Yahoo!ニュース

【独占取材】JYJジュンスが語る「打上花火」と「さくらんぼ」に乗せた思い

桑畑優香ライター・翻訳家
ジュンスは音楽を纏い自在に変化する (c)C-JeS Entertainment

「夢の延長みたいな気がするんです。これは、現実なのかな?って」

ちょっとハスキーで弾んだ声が響く。

4月3日、千葉・幕張メッセで開催された「2019 WAY BACK XIA TOUR CONCERT in JAPAN」の2日目。

ひょいと現れて、すとんと椅子に腰かけたJYJのジュンスは、満面の笑顔。ライブの1時間前であるにもかかわらず、まったく緊張している様子がない。ステージに戻ってきたことがうれしくてたまらない。全身からそんな雰囲気があふれ出ていた。

約3年ぶりに来日したジュンス。

除隊後、日本で初めてインタビューに応じた彼に、活動再開への思いをたずねた。

気さくな笑顔でジュンス登場!(c)C-JeS Entertainment
気さくな笑顔でジュンス登場!(c)C-JeS Entertainment

――昨日が初日でしたが、久しぶりのコンサートはいかがでしたか。

日本のファンの前での公演は3年ぶりです。昨日は夢みたいでしたね。3年というのは短いかもしれませんが、芸能人が活動する時間という意味では長い期間です。兵役の間に、数えきれないくらいの思いがありました。もう、こうしてコンサートができないのではないかと思うくらい、長く感じました。

そんな気持ちで除隊して、夢だと思っていたコンサートをやっているので、幸せでした。再びファンの前に立ち、刻々と変わっていく表情を見ながら歌っている瞬間。そのものがすごく幸せでした。

――まだ夢の中にいるような感じですか?

そうですね(笑)。昨日のコンサートを終えて、ホテルで映像をモニターしながら「ああ、現実だったんだ」と確認したんです。まだ不思議な感覚です。

千葉・神戸・愛知の三都市で7公演を開催した(c)C-JeS Entertainment
千葉・神戸・愛知の三都市で7公演を開催した(c)C-JeS Entertainment

ライブの一曲目は力強いイントロの「OeO」。ゴールドのライトに包まれてジュンスが登場すると、どよめきのような歓声に包まれた。広い肩幅、がっちりした体躯を音楽に任せて自在にくねらせ、力強いステップを踏む。

かと思えば、ミディアムテンポの明るいナンバー「Fantasy」では、ピンクのライトに照らされ、優しい笑顔で体を揺らす。

重低音のダンス曲も歌い上げるバラードも。ジュンスは、曲によってさまざまに変化する、音楽を自然にまとうアーティストだ。

自身のソロ曲を軸にステージを紡ぐ中、ひときわ盛り上がったのは、「SKY-Rising Sun-Purple Line-MIROTIC-Summer Dream」と過去の曲をつなぐメドレーだった。

――今回の公演でジュンスさん自ら提案した内容は?

昔の歌のメドレーを準備しました。軍隊に行く前のコンサートでバラードメドレーをやったんですけど、ダンス曲でもやってみたいと思っていたんです。深い意味はなく、シンプルにこう考えました。僕も他の歌手のカバー曲を歌うことがあるし、僕たちの歌をカバーするグループもいます。だったら、その歌の主人公だった僕が歌ってはいけない理由はない、と。その思い出の中に僕もいたので……。ファンの方たちが楽しんでくださるから、勇気を得ることができたんです。

あの曲を踊りながら歌うのは、10年ぶりぐらいです。……懐かしいステージですね。

(c)C-JeS Entertainment
(c)C-JeS Entertainment
(c)C-JeS Entertainment
(c)C-JeS Entertainment

――今回のコンサートでは、DAOKO×米津玄師の「打上花火」、そして大塚愛の「さくらんぼ」という、日本のカバー曲も。

「打上花火」は「有名な曲ですよ」と勧められて聴いて、初めて知りました。すごく気に入りました。軽い雰囲気の曲を歌いたかったんです。最初はネットで公開する動画用に歌ったのですが、ファンの方から大きな反響があったので、コンサートでも歌うことにしました。

