府でいちばん大きなダム湖を持つ河内長野でやってみれば、税収にもつながって大変面白くて話題になるのではと社長は考えていたそうです。

すると当時、滝畑ダム分室の責任者だった中谷所長が大変興味を持たれ、膨大な書面を作成して諸手続きをすべてしてくださったことから実施につながったのですが、西條社長も驚いたのは、トンネルではなくダムの湖面の下に沈めてみようとなったのです。

こうして全国初の試みとして、ダム湖の底に日本酒を入れて熟成させたものをふるさと納税の返礼品にするというプロジェクトがスタートしました。

最初の2年は果たしてできるのか、その実験のために試行錯誤を繰り返したそうです。

例えば当初は火入れをした1升瓶を沈めていましたが、4合瓶のほうが家庭で取り扱いやすいとか、醸造用アルコールが入っているお酒は変化がわかりにくい、大阪では純米酒のほうが人気であるし、熟成度合いもわかりやすいといったことなどです。

また瓶を袋詰めして沈めると、袋の中の空気のせいで酒が沈まずに湖面に浮いてしまったといった失敗もあったそうです。

ダム湖の底に沈めると水冷になるので、空気で冷やす空冷よりも全方向から同じ温度で冷やせるので、酒の熟成が良い方向に作用するそうです。現在では火入れもしていない純米吟醸の生酒をそこに沈めています。

ただこのプロジェクトを積極的に進めていた中谷所長は、惜しいことに3年ほど前に急死されたそうなのですが、西條社長など関係者はその遺志を継ぎたいと、こうして毎年行っているのです。

「湖底で熟成した日本酒は、とにかく味がまろやかになるんです」と西條社長。湖底熟成酒は味はもちろん、湖底で熟成したというストーリーがあるので、リピーターとなって毎年納税してくれる人も多いそうです。

本当は河内長野のお土産にしてくろまろの郷などで販売すれば良いのにと言いたいところですが、何しろ滝畑ダムは公共の施設。税金を集めるふるさと納税の返礼品だからこそ利用できるのであるからそれは無理とのことでした。

ちなみに、湖底熟成酒とは別に当初考えていたトンネル熟成のお酒もあります。両方あるというのは本当に興味深いですが、いずれもふるさと納税の返礼品のため、手に入れられるのは富田林市など河内長野市以外の方々です。

さて、ゴムボートが湖面に浮かんでいます。このゴムボートに引き上げたお酒を載せるそうです。

筏の上に黄しょうぶが咲いていました。こんなところで咲くとはすごい生命力ですね。

そんなことをしていたら、いよいよお酒が湖底から引き揚げられます。

魚の網を引くようにロープを引き上げていくと

出てきました。湖底熟成酒の入ったお酒のケースです。

間近で見ましたが、ダム湖に半年寝かしていたお酒、見ただけでもやっぱりすごいですね。

酒のケースが上下三段になっていて紐で固定して湖面に入っていました。

しかし、酒はまだ湖底に眠っています。ふたつ目のロープを引き上げていきます。

ふたつ目も上がっていきました。今年は一時期ダムの貯水率が低かったこともあって、泥が多く混じっているようでした。ただ瓶を真空パックなどしているためお酒への影響はないとのこと。

3つ目も引き上げられます。

3つ目も無事に引き上げられていきました。

3つ目は上下2ケースでした。

こちらが引き上げられた湖底熟成酒、今は汚れていますが、この日のうちにきれいに洗ってラベルなどを新しくつけて、発送できる体制にするそうです。

ケースを固定していた紐を外していきます。

こうして1ケース10本のお酒が入った8ケースすべてが引き上げられました。つまり湖底熟成酒は、80本限定商品ということになります。

さてこの引き上げられたお酒をトラックに積むわけですが、最初に乗った浮き桟橋のところはさすがに不安定で、そこからあの急な階段を酒のケースを持って上がるのはあまりにもリスクが高いですね。

