韓国国会、「福島原発汚染水の安全処理」求める決議案を圧倒的賛成で採択
韓国世論の高い関心を集める福島第一原発処理水の海洋放出問題。10日、菅首相が「いつまでも先送りはできない」と発言する中、隣国・韓国では安全な処理を求める声が一際高まっている。
●「日本政府は重く受け止めるべき」
9日、韓国の国会で「日本政府の’福島放射能汚染水’の安全な処理および国際的な同意手続き確立を求めるための決議案」が採択された。在籍議員265人(議員定数300)のうち、260人が賛成した。
決議案を代表で発議したのは与党・共に民主党の李元旭(イ・ウォヌク、57)議員。同氏は現在、国会の科学技術情報放送通信委員会の委員長を務めている。
李議員側の資料などによると決議案には以下の内容が含まれている。
▲日本政府が国際社会および隣接国家と協力し安全な汚染水処理方案を決めること
▲日本政府が国際原子力機構の勧告案を忠実に履行しながら一連の調査行為と議決過程を透明に公開すること
▲国際原子力機構が国際社会および周辺国が納得できる日本政府の決定が行われるよう勧告すること
▲韓国政府が国民の生命と財産を守るために汚染水処理方法の決定過程に積極的に論議すること
▲韓国政府は汚染水の海洋放流時に国民が信頼できる安全対策を講じること
▲汚染水の安全な処理方案を導き出すために与野党の協力を強めること
李議員は今回の議決を受け発表した10日の報道資料の中で、「日本政府は韓国の国会で議決された今回の決議案に韓国国民全体の気持ちが込められていることを理解し、重く受受け止めるべき」とした。また、韓国政府に対し「国民の安全を担保することが最優先という点で、日本政府に確固とした立場表明をすると共に、国際社会と協力して緊密な共調をしてほしい」と明かした。
福島第一原発の処理水をめぐっては、韓国内で環境への悪影響を憂慮する声が強い。
去る10月には趙廷訓(チョ・ジョンフン)議員が「事前の話し合い」を提案し、韓国一の観光地・済州特別自治道の元喜龍(ウォン・フィリョン)知事も「日本政府を相手取り訴訟を起こすことも厭わない」と反発を示すなど、政治家達のアクションが目立っている。
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https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20201023-00204357/
複数の韓国紙によると11月、日本の外務省関係者は「海洋放出の決定は『主権国家』として日本政府固有の権限」と韓国の記者団に説明する傍ら、共同調査に応じる計画を明かした。
一方、やはり韓国紙によると韓国の外交当局者は今月、「日本が(汚染水放出と関連し)持っている計画が安全かどうかを判断する情報を要求する権利がある」との見解を示している。
こんな綱引きが続く中、今回の決議案が与野党を問わない圧倒的な賛成で採択された点は、注目に値する。決議案は法的効力を持たないとはいえ、これを支えに今後、韓国政府がさらに日本政府に要求を高めていく可能性がある。