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『3年A組』で連ドラデビューからヒロインや小悪魔も。秋田汐梨がホラーの友だち想いの役に重ねたこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2023「リゾートバイト」製作委員会

『真・鮫島事件』、『きさらぎ駅』に続き、ネットで伝わる都市伝説を映画化した『リゾートバイト』。島の旅館で共にバイトをしていて、恐怖体験をする主人公らの幼なじみ役で秋田汐梨が出演した。今や主役級の面々が生徒役に多く名を連ねていた『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で、最年少キャストとして初レギュラー。以後、自身も数々の作品にヒロインなどで出演する存在になった。華のあるたたずまいと共に、ステップアップのために磨いてきたものは?

演技に挑戦して初の舞台で役に向き合おうと

――京都のご出身なんですよね。

秋田 はい。2年前に大学に進学したのをきっかけに、上京しました。

――自分の中で京都人のDNAを感じることはありますか?

秋田 「京都出身です」と言わないと、絶対に気づかれません(笑)。でも、そう話すと「京都っぽいね」と言われることもあります。「おっとりしている」とか。

――中1のときに「ニコラ」モデルとしてデビューされていますが、最初から女優にも興味あったんですか?

秋田 いえ、「ニコラ」が大好きで専属モデルになりたくて、オーディションに応募しました。事務所に入ってから演技にも挑戦して、いろいろな作品に参加させていただくうちに、ちゃんとやりたいと思い始めました。

――何かの作品がきっかけになって?

秋田 もっと役に向き合おうと思ったのは、初めての舞台の『目頭を押さえた』です。それまでの映像作品とは違い、ひとつひとつの芝居に向き合う時間が長かったので、試行錯誤をしながら、役について深く考えることを勉強しました。お芝居へのいろいろなアプローチも、今後に活かせるなと思いました。

ヘア&メイク/坂手マキ スタイリング/岡本純子 (C)2023「リゾートバイト」製作委員会
ヘア&メイク/坂手マキ スタイリング/岡本純子 (C)2023「リゾートバイト」製作委員会

自分だけ空気に乗れてなくて必死でした

――では、演じることが楽しくなった作品というと?

秋田 何だろう? 経験として大きかったのは『3年A組(-今から皆さんは、人質です-)』です。私は生徒役の最年少で、みんなに圧倒されっぱなしで、付いてくのに必死でした。

――今だと主役やヒロイン級の方が生徒役でたくさん出ていました。永野芽郁さん、福原遥さん、今田美桜さん、川栄李奈さん、堀田真由さん、森七菜さん……。

秋田 お芝居をしながら、自分だけ、みんなの空気に乗れてない感じがしていて。毎日どうしたらいいのか悩んでいました。殺伐としたストーリーで、セットでは私語禁止。笑ってはいけない雰囲気で、すごく緊張しながら撮影していた記憶があります。

――連続ドラマの初レギュラーで、まだ経験値もそんなになかった頃でした。

秋田 そうですね。今の自分で、もう1回撮影に臨みたいと思ったりします(笑)。

――SNS映えが命の役で、携帯が戻ってきたときに大喜びしていました。

秋田 ありましたね。あそこも全然うまくいかなくて。私の役は台詞がそんなになくて、いざ言うときに、すごく緊張してしまったんです。声が出なくて、音声さんがマイクで拾えず、「もっと大きい声で」と何回も言われました。

――それもまたプレシャーになりますよね。

秋田 そうなんです。台詞を言うのは私だけの場面でも、他にも人がいるので、OKが出ないのが申し訳なくて。かえって、どんどんできなくなってしまった……ということもありました。

役を一生懸命やるだけで順調なのかわかりません

――その後、映画『惡の華』やドラマ『ホームルーム』でヒロインを演じたり、順調にステップアップしてきました。

秋田 いただいた役をただ一生懸命やっているので、順調なのかはわかりません。仕事が途切れて、1ヵ月くらいお休みだった時期もありましたから。でも、『惡の華』は起点になったかと思います。

――『惡の華』はオーディションで選ばれたそうですが、なかなか受からなかった時期もありました?