「さくらんぼ」は僕から提案しました。

「さくらんぼ」を歌った大塚愛さんは以前仕事で何度もお会いしたことがあり、曲をよく聞いていたんです。でも、練習したり、歌ったことはなく、メロディーだけ知っていました。なんか、僕が歌いそうにない曲に挑戦してみたかったんです(笑)。かつて「風船」という曲をキュートな感じで歌ったことがあるし、最近のアイドルもかわいい雰囲気で歌ったりしますよね。僕はそういうのをあまりやったことがなかったんですが、ファンへの感謝の気持ちを考えたときに、みんなが笑顔になれる曲を歌ってみたいと思ったんです。

どちらも歌詞にファンの方たちのへ思いを込めた曲です。

ライブの中盤、「もっと楽しくさせますよ。どういう時間になるか知ってますよね。じゃあ、行きます!」とジュンスが叫ぶと、会場のいたるところでファンが大きな紙を両手で高く掲げる。

ジュンスのステージの名物「ジュンスタイム」のスタートだ。

願い事を紙に書いたファンをジュンスが指名し、その場で希望を叶えてあげるというコーナー。

この日も、「愛の言葉をカメラ目線で言ってください」「ドラマ『太陽の末裔』の劇中歌『How Can I Love You』を歌ってほしい」などのお願いが。

昔空港で不意に撮られたメガネ姿の写真を掲げたファンに「それはやらないからね!」といじわるな笑顔でリアクションしてみたり、歌をアカペラでしっとりと聴かせてみたり。

会場と呼応しながら盛り上げていった。

――「ジュンスタイム」をはじめたきっかけは。

日本では「ジュンスタイム」ですが、韓国では「ジニータイム」って呼んでいます。僕が『アラジン』のジーニーみたいに、3つの願いを叶えるんです。10年ぐらい前からやっています。始めたきっかけは……日本語がちょっと難しかったので、普通にトークするよりはコーナー形式にしたら楽しいんじゃないかな、って(笑)。一回やったら好評だったので、やらないわけにはいかなくなったんです(笑)。

――アドリブは得意ですか。

難しいです。歌うときよりもっと緊張するときもあります。何が起こるかわからないから。でも、うまくいってもいかなくても最善の努力をしています。ちょっと固まってしまうこともあります(笑)。あと、こんなことも考えるんです。会場の声から選ぶ時に、「本人にとってはいいお願いかもしれないけど、他の人も楽しむことができるかな」って。

そんなふうに考えながらやるのは難しいこともありますが、でもそれによって毎回のコンサートが特別なものになるのだと思います。ジニータイムを思い出すだけで、それがいつのコンサートだったかわかるファンの人もいるぐらいなんですよ。

実は、3年前よりステージでリラックスできるようになりました。ファンとコミュニケーションして交流すること自体を楽しめるようになったんです。前はファンの前で歌い踊ることは平気でしたが、対話することが怖かった。今も日本語で話すのはちょっと緊張しますが、話をしてファンの表情や反応を見て、それに合わせて会話を返すことが楽しくなりました。

――以前よりも余裕が生まれた、と。

ファンとの距離が近く感じられるようになりましたね。

――兵役はご自身の歌や演技にどのような影響を与えたと思いますか。

社会にいた時より、自分自身について考える時間がたくさんありました。 周りの人々に対する感謝の気持ちをあらためて感じる一方で、不本意ながらプライドもかなり落ちていたのも事実です。それまでは自信があったのに、初めて自分自身を信じられない気持ちが生まれて。

でも除隊した後、僕を愛してくれるファンの皆様に出会って、少しずつ自信を取り戻しました。

この日の“ジュンスタイム”では、いつもは3つの願いを聞くところ、特別に4つ目も叶えたジュンス(c)C-JeS Entertainment
この日の“ジュンスタイム”では、いつもは3つの願いを聞くところ、特別に4つ目も叶えたジュンス(c)C-JeS Entertainment

昨年 11月に兵役を終えたジュンスが復帰作として選んだのは、ミュージカル「エリザベート」だった。日本でのコンサートツアーの後は、韓国で6月から上演される中世ヨーロッパの騎士道物語をベースにした新作ミュージカル「エクスカリバー」に、アーサー王役で出演することが決まっている。

――ジュンスさんが思うミュージカルの面白さとは。

起承転結がはっきりしたストーリーラインと、聴覚的にも視覚的にも見どころが多いのがミュージカルの魅力ではないでしょうか。

――これまで演じた中で、一番思い入れが強い作品を教えてください。

すべての作品に愛着がありますが、2012年から2013年に出演した「エリザベート」は、僕がミュージカル俳優として成長し、認められた作品です。そして、一生ミュージカル俳優として生きていきたい、ずっと努力したいと、誓うきっかけにもなりました。

