悪天続きのイタリア 頼みの防潮堤も稼働せず、ベネチア冠水
汚職事件に資金難と、幾多の困難を乗り越えてようやく今年10月に出来上がったベネチアの防潮堤『モーゼ』。「水の都」を浸水から守るための砦でしたが、残念ながら嵐が襲った8日(火)は稼働することなく、町は水に浸かってしまいました。
なぜモーゼは使用されなかったのでしょう。その理由は、低気圧が予想以上に発達し、予想以上の高潮が発生してしまったからです。この防潮堤が稼働する基準は、48時間前に130センチ以上の高潮が予想されていること。
実際には145センチの高潮が発生したようですが、予想は120センチと基準を下回っていたために、稼働の準備が整っていなかったのです。
こうして町は下の動画のように浸水し、有名なサンマルコ広場では人々が長靴を履いて歩く姿が見られました。
嵐の原因
この洪水をもたらした嵐は、一体どのようなものだったのでしょうか。
高潮の原因は「寒冷渦」と呼ばれる低気圧です。
寒冷渦は上空に寒気を伴って、同じような場所に数日間停滞します。寒冷渦の、特に南西部分は、下層に暖気が流入するために、大荒れの天候になります。落雷、雹、大雨、山雪、時に竜巻も発生するほどです。
竜巻も
今回ベネチアで浸水被害を出した寒冷渦も、イタリア北部のトリエステで巨大な竜巻を発生させました。
下がその画像ですが、煌々と明かりのついた町の様子と、空に広がる雲から垂れる太い竜巻とが、まるで人間界と自然界のコントラストを表しているようにも見えます。
Severe Weatherの記事によると、冬季に巨大な竜巻がイタリア北部に発生するのはとても珍しいようです。
大雪も
一方、イタリア北部の山は大雪に見舞われました。1メートル近い雪が降り、雪崩によって死者も出ています。
隣国のオーストリアのチロル地方では3日間で295センチもの雪が降り、観測史上最大の降雪量を記録しました。
先月も大荒れのイタリア
イタリアは11月末にも天気が荒れて、災害が発生しました。
イタリア南部の島サルディニアで記録的な雨が降って、大規模な洪水や土砂災害が発生しています。36時間で367ミリの大雨が降り、道路や橋、家屋が損壊、3名が亡くなりました。
世界最大のクリスマスツリー
災害続きのイタリアですが、新型コロナウイルスの脅威も再燃しています。政府は12月21日から1月6日まで、仕事や治療、緊急事態などの場合を除く州をまたぐ移動を禁止しました。
今年は静かなクリスマスとなりそうですが、最後に明るい話題を一つ。
今年もイタリア中部グッビオには、世界最大のクリスマスツリーがお目見えしました。
山肌に全長750mの巨大なクリスマスツリーをあしらった電灯が点されました。てっぺんにある流れ星の大きさは、なんと1,000平方メートルにも及ぶそう。まるで京都の五山送り火のようです。1981年から続く毎年恒例の点灯式は今年、無観客で厳かにとり行われたとのことです。