秋田 今でもオーディションはたくさん落ちてますけど(笑)、少しずつオファーもいただけるようになりました。

――『彼女、お借りします』での腹黒い小悪魔系の役は、難しくなかったですか?

秋田 原作がある役なので、忠実に再現しようと心掛けました。アニメの声も参考に役作りをして、そんなに難しいとは感じませんでした。

――そうした作品ごとの努力のほかに、日常でも演技力を高めるためにしていることはありますか?

秋田 最近、本を読むようになりました。エッセイはもともと好きでしたけど、小説をいろいろ読んで感性を鍛えようかなと。今、湊かなえさんの『告白』を読み始めたところです。

感動してボロボロ泣いた本を母に贈りました

――単純に好きなのは、どんな小説ですか?

秋田 この前は『変な家』というミステリーを読みました。間取りが不可解な家の話で、なくてもいいようなスペースがあったり。すごく面白くて、友だちにも勧めました。

――それもミステリー映画とかで役に立つかも。

秋田 上白石萌音さんのエッセイは勉強になりました。役作りをどうされているかも書かれていて。驚いたのは、台本を読むとき、最初は自分の台詞に蛍光ペンを引いていたのが、撮影が進むにつれて、引かなくても色が付いて見えてくる……というところです。あと、これもエッセイですけど、『人は話し方が9割』の作者さんが、亡くなったお母さんについて1冊通して書かれていて。

――永松茂久さんの『喜ばれる人になりなさい』ですかね。

秋田 たこ焼き屋から商売を繁盛させた方で、その裏にはお母さんの支えがあって……というお話です。感動してボロボロ泣きました。読み終わると「この本を誰かにプレゼントできるように」と、「Dear〇〇 From○○」みたいなページがあって。そこに書き入れて、自分の母に贈りました。私も母に支えてもらっているので。

大きな音に敏感で気絶しそうになります(笑)

――映画やドラマを観て勉強もしてますか?

秋田 休みの日にはよく映画館に行きます。携帯だと集中して観られないので。最近ちょっと嗜好が変わってきて、台詞は少なめで画がきれいな作品に興味があります。

――どんな作品を観たんですか?

秋田 マネージャーさんにお薦めしてもらった『658km、陽子の旅』は良かったです。それも多くは語らない感じの作品で。

――菊地凛子さんがコミュ障のフリーター役で、青森の実家までヒッチハイクをするお話でした。

秋田 旅をしながら成長していくのに惹かれました。韓国映画の『非常宣言』も面白かったです。飛行機テロの話で、一緒に行った友だちと思わず声を上げてしまった記憶があります(笑)。サスペンスは好きですね。でも、ホラーは観ません(笑)。

――今日はホラー映画の取材ですが(笑)。

秋田 『リゾートバイト』は面白い要素もあって観やすいですけど、海外のホラーは本当にダメです。心臓に悪い(笑)。『IT/イット』とかチャッキーの『チャイルド・プレイ』とか、気絶しそうになります。ただでさえ、大きな音はすごく苦手なので。

――普段から怖がりなわけですか?

秋田 めっちゃ怖がりです。オーバーリアクションのつもりはないのに、音にすごく敏感に反応してしまって。夜中だったら1人で叫んでます(笑)。

自分には怖いシーンがなくて良かったです

――『リゾートバイト』では、演じた希美にはそんなに怖いシーンはなかったですね。

秋田 旅館の2階の部屋に行くのに、扉を開けるところくらいでした。良かったです(笑)。

――夜の山の寺はどうでした?