昨年再び「エリザベート」の舞台に立つことで、ミュージカル俳優としてさらに成長したキム・ジュンスの姿を観客の前に見せる絶好のチャンスを与えてくれた。そんな大きな意味のある作品だと思っています。

――「エリザベート」のトート(死)、「ドラキュラ」のドラキュラ、「デスノート THE MUSICAL」のLといった特異なキャラクターを多く演じ、新作「エクスカリバー」ではアーサー王に。どんな役に惹かれますか。

「エクスカリバー」では、初めて王の役を演じますが、神秘なキャラクターに魅力を感じますね。 同じ作品でマレンという魔法使いの役があるんですけど、そのキャラクターにもすごく興味があります。いつも新しいキャラクターで舞台に立つ。それが僕の挑戦したいことであり、達成したい目標です。

――これから再び本格的に芸能活動へアクセルを踏んでいくことになりますが、今後はアーティストとミュージカル、どちらに比重を置いていきたいと考えていますか。

歌手としてのキム・ジュンス、そしてミュージカル俳優としてのキム・ジュンスを愛してくれる方々が多いので、特にどちらかを中心に活動をすると決めたのではありません。両方とも大きな比重を置いて活動したいです (笑)。

叶うかどうか、できるかどうかわかりませんが、近い将来やってみたいのは、日本で日本語のアルバムをしばらく出していないので、新しいアルバムをリリースしてみたいですね。

もう一つは、ミュージカル。いつも日本のファンの方は、僕の舞台を韓国まで見に来てくださるんですが、少し申し訳ない気持ちがあって。できれば、韓国の俳優と一緒に日本でミュージカルの公演をやってみたいですね。さらなる夢は、僕がミュージカル俳優として日本語で日本の俳優と一緒に舞台に立ってみたい。やってみたいです。

多彩な才能を存分に見せた、幕張でのはじけるステージ。ライブの最後にジュンスはこの瞬間をかみしめるように、こう語った。

「また会うことができないと思っていたので、こういう時間は僕には大事だし、すごく幸せ。熱い歓声を送っていただき、感謝しています。それに応えられるように、皆さんに笑顔になっていただけるように、がんばりたいと思います。ありがとうございます」

5月31日~6月2日ソウル・高麗大学・化汀体育館で「2019 WAY BACK XIA ENCORE CONCERT」を開催 (c)C-JeS Entertainment
5月31日~6月2日ソウル・高麗大学・化汀体育館で「2019 WAY BACK XIA ENCORE CONCERT」を開催 (c)C-JeS Entertainment
(c)C-JeS Entertainment
(c)C-JeS Entertainment

■キム・ジュンス

1986年12月15日生まれ。2004年歌手デビュー。09年からJYJとして活動。10年にシングル「XIAH」でソロデビュー。ミュージカル「モーツァルト!」(2010)、「天使の涙」(2011)、「ドラキュラ」(2014)、「デスノート The Musical」(2015)などに主演。「エリザベート」で第18回韓国ミュージカル大賞主演男優賞に輝いた。

JUNSU JAPAN OFFICIAL FANCLUB

■「2019 WAY BACK XIA TOUR CONCERT in JAPAN」

【千葉公演】4月2日(火)~3日(水)

幕張メッセ国際展示場4~6ホール

【神戸公演】4月12日(金)~14日(日)

ワールド記念ホール

【愛知公演】4月18日(木)~19日(金)

ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)

主催: GANADA COMPANY /C-les Entertainment / StubHub制作: PROMAX宣伝: MIDUMU

運営: 【千葉公演】Kyodo YOKOHAMA 【神戸公演】グリーンズコーポレーション 【愛知公演】ズームエンタープライズ

ライター・翻訳家

94年『101回目のプロポーズ』韓国版を見て似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画レビューやインタビューを「現代ビジネス」「AERA」「ユリイカ」「Rolling Stone Japan」などに寄稿。共著『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書『韓国映画100選』(クオン)『BTSを読む』(柏書房)『BTSとARMY』(イースト・プレス)『BEYOND THE STORY:10-YEAR RECORD OF BTS』(新潮社)他。yukuwahata@gmail.com

桑畑優香の最近の記事