そのため、ダム湖内の別の場所にお酒が運ばれます。そこには既に運送用の軽トラ(白丸で囲ったところ)が待機しています。

こうして酒のケースがゴムボートに詰められます。

ちょうど8つのケースがゴムボートにきれいに収まりました。これを小型ボートで曳航させて岸を目指します。

ゴムボートを小型ボートに括り付けます。

ここで何人かがその曳航する様子を小型ボートから見届けられるということで、私は思わず志願してしまいました。そこでいち早く小型ボートに乗り込みます。

ということで、ゴムボートに載せられた湖底熟成酒と共にひとあし早く移動します。

このように府や市の関係者の方々に見送られながら、ひと足早く岸辺に戻りました。

ボートはゆっくりと歩くくらいの速度で移動します。後ろから曳航されているゴムボートにも影響はありません。

考えてみればこれも貴重なショットですね。

さて、対岸のほうを見ると画像に青い車が見えます。あれに酒を積むわけですね。

これは後で撮影したものです。このようにトラックが入れるような坂があり、それは湖面ぎりぎりまで続いています。

こういうのを見てしまうと、この坂はかつて水没する前に存在した滝畑の集落につながっていたのかなと勝手に想像してしまいます。

さて、対岸に到着しました。青いトラックも待っています。

先にゴムボートは小型ボートから外されていて、トラックのすぐ後ろに来ていました。

酒のケースをトラックに詰めていきます。

無事に湖底から戻ってきた熟成酒たち。

このようにすべてトラックの荷台に詰められました。

トラックは河内長野市内の中心部方向に、そして小型ボートは筏に残っている方たちを岸辺に戻すために湖面をゆっくりと移動していきました。

先ほどの坂の道は通常は立ち入り禁止です。

ということで、これで終わりかなと思っていたのですが、まだ終わりではありません。

いったんダムサイトにある事務所に戻った後、滝畑ダムのリムトンネルに向かいます。地球屋の阪谷さんが、ふるさと納税の発送用のお酒を引き取りに行くのです。

これは先ほどの小型ボートから撮影したものです。緑の間に帯のようになっているコンクリート部分がリムトンネル(白で囲った部分)と呼ばれるもので、このようなものができた理由について滝畑ダムの説明から引用します。

ダムは、幅の狭い谷にコンクリートの壁を造り貯水するのですが、それだけでは水は堤体の左右の山に浸み込んで、水が思うように貯らなかったり、下流の山の不必要な所から水が噴き出したりする不具合が起こり得ます。そこで、堤体を建設する際に、左右の山に 15 本のリムトンネルを掘削し地質の調査を行うと共に、ここから山の中にセメントと水を混ぜた「セメントミルク」を注入し水の浸透を遮る「地中壁」を造成しました。この作業を「カーテングラウチング」といいます。床面には、その注入作業を行った孔が残っています。なお、現在、人が出入りできるリムトンネルは、堤体の西側に残るこの1本だけです。

リムトンネルもイベントで見学会を行なうことがあるそうですが、普段は立ち入り禁止です。また貴重な経験をすることができました。

こちらがリムトンネルの入り口です。

リムトンネルの内部です。ずっと奥まで通路が続いています。

こういうトンネル内を歩いているとワクワクしますね。阪谷さんによれば、かつて蝙蝠(コウモリ)が住んでいたこともあったそうです。

まるで映画のワンシーンのようですね。

さて、途中でこのようなものを発見しました。ここはダムの水位を観測する井戸だったようです。

リムトンネルの最も奥にある、水位観測の6番だったところでお酒を熟成していました。

ここではふるさと納税を受けた分だけ引き取るようです。湖面と違い、トンネルに置いてあるので、その分は楽ですね。

ちなみにこちらのお酒は、天野酒の名前の元となった、最初は天野山金剛寺で醸造され豊臣秀吉にも愛されたという僧房酒をここで熟成したものです。

700日熟成との名前がついているそうですが、熟成をはじめてそろそろ1000日に近づいているそうです。こちらも湖底熟成酒同様、ふるさと納税の返礼品です。

阪谷さんが必要な分だけを引き取り、リムトンネルを後にします。

というわけで、滝畑ダムの湖底とリムトンネル内に熟成されていたお酒を引き上げる時にお邪魔して、その模様を取材しました。

今回は普段立ち入れられない貴重なところにお邪魔したことも大きかったですが、やはり滝畑ダムという大阪府内最大のダムがある河内長野だからこそ行えたという意義が大きい気がします。

こちらの動画は滝畑ダムさんのドローンで撮影している動画で、昨年末に日本酒を沈めるときのものです。

ふるさと納税の返礼品なので市民にとっては直接的ではないのがすこし残念ですが、このような試みがあること自体、全国で初めてのことなので、市外の人にも自慢できること。ぜひ全国のご家族、お友だちや知人の方たちにPRしてみてはいかがでしょう?

滝畑ダム
住所:大阪府河内長野市滝畑
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 滝畑ダムサイトから徒歩圏内

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奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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