秋田 そこに行くまでの道が怖かったです。動物か何かの置き物の目が赤かったりして、リアルに叫びました(笑)。

――劇中では、肝だめしを「よし、やろう!」と言ってました。

秋田 現実だったら、勘弁してほしい(笑)。プライベートで富士急(ハイランド)の戦慄迷宮に初めて行ったときも、最初に映像を見てからスタートで、私はその時点で怖すぎてリタイアしました(笑)。そのあとに何回か挑戦して、ゴールまで辿り着けるようになりましたけど、友だちに囲ってもらって、目をつぶってないと進めません(笑)。

――でも、何だかんだ、また行ったんですね(笑)。

秋田 1人で行けと言われたら、絶対無理です。驚かされて怖いというより、想像しちゃうんです。「何があるんだろう?」と考えると、怖くなってしまって。お風呂に入るときも、一瞬でも「怖いかも」と思ったら、後ろとか天井とか全部確認しないと、安心できません(笑)。

クラスメイトをくっつけたことがあります

――希美は主人公の桜(伊原六花)と聡(藤原大祐)の幼なじみで、「あの2人をくっつけるのが使命」と言ってました。そんな使命感、わかりますか?

秋田 わかります! 高校生の頃、そういうことをした経験があります。私の親友を好きだと言っている男の子が「文化祭で舞台から告白したい」と言うから、「それは本当にやめたほうがいい」と、まず止めて(笑)。その男の子の親友も誘って、遊びに行ったんです。2人だけになるシチュエーションを作ったら、つき合うことになって、今も続いています。

――少女漫画に出てくるようなことを、リアルにやったんですね。

秋田 やりました。何か楽しかったです(笑)。

――希美はかなりの友だち想いのようで。

秋田 桜も聡も大切な幼なじみで、くっつけたい気持ちがあったと思います。

――後半では、2人を救うために危険なこともしました。

秋田 助ける方法がそれしかないと言われたら、私でもやるかもしれません。島に大切な友だち2人を置いては帰れませんから。

――他に、希美のキャラクター的に意識したことはありますか?

秋田 元気な女の子なので、2人が控えめなキャラクターだった分、勢いと明るさを大事にしながら演じました。

(C)2023「リゾートバイト」製作委員会
(C)2023「リゾートバイト」製作委員会

島での撮影中はリゾートを満喫してました

――島での撮影では、楽しいこともありました?

秋田 すごく楽しかったです。リゾートを満喫して伸び伸びと生活していました。休みの日に伊原さんが「お散歩しよう」と誘ってくれて、浜沿いを散歩したり、スーパーで買ったケーキをホテルのロビーで食べたり。スタッフさんがバーベキューを開催してくれたこともありました。

――伊原六花さんとは、前にも共演したことがありましたっけ?

秋田 そのときは台詞を交わすシーンがなかったので、ちゃんと共演したのは初めてでした。幼なじみの設定だから、2人と仲良くなれたらいいなと思って。私は人見知りなところがあるので、心を開くのに時間がかかるんですけど、本読みから幼なじみとして接するように意識しました。お2人とも気さくに接してくれて、いつの間にか仲良くなれた感じです。

――実際にリゾートに行くことはありますか?

秋田 夏は暑くて引きこもりがちで、この前、姉と小田原までドライブしたくらいですね。去年の夏は京都に帰るタイミングがあって、夜に友だちと河原で花火をしました。自然の豊かな場所は好きなので、これからの季節は景色がきれいなところに行こうと思っています。

喫茶店でドリップをするバイトをしたいです

――中学生から芸能界にいると、バイトをしたことはないですよね?

秋田 そうですね。だから、(『トーキョー製麺所』で)うどん屋さんでアルバイトをする役は楽しめました。最近は喫茶店でバイトをしたいと思っています。

――ウェイトレスを?

秋田 いえ、ドリップしたくて。私、ブラックコーヒーを飲めるようになったんです。ずっとカフェラテしか飲めなかったんですけど、現場で牛乳を入れるのが面倒くさくて(笑)、ブラックにしてみたら、だんだん飲めるようになりました。

――牛乳を入れるのが、そんなに面倒くさいことでしたか(笑)。

秋田 面倒くささもありましたけど、カフェラテはエスプレッソにミルク。コーヒーにミルクだと、カフェオレになっちゃうじゃないですか。私はラテが一番好きで、その現場ではアイスコーヒーと牛乳しかなかったので、オレにするよりブラックでいいかと思ったんです。

――こだわりがあったんですね。喫茶店でバイトしなくても、家でドリップしている人もいますよね。

秋田 一時期、ラテマシーンを買おうかと思いました。牛乳をスチームミルクにできますから。でも、独学ではうまくいかなさそうだったので、やめました。喫茶店でバイトする役が来たら、役作りとして勉強したいです(笑)。

(C)2023「リゾートバイト」製作委員会
(C)2023「リゾートバイト」製作委員会

かわいい女優さんと現場で会うのが楽しみ(笑)

――今回は主人公の友だち役でしたが、主役をバンバンやるポジションを目指していますか?

