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【教員不足をなくそう】自民党特命委員会提言のポイントは、学校に人を増やす、働き方改革も、だった

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
自民党提言は教員不足をなくせるか?(写真:アフロ)

1.子どもたちのために教員不足をなくそう

教育政策の研究者として、いまもっとも深刻な課題ととらえているのは、子どもたちを教える教員がいない、教員不足の問題です。

憲法・教育基本法、そしてこども基本法にも定める、子どもたちの学ぶ権利や、教育の機会均等を揺るがす深刻な課題でもあります。

誰よりも子どもたちに大きなダメージがおよぶこの問題を改善するために、#教員不足をなくそう緊急アクション、を2022年4月に立ち上げ、問題の改善のために動いてきました。

5月10日、私たちが文部科学省で、依然として深刻な教員不足とその改善策について記者会見をした同じ日、非常に重要な提言が、自由民主党から発表されました。

自由民主党「令和の教育人材確保に関する実現プラン(提言)」です。

この提言を取りまとめた自由民主党・令和の教育人材特命委員会(以下、自民党特命委員会)の議論については、公立学校の教員の残業代をどうするかという、いわゆる給特法問題ばかりが報じられ、教員不足の改善につながるそれ以外の重要な内容がほとんど報道されていません。

自民党提言を取りまとめた萩生田光一政調会長へのインタビュー記事も公表されましたが有料記事のため、教員不足の問題に関心のある多くの方に、提言のポイントが伝わりません。

※教育新聞「学校のマンパワー拡充『義務教育のコストが変わる』萩生田氏」(有料)

特に、教員不足の改善については、私自身も自民党特命委員会で2023年4月に、教職員政策の専門家として、また学校現場の悲痛な実態を受け止めた #教員不足をなくそう緊急アクション の提言もふまえ改善策の提案をしました。

この時の提案も、自民党提言に盛り込まれています。

2.自民党特命委員会提言のポイント

―ポイントは学校に人を増やす、働き方改革も、だった

自民党特命委員会提言のポイントを下のスライドにまとめました。

決して教員の残業代(教職調整額)を増やす、という内容だけではないのがご理解いただけるはずです。

2枚目のスライドでは「学校における働き方改革のさらなる加速化」が提言されており、「学校及び教師が担う業務のさらなる明確化・適正化」と明記されています。

3枚目のスライドでは、「学校における指導・運営体制の充実」として、私も提言してきた、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、部活動指導員等の抜本的拡充、というきわめて重要な内容が示されていました。

学校の先生が丸抱えしてきた業務を、先生たちとともに担ってくれる、子どもを支える人材を増やすことも「令和の教育人材確保」なのです。

今も学校で活躍する教育業務支援員(スクールサポートスタッフ)の配置充実とともに、東京都等の自治体で導入され一番の激務とされる副校長・教頭先生の働き方改革に効果がある副校長・教頭マネジメント支援員(仮称)の導入も提言されています。

自民党提言より筆者作成
自民党提言より筆者作成

自民党提言より筆者作成
自民党提言より筆者作成

自民党提言より筆者作成
自民党提言より筆者作成

自民党特命委員会提言を実現するためには、毎年5000億規模の予算拡充が必要になります。

本当に実現されるのでしょうか?

実現される可能性は高い、というのが私の状況分析です。

自民党特命委員会の委員長は、萩生田光一政調会長です。

萩生田委員長のもとでとりまとめられた自民党特命委員会の提言には、来年度(令和6年度)から3年間を予算・制度両面を抜本的に改革する期間として位置付けるとして、明確に実現期間が設定されています。

萩生田政調会長自身も、教育新聞(有料)へのインタビューで「秋の臨時国会でできるものがあれば、前倒ししていきたい」と、強い意気込みを述べています。

3.自民党特命委員会提言で教員不足はなくなるか?

―可能な限りすみやかに実現を!

―地方自治体・教育委員会・学校の取り組みを支える応援体制を!

では自民党特命委員会提言で、教員不足はなくなるのでしょうか?

私自身の考えでは、これらの改革が実現されると、教員の長時間労働がなくなり、また教員の残業代が今より改善され、毎月の収入やボーナスも増えます。

「教員が再び魅力的な職となり、教員不足はなくなっていく」と予測しています

学校現場の教員も、長時間労働の改善のためには「人を増やしていくということが一番改善点につながる」とおっしゃっています。

※TBS報道「『一人一人の成長を丁寧に見守るために』教員不足の学校 現役教員が今求める改革とは」(無料・動画も公開)

私は大学で教員養成の講義も受け持っていますが、「働き方改革が進むなら教員を安心して志望できる」という若者も多いのです。

教職調整額や、学級担任手当、管理職手当が良くなることは、いま学校現場でがんばっている先生の心を支える良いニュースでもあります。

早く実現してください、それが学校現場でがんばる教員の声ではないでしょうか。

今回の提言の早期実現のためにも、学校に人材を増やし学校の先生の働き方改革を応援する体制は、不可欠です。

私自身が自民党特命委員会で発言し、5月10日の記者会見でも提言したのは、学校運営協議会等の仕組みを通じ、保護者と地域住民も、子どもたちのために先生たちが健康に元気に働ける学校の働き方改革を応援する体制の整備です。

また、国も地方も、「子どもたちのためのより豊かな義務教育のためにお金をしっかりかける」改革となります。

都道府県知事さん、市町村長さんや、自治体の財務部局、地方議会の議員さんも含めて、応援いただかなくてはなりません。

子どもたちのために教員不足をなくしたいみなさんは、自治体HPや子どもにやさしい議員さんたちにHPやSNS等でご意見をお届けください。

私も引き続き、教員不足をなくすため、子どもたちが安心して先生たちと学べる学校のため応援していきますが、たくさんのみなさんの応援が必要です。

子どもたちのために豊かな学校教育を

教員不足をなくそう

思いを共有いただけるみなさんも、できることでよいので、子どもたちのために声を届けていただけると、助かります。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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