秋田 頑張ります! 主役か脇役かに関わらず、どんな役でもしっかり演じられるようになりたいです。

――秋田さんは華がありますから。

秋田 そうですかね? 私、かわいい女の子が好きなので、現場で女優さんに会えるのがすごく楽しいんです(笑)。そういう意味でも、どんな役であれ、いろいろな現場に参加したい気持ちがあります(笑)。

――どういう女の子が好みなんですか?

秋田 (桜田)ひよりちゃんは顔がめっちゃ小さくて、『カノカリ』のときも触らせてもらっていました(笑)。伊原さんもすごくかわいかったです。

言われたことを吸収する力は長けてるようです

――自分の女優としての武器だと思っていることはありますか?

秋田 去年の冬にやった舞台『幽霊はここにいる』で、八嶋智人さんが誉めてくださったのは、私は言われたことを吸収する力が長けていると。「舞台ですごく使いやすい女優さんだと思うよ」と言っていただきました。

――それは自覚もしていて?

秋田 八嶋さん以外の方も言ってくださることがあって、そう見えているみたいです。確かに、演出されたことは自分なりに考えて、芝居に取り込めています。それは自分の武器でもあるし、欠点でもあると思っていて。

――と言うと?

秋田 映画やドラマの現場では自分から発信して、役をどんどん作り上げていかないといけないので。そういうところは今後、磨いていきたいです。キャラクターを理解するために、役の履歴書を作る人もいると、最近知りました。台本にない部分の生い立ちや性格を書いていく。そういうやり方も試してみようかと考えています。

スターダストプロモーション提供
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今やりたいのは家族でゆっくり旅行すること

――仕事以外でも、成し遂げていきたいことはありますか?

秋田 去年取った運転免許が、オートマ限定なんです。マニュアルを運転している人ってカッコよく見えるので、そっちの免許も取得したいです。ただギアチェンジとかをしてみたいだけですけど(笑)、マニュアル車ってブルブルいってエンジン音が大きいので、実際に運転するのは難しい気がします。

――いずれにしても、もっと大きいことが出てくるかと思いました(笑)。

秋田 今やりたいのは、家族でひと息つける温泉とかに旅行することです。家族旅行は毎年していますけど、今年はまだ行けてなくて。先日、家族のLINEに、父から去年の旅行の写真が「1年前の今日だったんだよ」と送られてきました。

――家族仲は良いんですね。

秋田 すごく仲良しです。今は姉も東京に来て、父と母は京都で離れ離れですけど、「また旅行したいね」と話していて。みんなでゆっくりしたいですね。

Profile

秋田汐梨(あきた・しおり)

2003年3月19日生まれ、京都府出身。

2015年に「ニコラ」でモデルデビュー。2017年に女優デビュー。2019年に『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で連続ドラマ初出演。主な出演作はドラマ『ホームルーム』、『17.3 about a sex』、『トーキョー製麺所』、『彼女、お借りします』、映画『惡の華』、『星空のむこうの国』、『映画刀剣乱舞-黎明-』、舞台『目頭を押さえた』、『幽霊はここにいる』など。10月20日公開の映画『リゾートバイト』、11月3日公開の『おしょりん』、舞台『SHELL』(11月11日~26日/KAAT神奈川芸術劇場ホール、12月9日・10日/京都芸術劇場 春秋座)に出演。

『リゾートバイト』

監督/永江二朗 脚本/宮本武史

出演/伊原六花、藤原大祐、秋田汐梨、佐伯日菜子、梶原善ほか

10月20日よりグランドシネマサンシャイン池袋、イオンシネマほか全国公開

公式HP

(C)2023「リゾートバイト」製作委員会
(C)2023「リゾートバイト」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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